Disc Review

An Orchestrated Songbook / Paul Weller with Jules Buckley & The BBC Symphony Orchestra (Polydor/Solid Bond)

オーケストレイテッド・ソングブック/ポール・ウェラー

ポール・ウェラーです。もう各所で話題の1枚。英BBCシンフォニー・オーケストラと共演した、もうそれ以上、何の説明不要の最新ライヴ・アルバム『オーケストレイテッド・ソングブック』です。

今年の5月、本ブログでも紹介した『ファット・ポップ』をリリースした翌日、ウェラーさんは英ロンドンのバービカン・センターでBBCシンフォニーと共演。当日はコロナ禍ということで無観客での配信ライヴだったものの、翌月、テレビとラジオで放送され、さらに盤のほうもこのほどめでたくリリースされた、と。そういう流れだ。

『ワイルド・ウッド』『スタンリー・ロード』『ウェイク・アップ・ザ・ネイション』『トゥルー・ミーニングス』『オン・サンセット』『ファット ポップ』といったソロ作からの曲はもちろん、ザ・ジャム時代の「イングリッシュ・ローズ」とか「カーネーション」とか、スタイル・カウンシル時代の「マイ・エヴァー・チェンジング・ムード」とか「イッツ・ア・ヴェリー・ディープ・シー」とか「ユー・アー・ザ・ベスト」とかも交えつつのセットリスト。

指揮は近年ぐっとポップ寄りのフィールドで活躍が続くジュールズ・バックリー。曲によって、セレステやジェイムス・モリソン、ボーイ・ジョージらがデュエット・パートナーをつとめているのもうれしい。おなじみ、スティーヴ・クラドック(オーシャン・カラー・シーン)もギターで客演。

というわけで、編成的には一昨年リリースされた『アザー・アスペクツ〜ライヴ・アット・ザ・ロイヤル・フェスティヴァル・ホール』に近い企画ということになりそうだけれど。当然ながらあっちよりも思いきりオーケストラ寄りのスタンス。ふくよかで、ナチュラルで。そうした奥行きのあるアンサンブルのもとで堪能するポール・ウェラーの歌声。こりゃなんともたまらない。

オーケストラ・アレンジ的に、あれ、これでいいの? という、エレベーター・ミュージックっぽい感触に陥ってる個所もちょこっと。そういう曲はオリジナル・ヴァージョンを無性に聞きたくなっちゃうのだけれど。その辺も含めて聞き通しながら、とにかく思うのは、この人、ほんといい声してるな、と。結局、そこです。ゴージャスな管弦アンサンブルをバックに、この唯一無二の歌声を乗っけられちゃったら、それだけでね。もう文句なし。

けっしてクラシカルになりすぎることなく、ノーザン・ソウル・テイストとかメキシカン・フレイヴァーとか、そのあたりの多彩な要素をうまくアレンジして交錯させているところもぐっときます。

日本盤のみ、2020年11月に行なわれた自宅スタジオからの配信ライヴ音源『ミッドサマー・ミュージック(Mid-Sömmer Musik)』(『ファット・ポップ』の輸入盤限定3CDボックスセットに含まれていたもの)と抱き合わせになった2CDデラックス・エディション(Amazon / Tower)もあり。

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