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Frankie Valli & The Four Seasons Japan Tour 2019 (Sep 10, 2019 at Shouwa Joshi Daigaku, Hitomi Kinen Koudou, Tokyo, Japan)

フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ ジャパン・ツアー2019(2019年9月10日、東京・昭和女子大学人見記念講堂)

ほんと、感動しちゃって。

フランキー・ヴァリの来日公演初日。このブログでもここですでに事前の個人的盛り上がりについて触れましたが。やっぱり実際に体験すると、心の高まりは格別。1970年代半ばごろのヴァリ/フォー・シーズンズ・サウンドの“核”の部分をきっちり継承してみせるバック・バンドの面々の的確な演奏ぶりも素晴らしかったし、大ヒット・ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』以降の振り付けを積極的に取り込みながら完璧な東海岸系コーラス・ハーモニーを実現する4人のバック・ヴォーカル陣も見事だったし…。

でも、会場を埋め尽くした観客の誰もが思ったことだろうけど、何よりもフランキー・ヴァリ。85歳を迎えてなおフロントマンとして完璧な輝きを放ち続ける彼の存在にやられた。前回、2014年の初来日のときもすごいと思ったけれど、今回はもっとすごかった。やばい。かっこいい。

もちろん、まだ今夜も東京でコンサートがあるし、大阪公演もあるし。さらに、ありがたいことにぼくは某音楽誌からコンサート・レヴューも依頼されているし。詳しくはそちらに書かせていただくことにして、ここでのネタバレなどは避けたいと思いますが。

なので、そういう場では書くことができない、きわめて私的かつおセンチな思いを今朝のブログでは軽く綴っておこうかな、と。1曲くらい具体的に曲目を書いても問題ないと思うので、書きますが。中盤、「神に誓って (Swearin’to God)」が歌われた。1975年2月にフランキー・ヴァリのソロ名義でリリースされたアルバム『クローズアップ』に収められ、やがて5月にシングル・カットもされた曲。ヴァリがいわゆるディスコ・ビートを積極的に取り入れた最初の作品とも言われるあの曲。

昨夜、それ聞きながら、なんだか泣けてきた。別に感傷的なバラードでも何でもない、むしろファンキーで、グルーヴィな1曲。さすがにボブ・クルーの作品だけに、どこかほのかに東海岸ならではのメロウな要素もはらんではいるのだけれど、曲調からすれば特に泣けてくるようなものではないのに。44年前、この曲を初めて聞いたときの感動が今もまだそのまま、本当に新鮮なままぼくの心を震わせてくれたという、その事実に、なんだか泣けてきてしまったのだった。

1975年、ぼくは本当によくこの曲を聞いていた。ほぼ毎日、『クローズアップ』というアルバム、特にそのアナログ盤B面を聞きまくっていた。B面1曲目に入っていたのはアルバムからの先行シングルとして前年暮れにリリースされ、春過ぎに全米1位に輝いた「瞳の面影 (My Eyes Adored You)」。これも大好きだった。この曲を目当てに買ったアルバムでもあった。でも、聞き込むうちに、B面ラストに収められていた「神に誓って」がとてつもなく好きになってきて。

間奏の途中でフェイドアウトしちゃうシングル・ヴァージョンではなく、この曲に限っては断然、10分半に及ぶ長尺のアルバム・ヴァージョンが好きだった。パティ・オースティンのゲスト・ヴォーカルなども交えながら展開する前半のポップでメロウでファンキーな味も最高だったけれど、後半、各プレイヤーのソロがえんえんと続くところがまたごきげんだった。

1970年代末に向かって、ディスコ・ブームの巨大な波に呑み込まれることで米ポップ・ミュージック全般がやがておかしなことになっていったのは事実。でも、1970年代半ばごろはまだまだいい形で様々な融合がなされていて。この曲もそのひとつ。60年代初頭のホワイト・ドゥーワップからラスカルズあたりのブルー・アイド・ソウルを経て連なる東海岸的イタロ・アメリカン・ポップ感覚の現在形というか、同時期に興味深い試行錯誤を繰り返していたアイズレー・ブラザーズやフォー・トップスを思わせるポップ・ソウル感覚というか、ディスコのグルーヴとティン・パン・アレイ系の伝統的ソングライティングとの絶妙な融合というか、そういう要素がこれでもかと詰まっていて、大好きだった。

日本では、まだシュガーベイブとかがひっそりデビューを果たしたばかりのころ。ポップ・シーン自体、荒れ野原だった。こういうサウンド、当時、日本で普通に暮らしていたらほとんど耳にすることがなかった。ほんの一部の意識的なミュージシャン以外、誰も取り組んでいなかった。それだけにこの曲がもたらしてくれた感激はひときわ大きかった。

人見記念講堂で2019年に聞く「神に誓って」は、そんな44年前の感激をぼくに鮮やかに思い出させてくれた。とともに、そのときに覚えた胸の高鳴りが今なおまったく色あせていないことも思い知らせてくれた。すごいなぁ、フランキー・ヴァリ。彼がボブ・クルー、ボブ・ゴーディオ、チャーリー・カレロ、ケニー・ノーラン、デニー・ランデル、サンディ・リンザーら優れた才能たちとがっちりタッグを組んで作り上げた音楽は、まじ永遠の宝だな…。

これからフランキー・ヴァリのコンサートご覧になる方、たっぷりお楽しみください。泣けます。きっと。

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