Disc Review

This Land / Gary Clark Jr. (Warner Bros.)

2019.03.01

ThisLand

ジス・ランド/ゲイリー・クラーク・ジュニア

ゲイリー・クラーク・ジュニア。この人が2011年にEP『ブライト・ライツ』でメジャー・デビューを果たしたとき、ブルースの未来を担う渋い若者なのかなと思って。で、聞いてみたら、ブルースじゃなくブルース・ロックを基本とするごきげんに見上げたギター野郎だったので、ちょっと驚いたものだ。まあ、どっちにしても今どき珍しい得がたい存在は変わりなく。いるとこにはいるもんだな、と驚き、感心し、そして大いに盛り上がった。

その後も順調なペースでスタジオ盤とライヴ盤のリリースを重ね、ぐいぐい成長。このほどメジャーからの通算5作目、スタジオ・アルバムとしては3作目にあたる本作『ディス・ランド』を届けてくれた。

この人、音楽的にはブルースやロックにとどまらず、ファンク、レゲエ、R&B、ヒップホップ、エレクトロニック、ジャズなど幅広い要素をぐしゃっと腕尽くで共存させて、それらをジミ・ヘンドリックスやエリック・クラプトン、スティーヴィー・レイ・ヴォーンらの強い影響下にあるユニークなギター・プレイでえいやっと貫いているイメージ。それが最高にかっこいいのだが。

歌詞のほうにも、常に強大な権威とか悪しき常識や伝統に鋭く切り込もうとする意欲的な姿勢が見え隠れしていて。いい。大衆文化ってやつはすべからくお上に楯突くべし…と信じ込んでいるぼくのような、お古いロック・ファンにはたまらない個性だ。

と、そんな持ち味は今回の新作でも変わらず。というより、さらにそっち方面に深く足を踏み込みつつあるみたい。人種、差別、偏見、貧困、家族の絆…様々なテーマが曲ごとに提示される。激しいメッセージをストレートに連射するタイプの曲もあるのだが、それよりも、ふとした日常を切り取る中にそうした問題意識を忍び込ませるような曲がしみる。強烈な表題曲も素晴らしいけど、カーティス・メイフィールド色全開の「フィード・ザ・ベイビーズ」とか、妙にポップな音の手触りに胸が躍る「ホエン・アイム・ゴーン」とか、好きだなぁ。

かつてカーティスやマーヴィン・ゲイ、スライ・ストーンらが、自らクリエイトしたポップな音像のもと、歌詞や斬新なグルーヴによって聞き手の意識を覚醒させようとしていた、そういう役割を今の時代に雄々しく受け継ごうとしているようで。なんだか、心強い。

複数の曲に、まあ、たぶんトランプがモデルなんだろうなと思われる架空のキャラクターが出てきたり。いろいろ深読みするのも楽しそう。もちろんこの日本から米南部に暮らすアフロ・アメリカンたちのリアルな思いを推測するのはむずかしいのだけれど。ぼんやり長いものに巻かれてるばかりじゃいかん、と。そういう思いだけは世界中どこに暮らしていても一緒なはずだ、と。心を沸き立たせてくれる1枚ではありました。

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