Disc Review

Duane & Greg Allman / Duane & Gregg Allman (Solid/T.K.)

デュアン・アンド・グレッグ・オールマン/デュエイン&グレッグ・オールマン

1972年に米TKレコード傘下のボールド・レコードがリリースしたレアなアルバムの世界初オフィシャルCD化が日本のソリッド・レコードによって実現した。

“デュエイン(デュアン)・アンド・グレッグ・オールマン”名義でのリリースではあるけれど、実際にはブッチ・トラックス、スコット・ボイヤー、デヴィッド・ブラウンという後のカプリコーン系サザン・ロック人脈が結成していたバンド“ザ・サーティファースト・オヴ・フェブラリー”のセカンド・アルバム用に1968年に録音された音源らしい。

本チャンのレコーディングだったとも、デモ録音だったとも言われている。確かに演奏をミスってる個所がそのまま残っていたりもするのだけれど、いずれにせよこのセッションにはオールマン・ブラザーズ・バンド結成以前のオールマン兄弟、デュエインとグレッグがゲスト参加。この時期、すでに数カ月にわたってザ・サーティファースト…の面々と活動をともにしていたとのこと。プロデュースはスティーヴ・アライモとクレジットされているが、実際はエンジニアを担当しただけとも言われている。スタジオはマイアミ郊外のTKスタジオで。

ほとんどの曲でデュエインがブルージーなギターを披露し、グレッグがヴォーカルを担当しているため、オールマン・ブラザーズ・バンドが一旗揚げた後、1972年に発掘リリースされた1枚だった。でも、なぜかジャケット上のグレッグの表記が“Gregg”ではなく“Greg”なんだよなぁ。レーベル違い、ジャケット違いのリリースも多数。ぼくはジャケットがオリジナル・ボールド盤とはちょっとだけ違うドイツ盤LPで聞いてました。

日本でも別ジャケットでポリドールから出ていたっけ。70年代の終わりごろになって、さらなる別ジャケ、別タイトルのLPが出た記憶もある。CD時代になってからは、オフィシャルな形ではオールマンズのCD4枚組ボックスに2曲ほどザ・サーティファースト…名義で収められただけだと思う。全曲版CDもあったことはあったけれど、なんとなくブートまがいのものが多かったような…。

と、そんな具合にけっこうしぶとく生き残ってきたレア音源。で、去年だったか一昨年だったか、新契約が結ばれたのかどうなのか、一足先にストリーミング配信が実現。その流れでついに日本で公式初CD化がなされた、と。そういうことらしい。ややこしいけど、やはりオフィシャルってのはうれしいものです。

時期的にはオールマン兄弟がアワー・グラスというバンドで“売れるものを作れ”という外圧を受けつつ様々なカヴァー曲に取り組んでいたころ。アワー・グラスでもソフト・ロックとかフリー・ソウルとか日本で呼ばれているタイプの音楽好きにアピールできそうな曲が多かったけれど、この『デュアン・アンド・グレッグ…』もそんな感触。

のちにオールマン・ブラザーズ・バンドでレコーディングすることになる名曲「メリッサ」の初演版もあるし、デュエインがデレク&ザ・ドミノスで演奏したブルース・スタンダード「だれも知らない (Nobody Knows You When You're Down and Out)」もこっちのほうが早い録音だし、ゴールドブライアーズやグレイトフル・デッドのヴァージョンでもおなじみ「モーニング・デュウ」とかもやってるし。

レイ・ジェラルド作とクレジットされた「カム・オン・ダウン・アンド・ゲット・ミー」は実際にはエディ・ヒントン作の「ダウン・イン・テキサス」。これはアワー・グラスでもレコーディングしていた曲の再演。こういうクレジット間違いが多い盤で、グレッグが作った曲は「メリッサ」だけ、それもスティーヴ・アライモとの共作とクレジットされているけれど、これはもちろんグレッグ単独作。「ゴッド・レスト・ヒズ・ソウル」もクレジットではアライモ作になっているけれど、実際はマーティン・ルーサー・キングの暗殺を受けてグレッグが書いた曲だ。出版契約の際、手っ取り早くお金が欲しかったからか、ほんの数百ドルでアライモに権利を売ってしまったものらしい。

土臭さと洗練とが不思議なバランスで交錯する世界観がなんとも興味深い。ほどなく独自の南部人ならではのソウル感覚を見事覚醒させることになるオールマン兄弟の若き日の記録として、微笑ましく楽しめるはず。

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