Disc Review

Working My Way Back To You / Frankie Valli & The Four Seasons (Rhino/Warner Music Japan)

君のもとに帰りたい〜ニュー・ベスト/フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ

ニック・ウォーターハウスとか、エドマール・カスタネダとか、今月もまたいろいろなジャンルの来日アーティストの公演を大盛り上がりで堪能させてもらいましたが。

今やぼくの心は来月、奇跡の再来日を果たすあの人のことでいっぱいです。そう。フランキー・ヴァリ。9月10日と11日に東京で、13日に大阪で、それぞれコンサートを行なう。やばい。特大ニュース。来日が決まった瞬間から盛り上がりっぱなしだ。そんな気持ちを、プロモーション用のパンフレットにも寄せさせていただいた。以下がそのパンフ用に書いた文章——

キャッチーでメロウな極上ポップ・サウンドに感涙必至!

1960年代から70年代にかけて、アメリカ東海岸に花開いたキャッチーでメロウでソウルフルな極上ポップ・サウンドを象徴するフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズ。フランク・シナトラからディオン、ラスカルズなどを経てブルース・スプリングスティーンへと雄々しく連なるイタロ・アメリカン音楽の系譜における最重要アーティストのひとつだ。グループ名義の「シェリー」「ラグ・ドール」「愛はまぼろし」、ソロ名義の「君の瞳に恋してる」「瞳の面影」「神に誓って」など、フランキー・ヴァリがボブ・ゴーディオ、ボブ・クルー、チャーリー・カレロら才能豊かな仲間たちと作り上げた名曲は永遠。そんな彼らが2014年の初来日公演に続き、奇跡の再来日を果たすのだから。ポップ・ミュージックを愛する者として絶対に見逃すわけにはいかない。通います! 全公演!

フランキー・ヴァリは1937年、ニュージャージー州ニューアーク生まれ。フランク・キャステルチオという本名からもわかる通り、イタリア系だ。

1953年にフランキー・ヴァリィ名義でデビュー。その後、様々なグループを結成・解散したのち、ロックンロール世代ならではの自由な発想を持ったソングライターでもあるボブ・ゴーディオらとともにフォー・シーズンズを結成。時代の潮目を読むことにかけては天才的なプロデューサーのボブ・クルー、緻密で洗練されたオーケストレーションでフォー・シーズンズの音作りに大いに貢献したアレンジャーのチャーリー・カレロら有能なスタッフとがっちりタッグを組んで、1962年の全米ナンバーワン・ヒット「シェリー」を皮切りに1970年代にかけて50曲近いチャート・ヒットを量産する活躍を見せた。

ヴァリはもともとロックンロールには興味がなかったという。アメリカ東海岸に暮らすイタリア系移民として、憧れの存在はやはり同郷ニュージャージー出身のイタリア系アメリカ人エンターテイナーの最高峰、フランク・シナトラ。目指す舞台はラスヴェガス。自分も正統派のシンガーになって、バックにフォー・フレッシュメンやモダネアーズのようなしゃれたハーモニーをあしらったヴォーカル・グループを結成したいと願っていた。そんな彼が、優れたロックンロール感覚を持ったソングライターや、流行のサウンドを的確に見抜く耳をもったプロデューサー、そして腕利きアレンジャーとがっちりタッグを組んだのだ。これが売れないわけがない。

つまり、ロックンロール以前も以後も、あるいは1950年代も1960年代も、すべてをまるごと包括することができる4つの才能が一致団結、一丸となった最強の音楽ユニット、それがフォー・シーズンズだった。先の引用文でも触れたことの繰り返しになるけれど、そこにはディオン&ザ・ベルモンツからブルース・スプリングスティーンへと至るロックンロール、ラスカルズのようなブルー・アイド・ソウル、フランク・シナトラのような永遠のポピュラー・ヴォーカル…東海岸のイタリア系アメリカ人ならではの多彩な音楽性すべてが共存していた。

だからこそ、彼らは1960年代半ば、ビートルズら若き英国勢の一時的な攻勢にも動じなかった。流行り廃りに左右されることなく、時を超えて多くのファンに愛され続けた。1966年からヴァリはグループ活動と並行してソロ・シンガーとしても活躍。「君の瞳に恋してる」「瞳の面影」「神に誓って」「グリース」など、多くのソロ・ヒットも放っている。

様々な事情により1960年代後半から1970年代初頭にかけて低迷期はあったものの、1970年代半ばには見事な復活劇を展開し、さらに1990年代には「ロックンロール名誉の殿堂」入りも果たした。2005年にブロードウェイで開幕して以来、2016年までロングランを続けた自伝的ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』も大当たり。ブロードウェイだけにとどまらず、ラスベガス、シカゴ、イギリスのロンドン、オーストラリアのメルボルン、シンガポール、オランダ、南アフリカ、そして日本などでも上演された。2006年にはトニー賞で最優秀ミュージカル作品賞を含む4部門を、2009年にはローレンス・オリヴィエ賞でも最優秀ミュージカル作品賞をそれぞれ獲得している。

というわけで、今回の再来日公演。2014年の感動的な初来日公演同様、ぼくたちにフランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズの底力を世紀を超えて生体験させてくれる、もしかするとその最後の機会になってしまうかもしれない。盛り上がるっきゃないのだ。

そんな来日に合わせて、2枚組のオールタイム・ベストCDが出た。数年前、英国で編まれた40曲入りの2枚組ベストの曲目を来日に合わせて一部日本向けに入れ替えて再編成された盤。日本盤のみのボーナス・トラック「ネイティヴ・ニューヨーカー」を含めて、こちらは全42曲入り。お得! ぼくは曲目解説メインのライナーノーツも書かせてもらいました。これ聞きながら、来月の来日公演に向けてばっちり予習! ってことで。いかがでございましょう。

楽しむぞ! 盛り上がるぞ! イェイ!

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