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Disc Review

World Record / Neil Young & Crazy Horse (Reprise Records)

ワールド・レコード/ニール・ヤング&クレイジー・ホース

再発・発掘もの交えてとんでもない勢いでリリースをたたみかけているニール・ヤング。今年になって本ブログで取り上げるのはこれで6作目かな。5月に“オフィシャル・ブートレッグ”シリーズの3作を紹介して。7月に“スペシャル・リリース・シリーズ”の最新作、クレイジー・ホースと2000年に録音しながら未発表に終わっていた『トースト』を紹介して。8月にプロミス・オヴ・ザ・リアルを引き連れて行なった2019年ヨーロッパ・ツアーの模様を記録したライヴ・アルバム『ノイズ・アンド・フラワーズ』を紹介して。

で、今ここ。今回は1年弱前、去年の12月に出た『バーン』以来の新作だ。2019年に出た『コロラド』、去年の『バーン』同様、今回も引き続きクレイジー・ホースと組んで制作されている。いろいろなバンドと組んだり、ソロでやったり、柔軟に活動してきたニールさんだけれど、ここ数年、新作を作るならばやはりクレイジー・ホースと…ってことなのかも。

ちなみに3作連続で新作レコーディングにクレイジー・ホースが参加したのはニール・ヤング史上、今回が初のことだと思う。この人たちの特別な絆、年齢を重ねるとともにさらに深まってきているということか。

ご存じの通り、現在クレイジー・ホースには引退を宣言したポンチョ・サンペドロに代わってニルス・ロフグレンが入っていて。ブルース・スプリングスティーンのEストリート・バンドと掛け持ちしている。なもんで、Eストリート・バンドが本格稼働してしまうとクレイジー・ホースとしての活動ができなくなってしまうのだけれど。スプリングスティーンがEストリート・バンドとタッグを組んだツアーが来年に延期されたことで、ニルス・ロフグレンのスケジュールが空いたらしく。その隙をついてのレコーディングだ。

というか、なんでもニールさんは去年の暮れ、前作の『バーン』がリリースされた直後、クレイジー・ホースの3人、ビリー・タルボット、ラルフ・モリーナ、ニルス・ロフグレンに“来年の夏ごろまでには次のアルバムのための新曲を用意するから、そのつもりでいてくれ”と連絡してきたらしい。が、ノリノリのニールさん、あっという間に曲を書き上げてしまったとかで、4月の終わりごろ、急遽“再来週からレコーディング始めるぞーっ”と伝えてきた。で、クレイジー・ホースの3人は“おいおい、5月はまだ夏じゃねーだろ”とブツブツ言いながら、しかしニールさんの下に集結。

『コロラド』と『バーン』は1850年代、コロラドのロッキー山脈の高地に建てられた古い木造の納屋を改造/再建した“スタジオ・イン・ザ・クラウズ”にこもって、時には酸素吸入とかまで行ないながらレコーディングされていたけれど、今回は共同プロデューサーにリック・ルービンを起用したこともあり、ルービンがカリフォルニア州マリブに所有しているビーチ・フロントのスタジオ“シャングリ・ラ”での録音。

山から海へ。大きなシチュエーションの変化を反映したか、曲によってはアイリッシュ・アコーディオンやパンプ・オルガンなども導入。収録された11曲中7曲でニール・ヤングはパンプ・オルガンかピアノを弾いている。ニルス・ロフグレンも曲によってペダル・スティール、ラップ・スティール、アコースティック・ギター、アコーディオンなどを演奏。ギター・バンドとしてのクレイジー・ホースのアイデンティティに縛られすぎることのない柔軟なアレンジが楽しめる。『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』や『ハーヴェスト』のころのアプローチに立ち返った感触もあり。とはいえ、これもまたもちろん揺るぎなきクレイジー・ホース・サウンドの一形態。今回も基本、ベーシック一発録り形式のアナログ・レコーディングだったみたい。

先行リリースされていたメロウな「ラヴ・アース」をはじめ、タック・ピアノと温かいハーモニーが印象的な「ジス・オールド・プラネット(チェンジング・デイズ)」とか、ノスタルジックなワルツ「ザ・ロング・デイ・ビフォア」、ハーモニカの響きが心地よい「ウォーキン・オン・ザ・ロード」など、メロウ系のものもあれば、「ザ・ワールド(イズ・イン・トラブル・ナウ)」のようなブルージーにグルーヴするものや、「ザ・ワンダー・ウォント・ウェイト」のようなパンプ・オルガンとローファイなビートがサイケに交錯するものがあったり。

昨日というか今朝、深夜にストリーミングがスタートしたばかりで、ブツもまだ届いておらず、歌詞に関してはまだあまり深く把握していないのだけれど、「ラヴ・アース」を筆頭に、気候変動など地球を取り巻く危うい現状と不確かな未来を真摯に向き合った楽曲が中心みたい。だけど、15分超の「シヴォレー」のような、車のかっこよさを歌ったラフな轟音ロック・チューンも含まれているという、なんだか整合性がとれているんだかとれていないんだかよくわからない感じもまたニール・ヤング。ただ、「シヴォレー」も古いシヴォレーを見たときによみがえる記憶のようなものを描いていて。“ほどなく俺たちは連絡を絶った/俺たちは若く愚かだった/すべてはもう過去のことだ…”みたいな歌詞も出てくるから、これまた車というか、化石燃料をめぐるニールさんなりの問題意識を描いた曲なのだろう。

アルバム・ジャケットに映し出されているのはニール・ヤングの父親であるジャーナリストのスコット・ヤングの若き日の写真。似てるねー。受け継いでいるってことを表明しているのかな。見た目だけでなく、たぶん精神的な面も。

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