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Disc Review

The Blues Don’t Lie / Buddy Guy (RCA Records)

ザ・ブルース・ドント・ライ/バディ・ガイ

バディ・ガイというアーティストの名前を初めて知ったのは1972年。その年の夏、土曜日の午後だったと思うけれど、NHKの伝説の洋楽番組シリーズ“ヤング・ミュージック・ショー”の一環として、『スーパーショー』ってのが放送されたときのことだ。当時、ぼくは高校生。まだ家庭用ビデオなど存在しなかったことはもちろん、テープレコーダーへのライン入力なんてしゃれたワザも知らなかった時代だけに、カセット・テレコをテレビのスピーカーの前に置いて、「絶対しゃべんないでね」とか家族に告げて、内蔵マイクでいじましく同録したことを覚えている。

レッド・ツェッペリンとかスティーヴン・スティルスとかエリック・クラプトンとかジャック・ブルースとかバディ・マイルズとか、そのあたりのアーティストがロンドンの倉庫みたいなスタジオで繰り広げたジャム・セッションふうの演奏風景を収録した番組で。ジミー・ペイジがペイントしたテレキャスを弓弾きするところをついに目の当たりにできたぞとか、クラプトンの出演シーンが思いの外少なかったなーとか、いろいろ思いながら見終えた後、でもやけに印象に残ったのは、まだ個人的には名前も知らなかった“濃ゆーい”個性との出会い。3本くらいの管楽器をいっぺんに吹いたりしちゃうローランド・カークの謎めいたディープ・ソウル感覚とか、なんだか場違いなシチュエーションの下、クールさとグルーヴィーな感触とが絶妙に交錯する演奏を淡々と披露したMJQとか、そういうジャズ系アーティストのパフォーマンスに思いきり惹かれたっけ。

と同時に、もう一人、とてつもなく強い印象をぼくに残してくれたのがバディ・ガイだった。この人も当時のぼくにとっては“新キャラ”。ジャック・ブルースとバディ・マイルズによるリズム隊とホーン・セクションを従えて歌った「メアリー・ハッド・ア・リトル・ラム」とか、まじ、しびれた。スーツに身を包んでストラトキャスター抱えたファッションも、高音から鋭く切り込んでくるヴォーカルも、派手なチョーキングをかますテンション高めのギター・プレイも、とてつもない勢いが感じられて。当時高校生だったぼくは思いきり盛り上がったっけ。烏帽子みたいなのかぶったローランド・カークとの共演で聞かせた「ストーミー・マンデー」とかも渋かった。

で、その数年後、日本でブルース・ブームが巻き起こって。1975年の春、そのバディ・ガイがジュニア・ウェルズとのコンビで来日。ライヴ・アルバムも作ってくれて。さらに印象が深くなったというか。親しみが増したというか。それまでにB.B.キングを見たこともあったし、スリーピー・ジョン・エスティスやロバート・ジュニア・ロックウッドを見たこともあったし。でも、衝撃度で言うと、個人的にはバディ・ガイがいちばんだった。ブルース・ギターのかっこよさを生で思い知らせてくれた。そういう意味では、この人もまた恩人。ぼくと同世代の洋楽ファンの中には同じような思いを抱いている方も少なくないと思う。で、初めて見たものを親と思うような感じで、以降、1950年代末のデビュー時にまでさかのぼりつついろいろな音源を聞き続けてきたわけですが。

新作、出ました。1980年代は活動がちょっと滞り気味だった印象もあったけれど、1990年代に入ったあたりからけっこうコンスタントにアルバム・リリースをするようになって。グラミー・ノミネートの常連にもなって。かつてはチョーキング一発の飛び道具ブルースマン的イメージも強かったものの、年輪を重ねる中、持ち前の直情的な味はそのまま、しかし深みと太さを増して現役ブルースマンの最高峰的存在になって…。21世紀に入ってからも力作をリリースを続けながらぼくたちを楽しませくれている。

で、86歳を迎えた今年、出たのが本作。嘘も言えない『ザ・ブルース・ドント・ライ』。2018年の『ザ・ブルース・イズ・アライヴ・アンド・ウェル』 以来、4年のブランクを経てのリリースだ。プロデュースは前作に引き続きトム・ハムブリッジ。これまでもブルース系のみならず、ロック系、カントリー系など幅広いジャンルのアーティストたちと共演してきたバディさんですが、今回も共演陣が強力。メイヴィス・ステイプルズ、エルヴィス・コステロ、ジェイムス・テイラー、ボビー・ラッシュ、ジェイソン・イズベル、ウェンディ・モートンらがフィーチャリング・アーティストとしてクレジットされていて。しかし、どんなジャンルの相手が来ても、バディさん、余裕で胸を貸してごきげんなコラボレーションを聞かせてくれる。ビートルズの「アイヴ・ガット・ア・フィーリング」とかも演ってます。

「俺はB.B.キング、マディ・ウォーターズ、サニー・ボーイ・ウィリアムソンⅡ、みんなに約束したんだ。俺が生きている限り、ブルースってやつも生かし続けてやるってね」

プレス・リリースにそんなバディさんの言葉が載っていた。他の誰にこんなこと口にできましょう。今月末には国内盤(Amazon / Tower)も出ます。

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