ア・ハイヤー・ディグリー/ザ・カリフォルニア・ハニードロップス
ベイエリア、オークランドの地下鉄駅で演奏するために結成されたという小粋なレトロ・ソウル/ブルース野郎たち、カリフォルニア・ハニードロップスが2015年だったか16年だったかにリリースした6作目。新譜じゃないけれど、数日前、ついにApple MusicとかAmazonとか、大手がストリーミング配信してくれるようになったので、大喜びでご紹介しておきましょう。
ファンキーな…でもなく、土臭い…でもなく、あくまでも“小粋な”レトロ・ソウル/ブルース野郎。そこがこの人たちのいいところ。そんな持ち味がこのアルバムでもめいっぱい発揮されている。これって実際に盤は出ていたのかな。ぼくは入手できていなくて、サウンドクラウドでちまちま聞いてました(笑)。今回もフィジカルでのリリースはないみたい。残念だけど、デジタルとはいえオフィシャルに音を入手できるようになったのはありがたいです。
幼い日々をポーランドのワルシャワで過ごしたというギター&トランペットのレッチ・ウィルジンスキーが中心メンバー。もともとは手作りのウォッシュタブ・ベースや洗濯板を使ったジャグ・バンド的な編成でスタートしたようだけど、メンバーが出入りを繰り返すうち、徐々に通常のバンドっぽい形になって、2008年にアルバム・デビュー。今のところ最新スタジオ・アルバムにあたる『コール・イット・ホーム』が去年の暮れ、日本でもリリースされたのでご存じの方も少なくないだろう。本作はそのひとつ前のアルバムということになる。
収録されているのは基本的にレッチのオリジナル曲。YouTubeで見たことがあるライヴでの定番らしき曲もいくつか。ブルース、ゴスペル、ニューオーリンズR&B、ザディコ、ヴィンテージ・スウィート・ソウルなど魅惑的なサウンドの雨アラレだ。かつてマリア・マルダーやダン・ヒックス、ボニー・レイットらと共演しながら鍛えたのであろう豊かなルーツ再訪感覚を全開にしつつ、でも、けっして重くなることなく、軽やかに聞かせている。
ラスト2曲、「アイ・ウォナ・ゴー・ホーム」はブーズー・シェイヴィス、「シット・ダウン・オン・イット」はマーヴィン・シーズ、それぞれのカヴァーだ。いいとこ持ってきます。60年代後半のポップ・ソウル風味が超心地よいアルバム・タイトル・チューンはレッチではなく、たぶんこの時期、キーボードを担当していたチャールズ・ヒッコックスってメンバーの作品。この名前、見覚えがあるけど。まさかのボダシャスD.F.の人だったりする? ベイエリアだし。どうだろ。まあ、年齢的にあり得ないか…。
ジャケットを見ればわかる通り、基本的には5人編成のバンドなのだけれど、曲によってはアコーディオンがひらひら舞ったり、相変わらずウォッシュボードを使っていたり、ホーン・セクションがファンキーに切り込んできたり、パーカッションが賑やかに鳴り響いたり、とにかく楽しいことならなんでもやります的なアプローチがまじかっこいい。このアルバムで一足先に気分だけでも梅雨明けです!