Disc Review

Laid Back (Deluxe Edition) / Gregg Allman (Mercury/UMG)

レイド・バック(デラックス・エディション)/グレッグ・オールマン

昨日、ドニー・フリッツの訃報に触れて。ぼくのような年寄りロック・ファンが若き日に追いかけまくったヒーローたちがひとり、またひとりと去って行ってしまう現実をまたもや否応なく思い知らされたわけだけれど。仕方ない。そういう年回りでもあるし。ぼくたちは、彼らが遺してくれた素晴らしい音楽をこれまで同様、浴びるように聞きまくり続けていくしかない。そうやって彼らヒーローたちに感謝の気持ちを届けるしかない。それしかできない。

この人もそうだな。グレッグ・オールマン。2017年5月27日、肝臓がんの合併症のためサヴァンナの自宅で他界。享年69。あのときも世界中の多くのロック・ファンが悲しみに打ちひしがれたものだ。でも、彼が遺した音楽たちはまさしく宝。いつまでも聞き続けていたい。意地でも聞き続けていきたい。

この人の場合、無骨な南部男のロック=サザン・ロック、その代表選手としてのオールマン・ブラザーズ・バンド、そのリード・ヴォーカリストとしてのグレッグ・オールマン…と、まあ、そんな図式で語られることも少なくない。そのせいで、ちょっとイメージがアーシー方面へと短絡的に向かいすぎるきらいもあったりするのだけれど。

サザン・ロックというのは、地元である南部のブルース感覚、カントリー感覚を当然のものとして音楽の核に据え、そこからジャズだとかノーザン・ソウルだとか、洗練された音楽性に向けて柔軟なアプローチを展開した動きなわけで。むしろ、かなり都会的な音楽と考えたほうが適切だ。いわばブルー・アイド・ソウルの一形態。そういう視点からグレッグ・オールマンの音楽を振り返ると、彼の唯一無比の持ち味がより明確になるはずだ。

雄大に粘る、ルーズで、ジャジーな要素も時折漂うバンド・グルーヴをバックに、レイ・チャールズなどに強く影響されたファンキーかつブルージーなグレッグの歌声がうねる。その醍醐味。それがもっともいきいきと発揮されたのが、オールマン・ブラザーズ・バンドとしての活動と並行する形で1973年にリリースされた初ソロ・アルバム『レイド・バック』だろう。

名バラード「クイーン・オヴ・ハーツ」でのジャジーな展開にしても、オールマン・ブラザーズ・バンドのレパートリーをよりファンキーに再構築した「ミッドナイト・ライダー」の独自のうねりにしても、ジャクソン・ブラウン作の「ジーズ・デイズ」やトミー・タルトン作の「オール・マイ・フレンズ」でのカントリー風味をたたえた哀愁にしても、カントリー/ゴスペル・スタンダード「永遠の絆」のカヴァーにしても、グレッグの持ち味が最大に引き出された名演。すべてがグレッグならではの歌へと昇華していた。

そんな傑作『レイド・バック』の2019年版デラックス・エディションが2枚組拡張盤としてリリースされた。まずディスク1に、1973年リリースのオリジナル・アルバム全8曲の最新リマスター音源と、その8曲の初期ミックスをまるごと収録。初期ミックスのうち「クイーン・オヴ・ハーツ」と「マルチカラード・レディ」の2曲は既出ながら、他は今回が初出だ。

で、ディスク2が“Laid Back demos, outtakes & alternates”と銘打たれたレア音源集。こちらに関しては賛否が分かれそう。というのも、これ、1997年に出たグレッグのCD2枚組『ワン・モア・トライ〜アン・アンソロジー』あたりと内容がかなりダブりまくっているのだ。今回初出のデモ、ラフ・ミックス、リハーサル・テイクなどは全18トラック中7つ。まあ、7曲あればいいじゃん、という気もするけど。

もちろん、既出のダブリトラックに関しても、大方は今回のリリースにあたってリミックスされ直したりしている。そのうえで全体を整理し直し、『レイド・バック』という傑作アルバムがいかにして編み上げられていったのか、その過程をたどり直そうと試みている感じで。これはこれでぼくは面白く受け止めた。

1981年のオールマンズのアルバム『ブラザーズ・オヴ・ザ・ロード』で初お目見えするまで公式にはお蔵入りしていた「ネヴァー・ニュー・ハウ・マッチ」のデモとか、『ブラザーズ&シスターズ』の収録曲「ウェイステッド・ワーズ」をジョニー・ウィンター、バディ・マイルズらと演奏したヴァージョンとか、以前このブログでも紹介したデュエイン&グレッグ・オールマン名義のアルバムに収録されていた「ゴッド・レスト・ヒズ・ソウル」のよりブルージーなソロ再演デモとか、「ローリン・ストーン(キャットフィッシュ・ブルース)」のギター弾き語りヴァージョンとか…。

まあ、この辺はみんな基本的に『ワン・モア・トライ…』にも収められていた既出音源ではあるものの、それら『レイド・バック』の収録曲ではない作品群と『レイド・バック』の収録曲それぞれのデモ音源を改めて1枚に並べて、両者の関係性を検証し直すのも確かに楽しい作業ではある。

今回公式には初出となった未発表音源の中では、やはりラストを飾るオールマンズのレパートリー「メリッサ」のアコースティック・ギター弾き語りヴァージョンがいちばんの聞き物か。1974年4月13日、キャピトル・シアターで収録。ライヴ・アルバム『グレッグ・オールマン・ツアー』のために録音されたコンサート音源からの未発表パフォーマンスだ。デュエイン・オールマンとベリー・オークリーに捧げられている。

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