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Disc Review

Looking for the Sun / Curt Boettcher & Friends (High Moon Records)

ルッキング・フォー・ザ・サン/カート・ベッチャー&フレンズ

ブライアン・ウィルソンさえもがその才能に驚嘆したという奇才、カート・ベッチャー。ハーモニーの魔術師みたいな感じで評価されている感じもあるけれど、声によるハーモニーだけでなく、音像全体のアンサンブルというか、音の積み方というか、そのあたりが独特で。ぼくも大好き。

日本では相変わらず“ソフト・ロック”とか呼ばれている分野で活躍した人だけれど、ぼくはこの“ソフト・ロック”という日本でしか通用しない呼称があまり好きではないので、あくまでも“60年代サンシャイン・ポップ”と呼ばせてもらいますが。

1990年代にはずいぶん、かつてベッチャーがプロデュース/アレンジしたサンシャイン・ポップの傑作群に注目が集まって。彼自身が中心メンバーとして活躍したゴールドブライアーズ〜サマーズ・チルドレン〜ボールルーム〜サジタリアス〜ミレニウムあたりだけでなく、けっこうレアなところまで、ポップでサイケな関連楽曲の発掘CD化が実現。新鮮な発見をたくさんもたらしてくれたものだ。

1987年、43歳という若さで亡くなってしまったこともあり、いろいろと謎めいた部分も多い。よくあることかもしれないけれど、才能はとてつもなく奥深く雄大であるにもかかわらず、それがセールス的な成功にほとんど結びつかなかった。そうした微妙な状況に起因するミステリアスな感触がまた彼独特のポップ感覚とあいまってマジカルなムードをより一層高めているような…。

と、そんなカート・ベッチャーが1965〜1967年、スティーヴ・クラークとともに設立した“アワー・プロダクションズ”で制作を手がけた様々な音源を中心に編まれたコンピレーションが、“カート・ベッチャー&フレンズ”名義でリリースされた本作『ルッキング・フォー・ザ・サン』だ。米ハイ・ムーン・レコードからのリリース。編纂したのはナウ・サウンズ・レコードの創設者/プロデューサーのスティーヴ・スタンリー。

1曲目、『バットマン』などテレビ・ドラマへの出演でも知られていた女優シンディ・マローンの「ユー・ワー・ニア・ミー」からぶっとぶ。1967年にベッチャーのプロデュースのもとで録音されながらお蔵入りしていた完全未発表音源。ゲイリー・パクストン人脈のバックアップを受けながら、なんとも催眠的でマジカルなカート・ベッチャー・ワールドが編み上げられている。

ザ・タムズの「ホワット・カインド・オヴ・フール(ドゥ・ユー・シンク・アイ・アム)」やブライアン・ハイランドの「ラン、ラン、ルック、アンド・シー」などの作者としても知られるレイ・ホイットリーの切々たる「ロレイン」という曲も入っていて。これまた未発表音源。ホイットリーのものとしてはさらにベッチャーがジム・ベルとともにプロデュースした1967年のシングル「ターン・バック・ユア・マインド」と、そのB面「ヒア・トゥデイ、ゴーン・トゥモロウ」も入っている。これはベッチャーのザ・ボールルームがバッキング・コーラスを担当した音源だ。

個人的には英エイスのガール・グループ・コンピで初めて知ったザ・ブーティックスの「ディッド・ユー・ゲット・ユア・ファン」がこちらにも入っていて、うれしい。アボット&コステロのルー・コステロの娘さん、クリスティーンがリード・シンガー。曲も自分で書いてます。「イッツ・イン・ヒズ・キス」のもろパクリっぽいメロディなのだけれど、かわいい曲だから許す(笑)。さりげないコーラスのラインとかが、もういかにもカート・ベッチャー。こちらがシングルB面曲だったのだけれど、A面「ミスター・マン・オヴ・ザ・ワールド」のほうも入ってます。

他にもキース・コリーが1963年に放った自作の一発ヒットを1967年、ゲイリー・アッシャーのプロデュースのもと、ミレニアムをバックに再録したラテン風味の「エナモラード」と、そのB面「シェイム・シェイム」もいい。さらに、アシッド・フォーク系のゴードン・アレクサンダーの作品群とか、いかにも1966年!という感じのポップなフォーク・ロック系グループのアクション・アンリミテッドとか、ボールルーム/サジタリアス/ミレニウムのメンバーでもあるサンディ・サリズベリーが“サンディ”名義でリリースした音源とか、サマーズ・チルドレンのプロモ・オンリー・シングルとか…。

もちろんサジタリアスもコンピの締めに2曲。詳細曲解説を含むライナーも充実。クリスマスには国内盤も出るようです。

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