Disc Review

Before After / Daryl Hall (Legacy Recordings/Sony)

ビフォー・アフター/ダリル・ホール

1970年代から80年代にかけて、ロックンロールの伝統と最先端のセンスを合体させ極上のポップ・ミュージックをクリエイトしてみせた最強ブルー・アイド・ソウル・デュオ、ダリル・ホール&ジョン・オーツ。大好きだったなー。つーか、今でも大好き。

もちろん二人で活動しているときこそが最強ではあるのだけれど。ホールさんもオーツさんも、デュオ活動と並行してちょいちょいリリースしてきたそれぞれのソロ・アルバムも悪くなくて。見逃せない、聞き逃せないソロ・パフォーマンスがたくさん残っている。

で、今回、ホールさんのほうが過去のソロ活動を全30曲に凝縮して振り返るCD2枚組自選ベストを出してくれた。それが本作『ビフォー・アフター』だ。オリジナル・ソロ・アルバムからピックアップされたスタジオ・テイクは全30曲中22曲。

内訳は、1977年にロバート・フリップをプロデューサーに迎えて制作された『セイクレッド・ソングズ』(発売はいろいろあって1980年)から6曲、デイヴ・スチュワートをプロデューサーに迎えた1986年の『ドリームタイム(Three Hearts In The Happy Ending Machine)』から5曲、1993年の『ソウル・アローン』からも5曲、1996年の『キャント・ストップ・ドリーミング』から4曲、そして2011年の『ラフィング・ダウン・クライング』から2曲。

ちなみに日本盤にはボーナスとして『キャント・ストップ…』の収録曲「ホワッツ・イン・ユア・ワールド」が1曲追加されているので全31曲中23曲という感じだ。

で、残る8曲が、2007年にインターネット番組としてスタートして、やがてテレビ番組化もされたスペシャル・プログラム『ライヴ・フロム・ダリルズ・ハウス』からの貴重なセッション音源。この番組、ダリル・ホールがホストとなって自宅や自身の経営するライヴ・レストランなどにゲストを迎えて、ご飯食べたり、ダベったり、セッションしたりするもので。YouTubeでご覧になった方も多いことだろう。

で、そんな『ライヴ・フロム・ダリルズ・ハウス』から、デイヴ・スチュワートのゲスト回に披露したユーリズミックスのナンバー「ヒア・カムズ・ザ・レイン・アゲイン」、モンティ・モンゴメリーをゲストに迎えた『セイクレッド・ソングズ』からのアウトテイク曲「ノース・スター」、師匠筋とも言うべきトッド・ラングレンを迎えて彼の名曲をデュエットした「キャン・ウィー・スティル・ビー・フレンズ」。これら3曲がゲスト入りの音源。

で、ポール・バタフィールド・ブルース・バンドの「イン・マイ・オウン・ドリーム」、ルビー&ザ・ロマンチックスの「アワー・デイ・ウィル・カム」、グラディス・ナイト&ザ・ピップスの「ニーザー・ワン・オヴ・アス」という3曲をダリル・ホール・バンドでカヴァーした音源と、さらに最新ソロ・アルバム『ラフィング・ダウン・クライング』からその表題曲と「プロブレム・ウィズ・ユー」の2曲の生演奏音源と。『ライヴ・フロム・ダリルズ・ハウス』を見るたび、この人たちのコーラスのうまさみたいなものを思い知ってきたものだけれど。その辺をじっくり音源として楽しめるのもうれしい。

これら、録音時期も、シチュエーションも、サウンドもバラバラな30曲(+1)が順不同でCD2枚に詰め込まれて、ダリル・ホールという得難いアーティストの奥深く幅広い才能を改めて思い知らせてくれる、と。そういうわけです。いやー、ありがたく、楽しいベスト・アルバムじゃないですか。評価が今なお賛否分かれがちな『セイクレッド・ソング』の再評価とかにも絶好の機会かも。

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