Disc Review

It’s Wonderful: The Complete Atlantic Studio Recordings / The Rascals (Now Sounds/Cherry Red)

イッツ・ワンダフル! ザ・コンプリート・アトランティック・レコーディングス/ザ・ラスカルズ

今から26年前、1998年に日本独自企画で編まれた強力なボックスセット『ラスカルズBOX~アトランティック・イヤーズ』ってやつ、覚えてる方いらっしゃいますかね。

あれは快挙だった。ラスカルズの大ファンであることを公言する山下達郎氏の企画・監修による総まくりボックス。1965年、アトランティック・レコードが契約した白人アーティスト第1号として彼らがデビューしてから、やがて1971年、CBSコロムビアに移籍するまでに残した全オリジナル・アルバムを詰め込んだ7枚組だった。

今ではラスカルズの再発CDというのもずいぶんといろいろ出ているけれど、当時、CD化が実現していたアトランティック時代のラスカルズのアルバムといえば、ベスト盤以外、1966年の『ザ・ヤング・ラスカルズ』、1967年の『コレクションズ』と『グルーヴィン』という初期3作のみで。1968年の『ワンス・アポン・ア・ドリーム』以降の4枚はずっと未CD化状態だった。彼らのキャリアのピークを形成した1968年の『フリーダム・スイート』も、1969年の名盤『シー』も未CD化。

そんな時期に達郎さんがコンパイルした7枚組は、だから本当にうれしかった。オリジナル・アルバム未収録のシングル・ヴァージョンとか、外国語ヴァージョンとかも入っていて。まあ、初回生産限定盤だったので、買えなかった方もいるかな? 

そのちょっと後、2001年にこの企画を本家が引き継ぐ形でライノ・レコードが『オール・アイ・リアリー・ニード:ジ・アトランティック・レコーディングズ(1965〜1971)』って同趣向の6枚組を編纂したこともあったけれど。これもライノ・ハンドメイド・シリーズからの限定リリース。どっちにしても20年以上前の話だ。どっちも今では入手困難っぽい。

でも、なんとうれしいことに、それらと同趣向のボックスセットがこのほど英チェリー・レッド傘下のナウ・サウンズから改めて登場した。それが、またまた7枚組というボリュームで編まれた本作『イッツ・ワンダフル! ザ・コンプリート・アトランティック・レコーディングス』。5月末に輸入盤が出て、6月アタマに国内リリースもあって。ちょびっと遅れてのご紹介です。

コンセプトは達郎さんのやつと同じ。1965年から1971年まで、ラスカルズがアトランティック・レコードに在籍していた時代の全オリジナル・アルバム7作をそれぞれCD1枚ずつに分載したものだ。ただし、今回は初期4作をステレオとモノラル、両方のミックスで完全収録。もちろんオリジナル・アルバム未収録のシングル曲や、シングル用の別ヴァージョン、外国語ヴァージョンなども併録。さらに今回初登場の初期ヴァージョン、別ヴァージョンなど未発表トラックがなんと14曲! すべてアレック・パオラが丁寧なリマスタリングを施している。

イタリア系白人ながら、愛する黒人音楽に追い付け追い越せとばかりカヴァー曲中心にソウルフルな音楽的スタイルの模倣にいそしんでいた初期を経て、徐々にオリジナル曲を増やしつつ、単なるスタイルを超えた本当の“ソウル”をつかみとり、独自の“魂の音楽”を作り上げることに成功した時期のラスカルズの雄々しい試行錯誤を、後追い世代もこの7枚組CDでまるごと追体験できるのだから。ありがたい限り。もちろんマニアも見逃せない。なにせ未発表トラック14曲だもの。

バンドのキャリアを詳細に追ったライナーノーツ、アーカイヴから発掘された詳細なメモ、貴重なイラストなどを満載した60ページのブックレット付き。やばい。ストリーミングはないから、ブツをゲットがマストです。

The Young Rascals - Temptation's 'Bout To Get Me (Early Version) [Previously Unissued]

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