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Disc Review

Pictures From Life's Other Side: The Man and His Music in Rare Recordings and Photos / Hank Williams (BMG Rights Management)

ピクチャーズ・フロム・ライフズ・アザー・サイド/ハンク・ウィリアムス

ローリング・ストーンのアメリカ版サイトを見てたら、今回の新型コロナ騒ぎでSXSWとかコーチェラみたいなフェスも中止になるし、ビリー・アイリッシュもセリーヌ・ディオンもツアーをキャンセルするし、音楽業界としては50億ドルくらいの損失になるだろう、という記事があった。

で、まだライヴ関係のみの影響だけれど、このあとアルバム・セールスとかにどういう影響が出るかはわからなくて。アメリカのAmazonは、世の買いだめ、買い占めのせいで思いきり不足している日用品系に力を入れるため、4月5日までは音楽新譜の入荷をストップさせるらしい。すでに在庫を抱えているものに関しては通常通り扱うみたいだけど。

いやー、なんだか、まじに非常時だな。日本のAmazonはどうするんだろう。でも、こういう日々を積極的に受け止めて、おうちで、新しいものとか古いものとか、そういう曖昧な価値観に惑わされることなく、いろいろな時代のいろいろな音楽にじっくり接するのも悪くないと思う。

ということで、古いやつ、いきます(笑)。ハンク・ウィリアムス。米カントリー音楽の…というか、アメリカン・ポップ・ミュージックそのものの重要な源流のひとつである偉大なアーティストなのだけれど。そんなハンクの充実したボックスセットが出た。2月くらいに出たものなので、アメリカのAmazonでも在庫はあるんじゃないかなー。

これ、実はぼくのブログで過去何度か…といっても、10年くらい前に、こことかここで取り上げたラジオ番組『ザ・マザーズ・ベスト・フラワー・ラジオ・ショー』絡みの音源集で。状況説明がダブるので、以前、2008年に書いたものをそのまま引用しておきますね。

1950年末から51年にかけて、グランド・オール・オープリーを中継していたことでもおなじみのナッシュヴィルのAM局WSMで『ザ・マザーズ・ベスト・フラワー・ラジオ・ショー』ってのが放送されていて。出演していたのはハンク・ウィリアムス。歌声を披露するのはもちろん、近況を語ったり、スポンサーだったマザーズ・ベスト印の小麦粉の生コマーシャルをやったり。放送時間は月~金の朝の7時15分から30分まで。51年のナッシュヴィルの住民は、毎朝ハンク・シニアの歌声を聞きながら家族で朝ごはん食べてたんだろうなぁ。

とはいえ、当時キャリアのピークにあったハンクが毎回、しかも朝、ラジオ局にいるわけもなく。コンサート・ツアーに出ているときなどは、当然事前に番組用に録音した音源が流されていた。16インチのアセテート盤に残されたそれらの録音はいったんラジオ局で破棄処分にされたりしていたようだが。心ある従業員のおかげでなんとか番組72回分がゴミ箱から救出されて生き延びた、と。

この貴重な放送音源、何度かオフィシャル・リリースが計画されたりしていたのだけれど、遺族との折り合いが今いちつかず、お蔵入り。海賊盤のような形で出回って、熱心なマニアのコレクティング・アイテムとなっていた。というのも、とにかく披露されている曲がすごいのだ。自分の持ち歌はもちろん、他シンガーのヒット曲のカヴァーとか、ハンクがオフィシャルなスタジオ録音を残さなかった楽曲がたんまり。

と、そんな伝説の放送音源が、ついに遺族もOKする形でオフィシャル・リリースされた。

と、そういう事情の音源。ハンクはこの番組のために全部で140曲以上を録音したと言われていて。まずそこから54曲をピックアップしたCD3枚組が2008年に出て。そのあと、今度は他のゲストの歌とかインスト演奏とか生CMとかまで、現存する番組そのものをまるごと収めたCD15枚+DVD1枚のボックスが2010年に出て。

この16枚組がすごかった。箱も古いラジオ型をしていて。前面にプラスティックのつまみがついていて、それをひねるとステーション・コールが鳴る。まじ、楽しい仕上がりだった。とはいえ、値段的にも気軽に広くおすすめできるものではなかったのも事実。で、あれから10年が経って。ついにもっともリーズナブルなセットが登場した、と。そういうわけです。

今回のボックスセットは、ハンクが歌っているトラックのみをピックアップして構成されたCD6枚組。毎日のラジオ番組からの音源なので、同じ楽曲が何度も歌われたりしてはいるけれど、当然代表曲の雨アラレ。オフィシャルなリリース・ヴァージョンよりも深い感情表現が聞けるヴァージョンも少なくない。レギュラー・バンドの演奏も充実している。

ロイ・エイカフの歌唱で世に出た1947年のフレッド・ローズ作品「ブルー・アイズ・クライング・イン・ザ・レイン」とかもカヴァーしていて。この曲、1970年代になってからウィリー・ネルソンが歌って一躍有名になって、ぼくなんかはエルヴィス・プレスリーの1976年ヴァージョンでよく聞いていたわけだけれど。これ、ハンクが自らのレパートリーとしてレコード・リリースしていれば、その段階でスタンダード・ナンバー化していたんじゃないかとまで思わせる泣ける仕上がり。たまりません。

今回はApple MusicやSpotifyでもストリーミング配信されているので、さらに音に接しやすくなっているのがうれしい。けど、今回の目玉は音だけじゃない。貴重な写真も満載された272ページのブックレットも超強力。というか、このブックレットが基本商品で、その表拍子と裏表紙にCDが3枚ずつ格納されている、みたいな形だ。1万円超えではあるけれど、ブツで持っておきたい箱というか本というかではありますね。同番組関連のブツとしては3種類めってことになっちゃうけど…(笑)。リマスターもこれまで以上によくなってます。

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