Disc Review

Young Shakespeare / Neil Young (The Other Shoe Productions/Reprise)

ヤング・シェイクスピア/ニール・ヤング

昨夜、本当に久々に有観客で催したCRTイベント。むちゃくちゃ楽しかったです。密にならないよう気をつけての開催だっただけに、あれこれ思うようにいかない局面もありましたが、やっぱりみんなでリアルに場を共有しながら、同じ空気の中ででかい音で音楽を聞くのは最高ですね。一日も早く、そういうイベントが普通にできる環境が戻ってくればいいなと心から願っています。

昨日のイベントの主役、ねやぽんこと祢屋康レコード・コレクターズ編集長が自らの青春の日々を思いつつセレクトしたプレイリスト、Spotifyのほうに載せておきます。このリストの曲が昨夜そのままかかったわけではないのですが、ご参考までに。

https://spoti.fi/2NRF7tM

そういえば、昨夜、“ロンバケ”VOXの話から、この5月に発売50周年を祝って出るらしきCD4枚+LPという仕様のクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング『デジャ・ヴ』ボックスのことも話題にのぼって。そういう話をしながら、ぼくはまたまたいろいろなことを思い出していたのでありました。すみません、すぐいろいろ思い出します。年寄りなもんで(笑)。

50年前のことに関しては朝日新聞にもコラム記事を寄せさせてもらっていて。有料記事ではありますが、読める環境にある方、よろしければ。

まあ、なにせ半世紀前のことなので、細かい時系列とかわからなくなっちゃってはいるのだけれど。クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングの話に戻ると。ぼくたち日本の洋楽ファンは、というか、少なくとも当時中学生だったぼくは、このクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤングという連中について、ほとんどよくわかっていなかった。

ナッシュさんが在籍していたホリーズのことは、「バス・ストップ」のヒットがあったので知っていた。クロスビーさんが在籍していたバーズも、なんとなく…。でも、スティルスさんとヤングさんが在籍していたバッファロー・スプリングフィールドのことはまったくと言っていいくらい知らなかった。バッファローのレコードとか、1970年代に入ってワーナー・パイオニア社が誕生するまで、国内盤でまともに出たこととかなかったんじゃないかな。「フォー・ホワット」のシングルと、あとベスト盤くらいは見かけたことがあった気もするけれど…。はっぴいえんどがアイドル視していたバンドということで、名前は知っていたものの、まだ輸入盤とかも気軽に入手できる時代じゃなかったし。

だから、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング、とりあえずスーパー・グループと呼ばれていたものの、どこがどう“スーパー”なのか、無知なぼくにはまったく理解できていなかったのでした。

『デジャ・ヴ』とか、1970年にぼくが買った国内盤は日本グラモフォン、その後のポリドールからのリリースで。ワーナー・パイオニア以前。邦題は『セカンド・アルバム』。もう身も蓋もないくらい無味乾燥な、しかもヤング入りの4人編成としてはセカンドじゃなくて初アルバムだったのに…みたいな乱暴な邦題だったっけ。

だから、ニール・ヤングのことも、どんな人なのか、あんまりよくわかっていなくて。1970年代アタマにはまだ完全に手探り状態。そんな感じでぼんやり接する程度だった人なのに、結局それから半世紀が過ぎてもなおこの人の歌声に魅せられ続け、新作はもちろん、再発盤や発掘盤も含めてレコードを買い続けているのだから。すごいことだなぁと思う。

本ブログでも何度か取り上げた例のどでかいアーカイヴ・ボックス第二弾も先日ついにわが家に到着した。『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』の50周年盤の豪華アナログ・ボックスも今月限定リリースされて、それもめでたくゲット。相変わらず部屋がニール・ヤングに占領されている状態なのだけれど。そこにさらなるニュー・リリースが…! しかも、まだぼくが手探り状態でぼんやり聞いていたあのころの、若きニール・ヤングの歌声の発掘だ。

『ヤング・シェイクスピア』。1971年1月22日、アルバムで言うと1970年の『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』と、1972年の『ハーヴェスト』との間の時期の記録。この時期、ヤングさんは“ジャーニー・スルー・ザ・パスト・ソロ・ツアー”というのを行なっていて。その中で訪れた米コネチカット州ストラトフォードのシェイクスピア・シスターで収録されたソロ・アコースティック・ライヴの模様が収められている。

ちょっと前に、ニール・ヤング&クレイジー・ホースの発掘ライヴ盤『ウェイ・ダウン・イン・ザ・ラスト・バケット』を紹介したときにも触れた1枚。過去の未発表ライヴ音源を順不同で発掘リリースし続けている“パフォーマンス・シリーズ”の一環で。整理番号は“Volume 3.5”。出た、得意の小数点番号(笑)。まあ、当初は現存していると思ってもいなかった発掘音源が次々見つかっていることの証でもあるから、これはこれでうれしいわけですが。

クレイジー・ホースを従えた『ウェイ・ダウン…』から一転、こちらはヤングが奏でる生ギターとピアノ、ハーモニカ、そして歌のみのパフォーマンス。2007年に発掘リリースされた『ライヴ・アット・マッセイ・ホール1971』の数日後のステージだ。

『…マッセイ・ホール』同様、このライヴの段階ではまだ世に出ていなかった『ハーヴェスト』の収録曲「オールド・マン」、「ダメージ・ダン(The Needle and the Damage Done)」、そして「男は女が必要(A Man Needs a Maid)」と「孤独の旅路(Heart of Gold)」の必殺メドレーなどもすでに歌われていて。そのみずみずしい魅力には、まじ、抗えない。

ヤングさん、MCで自分が今25歳だと語っている。いやー、25歳か。そんな時期の彼のソロ・パフォーマンスを、当時、何も知らない中学生か高校生か、そんなだったぼくが、もし生で体験していたら、ほんと、どんな気分になったんだろう…。そんなことを夢想するだけで、なんだか胸が高鳴っちゃったりして。やばい。けっこう丁寧にいろいろ語ってくれているMCパートも含めて、本当に素敵なライヴ・アルバムだと思う。

もちろん、「テル・ミー・ホワイ」「ブリング・ユー・ダウン(Don't Let it Bring You Down)」など、当時出たばかりだった『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』からの曲も、「カウガール・イン・ザ・サンド」「ダウン・バイ・ザ・リヴァー」など、セカンド・アルバム『ニール・ヤング・ウィズ・クレイジー・ホース(Everybody Knows This Is Nowhere)』からの代表曲も、クレイジー・ホースのファースト・アルバムに提供された「ダンス・ダンス・ダンス」も、クロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング名義で出た「オハイオ」や「ヘルプレス」も、「シュガー・マウンテン」のようなシングルB面曲も、さらにツアー・タイトルの由来ともなっている「過去への旅路(Journey Through the Past)」も歌われている。この辺も『…マッセイ・ホール』同様だ。

なんでも、これ、当時ドイツのテレビ局へのプレゼン資料としてレコーディングされていたものらしく。当然、映像も残っていて。それを収めたDVDとCDとLPをセットにしたデラックス・ボックス(Amazon / Tower)も出た。やっぱ、買うならこれかな。ヴァイナルLPのみ(Amazon / Tower)でも出ている。どれにしようか悩みつつ、今のところNYAのハイレゾ・ストリーミングで堪能しております。

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