Disc Review

(LIVE): 2024 Japanese Reissue / James Taylor (Sony Music Labels)

(ライヴ)/ジェイムス・テイラー

われらがJT、ジェイムス・テイラーが間もなくやってくる。4月6日に東京ガーデンシアターでたった一夜の来日公演。

いちばん直近の来日は2015年、親交のあった小澤征爾の80歳のお誕生日を祝う「マエストロ・オザワ80歳バースデー・コンサート」にゲスト出演するため長野県松本市にやってきたときなのだけれど。これは松本での1回限りのことだったようで、テレビでその様子をちらっと見ただけで終わってしまったのだけれど。

その他の東京公演は1973年の初来日以来、来てくれるたび必ず見に行っていて。1981年には横浜でのカリフォルニア・ジャムにも足を運んだし。で、そのたび本当に幸せな気分にさせてもらっている。まじ、JTのライヴはいい。素晴らしい。彼のライヴの魅力については、まさに本日、来日に合わせてリリースされた来日記念盤2種のうちのひとつ、1993年にリリースされた彼の初ライヴ・アルバム『(ライヴ)』のために書き下ろさせていただいたライナーノーツでもちらっと触れているので、それを軽く引用させていただくと——

ライヴでのJTは同じ歌を歌っていても見るたび以前と違う感動を伝えてくれる。自分の曲ですらまったく別の作品のように大きく生まれ変わらせてしまうことも少なくないボブ・ディランほど過激にではないものの、JTはきわめて自然体で、ところどころ歌詞の言い回しをさりげなく変えたり、メロディを奔放に舞わせたり、コードを少しだけいじってみたり、小節を自在に伸ばしたり縮めたり、優れた語り部としての持ち味を全開にしながら、おなじみのレパートリーをその場、その瞬間ならではの新たな物語へと作り変えてぼくたち観客に向けて届けてくれる。

1973年、初来日のときの思い出もろもろは、2019年に米ライノ・レコードがJTの初期、ワーナー・レコード在籍時の全オリジナル・アルバムをまとめた6枚組ボックス『ザ・ワーナー・ブラザーズ・アルバムズ』を出したときのエントリーにつらつら書かせてもらったので、よろしければ改めて読んでやってください。

とにかく今回の来日もすごく楽しみ。とはいえ、まだウドーのページとかでチケットの宣伝が続いているってことは、まあ、ソールドアウトはしていない、と。そういうことか。でも、それはいけません。残念すぎる。チケットをまだゲットしてない方、ぜひぜひ。見とかないと。ともに盛り上がりましょう! 

1970年、シングル「ファイア&レイン」をヒットさせて、センシティヴな若者の心情を紡ぐシンガー・ソングライターの代表のような形でシーンに登場してきたJTも、今や75歳。髪の毛もなくなっちゃったし、歌声もだいぶ枯れてきちゃったし。でも、えー、本ブログでは本当にJTのことをよく取り上げていて、これは2019年にJTがスティーヴン・コルベアのレイト・ショーに出演したときのパフォーマンスについて書いたことの引用ですが…

なんかこの人に関してだけはまったく不変というか、枯れはしても老いはしない印象があったのだけれど。このほど、5月2日にスティーヴン・コルベアのレイト・ショーに出演して、1968年暮れ、アップル・レコードから出したファースト・アルバム収録の代表曲「キャロライナ・イン・マイ・マインド」を歌ったときのパフォーマンスを見て。なんか、初めてこの人の歌声にほのかな“老い”の匂いを嗅ぎ取ったというか。もう70歳過ぎてるんで当たり前っちゃ当たり前のことなのだけれど、あ、JTもフツーにトシ取るんだ…と思い知ったのでした。

ということは、もちろんぼくのほうも同じだけトシ取ってて。でも、そんなおっちゃんになった今もなお、若き日、高校生になりたてのころに出くわしたこの曲を相変わらず大好きで、今回も思いきりぐっと来させてもらえて、そんなこんなでなんだかじわーっと来た。いや、別に悲しくなったとか、寂しくなったとか、そういうわけではなく。このほのかな老いの香り漂う歌声と、そんな老いと引き換えに手に入れたストーリーテラーとしての圧倒的な説得力と、相変わらず素晴らしく歌心に満ちたギターの腕前と、まったく色褪せない楽曲そのものの魅力とをたっぷり味わいながら、ああ、この人がずっと歌い続けてくれていてよかったなぁ、この人のことをずっと変わらず好きであり続けることができてうれしいなぁ、幸せだなぁ…と改めて実感した、と。

たぶんそんな、歳月を重ねたからこそ味わえる幸せを改めて実感できる夜になるんだろうな、と。静かに胸を躍らせて、4月6日を待ちます。それまでは来日を記念して再発された本ライヴ盤と、1977年に米コロムビア・レコード移籍後の代表作を詰め込んだ『グレイテスト・ヒッツ第2集』を聞きながらわくわく日々を過ごすのでありました。

ちなみに本ライヴ盤、JTのバックをつとめているのはドン・グロルニック(ピアノ)、クリフォード・カーター(キーボード)、マイケル・ランドー(ギター)、ジミー・ジョンソン(ベース)、カルロス・ヴェガ(ドラム)という名手たち。そこにヴァレリー・カーター、デヴィッド・ラズリー、ケイト・マーコウィッツ、アーノルド・マカラーという男女二人ずつの素晴らしいコーラス隊が加わる。もう亡くなっちゃった方も少なくないけれど。本当に素晴らしいサポートぶりで。1970年代から80年代にかけてJTがリリースしたすべてのオリジナル・アルバムからのレパートリーを的確に、かつ新鮮に聞かせてくれている。

スティーヴ・ガッドやディーン・パークスを含む今回の来日メンバーも楽しみだし、もちろん初来日のときとかキャロル・キングと来たときとかにバックを務めたザ・セクションも素晴らしかったけれど、このライヴ盤のときの顔ぶれもいい。ああ、JTサウンドだなぁ…という気分にさせてくれる。

選曲的にはライヴ・ベスト的なものではあるけれど、このライヴ盤でしか聞けないオリジナル曲、カヴァー曲もそれぞれ1曲ずつ。見逃せません。

4月6日まであとちょっと。あー、楽しみ!

米国を代表するシンガーソングライター、一夜限りの来日公演!
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