Disc Review

Love and Other Hopeless Things / The Pearlfishers (Marina Records)

投稿日:2019.07.16 更新日:

ラヴ・アンド・アザー・ホープレス・シングズ/ザ・パールフィッシャーズ

4月に出ていたのか…。気がつかなかった。不覚。BMXバンディッツのデヴィッド・スコットによるポップ・ユニット、パールフィッシャーズが5年ぶりに放った8作目のフル・アルバム。まあ、前の『オープン・アップ・ユア・カラーリング・ブック』も4年ぶりだったし、その前もずっと、ゆったりとしたペースでの活動だったから、5年ぶりくらいで驚くこともないのだろうけれど。むしろ、そのせいで油断しすぎ。ついリリース自体を見逃してました(笑)。

オープニングを飾るアルバムのタイトル・チューンから、もう紛う方なきデヴィッド・スコットの世界。いきなりハーブ・アルパートっぽいというか、バート・バカラックっぽい淡々としたフリューゲル・ホーンが登場。つかみはばっちりだ。奏でているのは、2年ほど前、パールフィッシャーズの楽曲ばかりジャズ・アレンジでカヴァーしまくったアルバムをリリースしたこともあるコリン・スティール。

でもって、“また霧深い月曜の朝がやってきた/フェリーで街へ向かう/すべての人々の夢を思い描きながら…”とか歌い出して。さすが、湾岸都市グラスゴーを本拠とするアーティストならではというか。バカラック、ブライアン・ウィルソン、トニー・ハッチ、ポール・マッカートニー、ローラ・ニーロら往年の名匠の偉業にインスパイアされつつ、パディ・マクアルーン、マイケル・ヘッドあたりへと連なる“あの”持ち味というか。憂いに満ちた感触がたまらない。タイトルのシニカルな感じも、いかにもって感じ。

この手触りが今回もアルバム全編を貫いている。ブランクがあっても変わらない。最高。ストリングス・アレンジはジョージ・マーティンを思わせるし、爽やかさと切なさが交錯するポップなシャッフル・チューンにはギルバート・オサリヴァンの香りが漂うし、エクスペリメンタル系に寄ってしまう前のスコット・ウォーカー的な哀感へのアプローチもあるし。今の時代の空気感がどうとか、そういうテーマはまったく追い求めていない感じで。そこもまた素敵だ。

ギター、ベース、キーボード、さらにはマンドリンなど、多くの楽器をデヴィッド・スコット自身が手がけている。先述のコリン・スティールのほか、ディー・バール(ベース)、ジェイミー・ギャッシュ(ドラム)、デレク・スター(パーカッション)、マデリーン・プリチャード(コーラス)、スチュアート・キッド(コーラス)ら、BMXバンディッツ/パールフィッシャーズゆかりの面々も随所でサポート。一時期、打ち込みに走った時期もあったけれど、やはりパールフィッシャーズは人力系、アコースティックなアレンジがいい。

ボサノヴァ風味の「ワンス・アイ・リヴド・イン・ロンドン」はスワン・ダイヴのビル・ディメインと、メランコリックな「サムタイムズ・イット・レインズ・イン・グラスゴー」はデュエット・パートナーとしても参加しているシンガー・ソングライター、ベッチ・ウォレスとのそれぞれ共作。それ以外はすべてデヴィッド・スコット作。これ早く聞いていたら、極私的上半期ベスト・アルバムに入れていたかも。

それにしても、ビル・ディメイン。チャーリー・フェイ&ザ・フェイエッツでもいい仕事してたけど。やっぱすごいな、この人。

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