Disc Review

Capitol Theater, Passaic, NJ: September 19, 1978 / Bruce Springsteen & The E Street Band (Live.BruceSpringsteen.net)

キャピトル・シアター 1978年9月19日/ブルース・スプリングスティーン&ジ・E・ストリート・バンド

このところブルース・スプリングスティーンは、自らの公式ライヴ・アーカイヴ・サイト“Live.BruceSpringsteen.net”を舞台に、ものすごい勢いで過去のライヴ音源を発掘リリースしまくっていて。あまりにも興味深い音源が次々出るもんで、今週の『Music SMiLE』ではスプリングスティーンが最近蔵出しした過去のライヴ音源の特集をしているくらい。

ちなみに、今日、10日(火)は1979年9月21日と22日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれたベネフィット・コンサート“ノー・ニュークス”の模様。明日からは、1980年12月29日と31日のナッソー・ヴェテランズ・メモリアル・コロシアムでの音源、1986年10月13日の“ブリッジ・スクール・ベネフィット・コンサート”での音源、1992年7月25日のメドウランズ・アリーナ音源などを連日放送していく予定だけど。

もう番組の録音を全部し終えちゃったところで、とてつもないやつがまた出ました。しまった。特集やるの、早まった(笑)。これも番組でかけたかった…。今回出たのはスプリングスティーン・ファンにとってもっともおなじみであろう海賊ライヴ盤『Pièce De Résistance』が録音された公演、1978年9月19日、ニュージャージー州パセーイクのキャピトル・シアターでのパフォーマンス。“ノー・ニュークス”の1年前、アルバム『闇に吠える街』リリース後の“エッジ・オヴ・タウン・ツアー”の一環として行なわれた、スプリングスティーンのベスト・コンサートのひとつとしても名高いキャピトル・シアター公演3日間のうち初日の記録だ。

このツアーに至る前、1975年にアルバム『明日なき暴走』で本格ブレイクを果たしたスプリングスティーンは、しかし前マネージャーのマイク・アペルとの間のもめ事が訴訟に発展し、なかなか次のアルバムを作ることができなくなって。でも、そんな苦難の時期を彼はやはりライヴ活動で埋め、さらなる高い評価を勝ち得ていった。そうやって3年間、“場数”をこれでもかとばかり重ねたあげくの1978年だ。このツアーでのスプリングスティーン&ジ・E・ストリート・バンドの面々は、本当に乗りに乗っている。確実にピーク。まじ、この時期に彼らを見ることができていたらなぁ…と。いつも悔しく思う。どうしようもないこととはいえ、悔しくてならない。

このツアーの模様は行く先々でライヴ収録され各地のFM局がオンエア。5個所でのライヴをまるまる収めた15枚組とかが非公式に出たこともあった。そのうちのひとつが当時全米10局でオンエアされたキャピトル・シアター音源ということになる。1980年代に入って早々、ぼくが最初に手に入れたスプリングスティーンのブートもこのライヴを収めたものだった。たぶん『Pièce De Résistance』をもとにして、さらにコピーされた盤だったのだろうと思う。そのブートで「ファイア」や「ビコーズ・ザ・ナイト」のスプリングスティーン本人ヴァージョンを初めて耳にしたんだったっけ。収録時間を短く刈り込むためか、歓声の部分とか曲間とかをけっこう乱暴にカットした、なんとも慌ただしいアナログLP3枚組で。でも、よく聞いたなぁ。怒濤のパフォーマンスとはこれだなと感じたものだ。

なので、まあ、全部知っているといえば知っている音源なわけだけれど。今回、なんとオリジナルのマルチ・トラック・テープから演奏パートごとの音をきっちりデジタル・データとしてリストア。新たにミックス・ダウンからやり直したということで。音質、音圧、ともに最高です。ブートで聞いていたときも、すげえなと、それなりにぶっとびながら楽しんでいたものだけど、今回さらにいい音になって、それはそれは圧倒的。とびきり熱くて、とびきり切ない。夢のような3時間超だ。

スプリングスティーン、ロイ・ビタン、クラレンス・クレモンズ、ダニー・フェデリシ、ギャリー・タレント、スティーヴ・ヴァン・ザント、マックス・ワインバーグという最強ラインアップ。一体感、半端なし。スプリングスティーンが日本で初ライヴを披露してくれたのは、結局この7年後、1985年のことだ。あのとき、ぼくを含む日本のロック・ファンの大多数がようやく彼のライヴを生で本格体験。ぼくも必死にチケットとりまくって代々木体育館に通いましたよ。燃えましたよ。

でも、あれはもう別物だったのかも。マイアミ・スティーヴがいなくなっていて、代わりにニルス・ロフグレンと、現在の奥さまであるパティさんが参加していたというメンバーの違いも含めて、別物。シーンにおけるスプリングスティーンの立ち位置もすでに変質していた気がするし。考えれば考えるほど、やっぱり70年代にこの人たちのライヴを体験したかった、と。そういう思いがふつふつ煮えたぎってくる。

でも、こうやって音源がいい状態で残っていることだけが救いだ。これからもいろいろ出てくるんだろうなぁ。 Live.BruceSpringsteen.net でしか買えないとはいえ、mp3、CD、ロスレス、ハイレゾなど、様々なフォーマットでのリリース。フトコロと相談しつつ、どのフォーマットで入手するか、しっかり検討しないと。こういう70年代の彼らの初期激走を音で浴びるほど追体験して初めて、ようやくぼくたちはブルース・スプリングスティーンという人がどれほどすごい音楽家なのかを知るスタート地点に立てるのかもしれないのだから。

ノリノリの時期に彼らのライヴに接することができなかった悔しさが一気に吹き飛ぶような、いや、さらに増すような…。うれしくも悩ましい音源です。

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