Disc Review

A Touch of Jazz / Frankie Valli (Green Hill Productions)

ア・タッチ・オヴ・ジャズ/フランキー・ヴァリ

この5月で87歳を迎えたフランキー・ヴァリ。2014年と2019年の来日公演でも、まったく衰えを知らぬ歌声で感動を届けてくれて。今なお鮮烈に覚えているそのときの感動は本ブログのこちらのエントリーでもいろいろ書かせてもらったものだけれど。

まだまだとどまりません。新作アルバム、出ました。

今回はアルバム・タイトルからも想像できる通り、グレイト・アメリカン・ソングブック、つまりいわゆるジャズ系のポピュラー・スタンダード曲を歌いまくった1枚だ。ジミー・スミス以来の存在とクインシー・ジョーンズからも絶賛されたジャズ・オルガン/トランペット奏者、ジョーイ・デフランセスコがプロデュース&アレンジを担当。ツアー・バンドのバンマスをつとめる盟友ロビー・ロビンソンとフランキー・ヴァリ自身も共同プロデューサーとして名を連ねている。

デフランセスコ(オルガン)、ポール・ボーレンバック(ギター)、バイロン・ランダム(ドラム)という顔ぶれによるデフランセスコのレギュラー・オルガン・トリオがバックアップ。

歌われているのは「トライ・ア・リトル・テンダーネス」「デイ・バイ・デイ」「ドント・テイク・ユア・ラヴ・フロム・ミー」「アイル・リメンバー・エイプリル」「オール・オア・ナッシング・アット・オール」「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」「.ィール・ビー・トゥゲザー・アゲイン」「ジーパーズ・クリーパーズ」など、当然ながら敬愛する同郷のフランク・シナトラもかつて取り上げたことがあるグレイト・アメリカン・ソングブック系名曲ばかり。

そこに、フォー・シーズンズがコール・ポーターの名曲をカヴァーした「君はしっかり僕のもの(I've Got You Under My Skin)」や、ヴァリさん必殺のソロ・ヒット「君の瞳に恋してる(Can't Take My Eyes Off You)」のアレンジなども手がけているアーティ・シュロエック作のブルージーなスウィング・チューン「ザ・ラスト・リクエスト」を加えた全9曲。

こんなのジャズじゃねーよ…とか、短絡的に批判する自称うるさ方ジャズ・ヴォーカル・ファンもいそうだけれど。ジャズであろうとなかろうと、まず第一に、これはフランキー・ヴァリだから。それだけで、もうすごいから。もともとこの人の歌声にはロックンロール以前と以後とが実に魅力的に交錯していて。それについては、やはりかつて本ブログのこちらのエントリーでたっぷり書いたので、繰り返しませんが。

本作を聞くと、ああ、この人の歌声の背景には確実にこうした曲たちがいて。いつもこういう歌に親しんできて。その上で半世紀以上にわたり、誰にも真似できないフランキー・ヴァリという個性を築き上げてきたんだなと再確認できる。

フランク・シナトラからこの人やディオン・ディムーチを経て、ポール・サイモン、ローラ・ニーロ、ルー・リードからブルース・スプリングスティーンへと流れる米東海岸のポップ・シーン。そんなシーンを牽引してきたベテランのひとり、ディオンが今なお元気にブルースやドゥーワップを歌い継ぎ、この人、フランキー・ヴァリがグレイト・アメリカン・ソングブックを歌い継いでいるのだから。まじ、素晴らしいじゃないですか。

フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズとしてのツアー再開の告知もあった。彼らの物語をドラマ化した『ジャージー・ボーイズ』の配信ヴァージョンが制作されることになって、主役のヴァリ役にニック・ジョナスが起用されることも発表になった。

止まりませんな。カンペーちゃん並み、いや、それ以上だな。

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