Disc Review

The Kinks Are...The Village Green Preservation Society (3-CD Special Deluxe Edition) / The Kinks (Sanctuary)

ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティー(3CD)/キンクス

8月24日のダディ&ザ・サーフビーツ@渋谷クロコダイル、当初、リード・ギターのダディ高橋が諸般の事情で参加できないかもしれなくて。でも、ここ数年、毎年恒例の夏のイベントでもあったので、今回は全曲ぼくのリード・ギターで乗り切ろうかなと思っていたのだけれど。

うれしいことにダディ、参加できることになりました。てことで、ダディのダイナマイト・サーフ・ギターもフィーチャーしつつ、今回のためにスペシャルで準備していたぼくのリード・ギターによる、ちょっと毛色の変わったレパートリーとの合わせ技でクロコダイル、お届けします。エレキ・インストで定番の「パイプライン」も「ダイアモンド・ヘッド」もやりませんが(笑)、たぶん日本のエレキ・バンドが過去ほとんどやったことがないベンチャーズ・ナンバーとか、たっぷりご披露しますので、その筋の方、その筋じゃない方ともども、ぜひ聞きに来てくださいね。

そういえば、先日、19日のCRT&レココレ@プラスワン。これも楽しかったです。木崎義二センパイと宮治淳一を迎えてお届けしたフィフティーズ・オールディーズまつり。エルヴィス、バディ・ホリー、ムーングロウズ、フランキー・ライモン、ジョニー・バーネット、ジョニー・キャッシュなどなど、当時の映像も楽しんだりしながらの50年代ロックンロール/R&B大会で。ビートルズでロックンロールが始まったとか、ワケのわからん、ねつ造された歴史観がいまだに根強くはびこる日本ではふと見逃されがちな、ごきげんな音楽をたっぷり楽しんでもらえたと思います。オリンピック見ないでご来場くださったみなさま、ありがとうございます。来月も楽しいっすよ。ナイッ! って感じですよ。左の告知欄をぜひチェックしてください。

で、最近もっぱら聞いている音楽というと、実は先日のプラスワンでも超オフレコでかけてしまった、とあるブツなわけですが(笑)。それに関しては、あとひと月くらいは公表できないので。今回のピック・アルバムはキンクスにしましたよ。数カ月前、輸入盤屋さんで大いに話題になった3枚組だけれど。このほど国内発売も実現したようで。それを機会に取り上げることにしました。『ヴィレッジ・グリーン・プリザベイション・ソサエティ~デラックス・エディション』。

ロック・ファンならば誰もがご存じのこととは思うけれど、一応おさらいしておくと。キンクスは68年に本国イギリスでは7枚目にあたる新作アルバムを録音。12曲入りの盤が完成して、プレスも完了。あとは発売を待つのみとなっていた。実際にフランスとかイタリアではリリースされたようだ。当時、リプリーズを通じて別フォーマットのアルバム・リリースが続いていたアメリカには当地9枚目にあたるニュー・アルバム用に一部内容が違う11曲が送られて、準備完了。が、仕上がりに満足がいかなかったレイ・デイヴィスが突如待ったをかけ、発売中止/回収。一部の曲を入れ替えたり、リミックスしたりして、最終的に15曲入りへとアップグレードさせる形で世に出たのが『ヴィレッジ・グリーン…』だった。こうしたごたごたゆえに、めでたくリリースされたわりには売れずじまいだったが、後年、ぐんぐん評価が高まり、今ではキンクスの最高傑作と評されることもある1枚。

当時のレイ・デイヴィスは、イギリスの小さな街に暮らす“普通の人々”に照準を合わせ、彼らの生活を通してイギリスの夢の挫折や希望の消失を描くことをテーマにしていた。他の同時代バンドがぐんぐんサイケ方面へと興味を広げていこうとしていた時期、『ヴィレッジ・グリーン…』は秩序が秩序として正常に機能していた架空の時代の懐しいイギリスでの田舎の生活を賛美しながら、そのテーマを成し遂げようとした傑作だった。グラム・パーソンズが当時アメリカで展開しつつあった試みのイギリス版、というとらえ方もありかな。

というわけで、レイ&デイヴのデイヴィス兄弟の全面協力のもと、そのレコーディングの全貌をまとめあげられた。それが本3枚組だ。ディスク1には冒頭15曲がリリースされたステレオ盤全曲が収められ、続いて当初の12曲盤に収録予定だったものの15曲盤からは省かれた「ミスター・ソングバード」と「デイズ」のステレオ・ミックス、およびリミックスされた4曲のオリジナル・ステレオ・ミックス。ディスク2は冒頭にモノ15曲盤。続いて、こちらにも省かれた2曲のモノ・ミックス、および4曲のシングル・モノ・ミックス。そしてディスク3にはデモ、別オーヴァーダブ、別ミックス、新ミックス、そしてBBCセッションなど、初出音源満載だ。73年にアメリカで出た“The Great Lost Kinks Album”からも関連音源が収められた。

12曲盤のステレオ・ミックスと15曲盤のモノ・ミックスを一気に詰め込んだCDとか、これまでにもいろいろな形で本盤は再発されてきたが、ついに決定版の登場。また買い直し…って人が多そう。仕方ないっすね。ちなみに、ぼくが買ったUK盤、特にディスク3の収録曲が日本のレコード会社が出したリリース予告の資料とか、オンラインCDショップがサイトに掲載していた曲目表とはずいぶん異なっていた。「シーズ・ガット・エヴリシング」とか入ってないし。録音時期が違いすぎるから、入らなくて当然っちゃ当然だが。国内盤もたぶんUK盤と同じだと思うので、現物を見る前に無駄な期待を膨らませすぎないように。ご注意を。 

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