Disc Review

Jazz Fest: The New Orleans Jazz & Heritage Festival / Various Artists (Smithsonian Folkways)

JazzFest

ジャズ・フェスト〜ザ・ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスティヴァル/ネヴィル・ブラザーズ、トロンボーン・ショーティ、アラン・トゥーサン、プロフェッサー・ロングヘア、ドクター・ジョンほか

ご存じ、ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスティヴァル。米国ルイジアナ州ニューオーリンズで毎年4月から5月にかけて開催される伝統ある音楽フェスだ。マルディグラと並んで重要なニューオーリンズのお祭り。“ジャズ・フェスト”とだけ言えば、もうこのイベントのことを指すくらい。

もともとは、ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルなどのプロデューサーとして知られるジョージ・ウェインが、同じようなフェスをニューオーリンズでも開催してほしいと市から依頼を受けたのがきっかけ。それが1962年のことだったようだが、その後、今では野外フェスの重要プロデューサーとしておなじみになったクイント・デイヴィスをはじめ、リチャード・アレン、アリソン・マイナーらと連携しつつ、徐々に体制を整えて、1970年、ニューオーリンズ・ジャズ&ヘリテイジ・フェスとして新たにスタートを切った。

ということで、今年でめでたく開催50年目に突入。それを祝して、スミソニアン・フォークウェイズから充実のボックスセットが出た。過去、このフェスで収録された様々なライヴ音源から重要な50曲を5枚のディスクに収めた豪華箱。

まあ、今やこのフェスの場合、ジャズ、ブルース、R&B、ファンクといったニューオーリンズという土地柄に深く絡んだ音楽だけでなく、ブルース・スプリングスティーンとかトム・ペティとかエリック・クラプトンとかサンタナとかアース・ウィンド&ファイアとか、人気のロック/ソウル系アーティストも多数出演している。今年もヴァン・モリソンが大いに盛り上がったようだし、ミック・ジャガーさえ元気ならばローリング・ストーンズも登場する予定だった。

が、さすがスミソニアン・フォークウェイズだけあって、このボックスはぐっと地元よりというか、ニューオーリンズという土地柄に学究的にこだわった選曲がなされているようだ。いわゆるニューオーリンズ・ジャズとかR&Bはもちろん、ネイティヴ・アメリカン、カリビアン、ヨーロピアン、ヒスパニックなど、港町ニューオーリンズらしい様々な異文化が渾然と渦巻く、そんな音楽性がたっぷり味わえる仕上がりになっている。

地元のWWOZ局の録音やマイケル・マーフィー・コレクションなどを基本に、1970年代から2010年代まで、充実のライヴ音源集。トロンボーン・ショーティ、テレンス・ブランチャード、チャンピオン・ジャック・デュプリー、ジョン・ブッテ、アラン・トゥーサン、アール・キング、アーマ・トーマス、クラレンス“フロッグマン”ヘンリー、プロフェッサー・ロングヘア、ディクシー・カップス、ドクター・ジョン、ダーティ・ダズン・ブラスバンド、プリザヴェイション・ホール・ジャズ・バンド、バックウィート・ザディコ、ミーターズ、ゲイトマウス・ブラウン、ワイルド・マグノリアス、そしてもちろんネヴィル・ブラザーズなど…。ニューオーリンズのシーンを盛り上げた重要アーティスト総まくりだ。かつてはフェスを締めくくる定番だったというネヴィルズの「アメイジング・グレイス」とか、もうなんだか泣けてきます。

ブックレットもとてつもなく充実。その辺の資料性も含めて手元に揃えておきたい箱って感じかも。

ちなみに、このフェスに毎年のように通って、あれこれ楽しみまくってぼくをいつもうらやましがらせている米米CLUBのフラッシュ金子をゲストに迎えて、ぼくのラジオ番組『萩原健太のMusic SMiLE』で今日6月17日から2週にわたり本ボックスセットの特集をやります。東京では放送されていないんですが、JFN系各局で月〜金、毎日放送中。キンちゃんに計10回登場してもらって、毎日このボックスから1曲ずつオンエアします。聞くことができる環境にいらっしゃる方、ぜひチェックしてみてください。聞けない方も、よろしければradikoプレミアムか何かで、ひとつ…(笑)。

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