Disc Review

Medicine at Midnight / Foo Fighters (RCA/Roswell)

メディスン・アット・ミッドナイト/フー・ファイターズ

やっぱフーファイはかっこいい。

そう思わせてくれる久々の新作の登場。待たされました。2017年9月リリースの『コンクリート・アンド・ゴールド』以来だから、ほぼ3年半ぶり? 通算10作目のオリジナル・アルバム『メディスン・アット・ミッドナイト』。昨日の深夜というか、今日の早朝からストリーミングも始まっているので、予約したブツが届く前に、もう何度も聞いて盛り上がっております。

前作を出したあと、2018年のほとんどをツアーに費やして。その年の10月、いったん立ち止まってじっくり休養をとると宣言。バンドとしてはしばしのブランク期間に突入した。が、すでにその段階で中心メンバー、デイヴ・グロールの頭の中には次作へのアイディアが浮かんでいたらしく。ドラマーのテイラー・ホーキンスによると、じっくり休むと宣言したわりに、休養宣言から1年足らずの2019年8月、グロールは独自にデモ制作を再開。他のメンバーも徐々に合流し、10月、レコーディングが本格的にスタートした。

前作に引き続き、アデルやシーア、ケリー・クラークソンのプロデュースなどで知られるグレッグ・カースティンがプロデュース。ロサンゼルスのエンシノ地区に建つ1940年代の古い邸宅を借りてレコーディングされた。いつの間にかすべてのギターのチューニングがむちゃくちゃになってしまったり、ミキシング・コンソールのセッティングがリセットされちゃったり、プロ・トゥールズのデータが飛んだり、なにやら不思議体験に次々見舞われたレコーディング・セッションだったらしいけど。そんなあれこれをクリアしつつ、デイヴ・グロール曰く、あの手この手でフー・ファイターズ流のパーティ・ロックンロールをきわめた1枚を、去年の2月ごろ完成させたのだった。

ちなみにこの人たちデビュー・アルバムを出したのが1995年だから、去年、2020年が25周年。ということで、この通算10作目をひっさげて4月からワールド・ツアーに意気揚々と突入し、世界中のスタジアムを揺らしまくる予定だったらしいのだけれど。残念ながら、新型コロナウイルスのパンデミックゆえ、他の大方のアーティスト同様、すべての計画が中止に。いったんツアーは10月に延期されたものの、これもアウト。そんな延期延期の中、アルバム・リリースもどんどん先延ばしにされて…。

でも、デイヴ・グロールはもう我慢できない、と。すげえポップでいいアルバムができたのに、ツアーができないからってみんなに聞いてもらえないのはあまりにも悲しいじゃないか、パンデミックがなんだ、アルバム出してやるぜっ! とばかり、ついにめでたく新作のリリースに踏み切ったのでありました。

グロールの説明によると、EDMとかディスコのようなものとは別の意味でのダンス・アルバムだとのこと。でっかいリフと、ごきげんなグルーヴが命の、高揚感に満ちた全9曲。さすがデビュー25周年を迎えるバンドだけあって、これまで挑んだ路線は数知れず。ノラ・ジョーンズを迎えてボサ・ポップをキメてみたり、アメリカーナ方面に踏み込んでみたり、偉大な1970年代ヒーローたちに愛を捧げてみたり…。でも、休養明け、妙に大人っぽく落ち着いた方向に向かうのではなく、これまで以上にポップで活きのいいアプローチを迷いなくぶちかましてみせるあたりが、いやー、やっぱフーファイだなぁ、と。

オープニング、いきなり3拍子と4拍子を刺激的に行き来しながらハードにグルーヴしてみせる「メイキング・ア・ファイア」から勢いたっぷり。ギター・リフも豪快だし、グロールの十代の娘さん、ヴァイオレットも参加した“ナナナナ…”コーラスも楽しいし。アリーナ相手に音楽している連中ならではだなぁ、と改めて思い知る。去年の暮れに届けられた先行シングル「シェイム・シェイム」や、やはり切れ味鋭いギター・リフとカウベルが印象的な「クラウドスポッター」あたりには1980年代末ごろのポップでファンキーなMTVヒット群を想起させる感触がある。フォーキーなアコースティック・ギターのカッティングに乗せて、どこかで誰かが戦争を起こしそうな空気感に漠然とした恐怖感を抱き、行き場をなくしながら日々を過ごしてきた少年が、しかしラジオから流れる“声”に恋をする様子が描かれる「ウェイティング・オン・ア・ウォー」もライヴで盛り上がりそうな1曲。けっこうパンキーに展開する「ノー・サン・オヴ・マイン」にも、同様に、無為で残虐な争いに対する強烈な“ノー”が込められている感じ。

タイトなビート・アレンジと、キャッチーなギター・カッティングを絶妙に配しつつ、マイナー・キーで切ないメロディを綴るアルバム表題曲は、グロールによれば自分たちにとってのデヴィッド・ボウイ「レッツ・ダンス」なのだとか。後半、突如ハチロクっぽいブリッジがぶち込まれたりする「ホールディング・ポイズン」の勢いも強力。グロールのビートルズ愛が炸裂したっぽいメロディアスなミディアム・バラード「チェイシング・バーズ」も切なく胸にしみる。で、ラストを飾る21世紀版バディ・ホリーみたいなロックンロール「ラヴ・ダイズ・ヤング」も躍動的だし…。

なんか、こう、ポスト・グランジって何だよそれ的な、そんなもんどこかへ吹っ飛ばした感じの振り切れっぷりが気持ちいい1枚です。

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