Disc Review

Heavy Hymnal / Vintage Trouble (Cooking Vinyl)

ヘヴィー・ヒムナル/ヴィンテージ・トラブル

5月に来日して今回もまた熱狂のライヴを展開してくれたらしきヴィンテージ・トラブル。ぼくはスケジュールが折り合わず残念ながら今回は見ることができなかったのだけれど。その来日でも4曲ほど先行で収録曲を披露してくれたという新作アルバム『ヘヴィ・ヒムナル』が出ました。来日を見られなかった悔しさを吹き飛ばしてくれるような…あ、いや、違うな。最新の来日公演を見られなかったことがますます悔しくなるような痛快作です。

2011年にインディー・デビューして以来、アメリカでもイギリスでもテレビの各種レイト・ショーにがんがん出演。その映像がYouTubeを通じて日本にも届けられて。さらには来日してフェスでメインを張ったり。その痛快なパフォーマンスで人気を博す4人組。

ニュージャージー、フロリダ、カリフォルニア、そしてスウェーデン。各メンバーの出身はばらばらだが、それゆえの奔放な音に、古くからロックンロールとR&Bの交差点にこだわり続けてきたドン・ウォズが一目惚れ。2015年、自ら社長をつとめる名門ブルーノート・レーベルへと迎え入れたこともおなじみだろう。

インディーズ、メジャーひっくるめて、えー、EPとかもいろいろあるので数え方がむずかしいのだけれど、これがフル・アルバムとしては5作目になるのかな。いや、メジャーからの3作目というべきなのかな。よくわかりませんが。

共同プロデュースを手がけているのはカウンティング・クロウズ、ラーキン・ポー、ラナ・デル・レイ、トロンボーン・ショーティなどを手がけてきたクリス・シーフリード。新型コロナのパンデミックの中、メンバーともども各自の自宅からリモートでレコーディングされたものだというけれど、そんなことを感じさせない一体感を実現している。メンバーによるコアなバンド・グルーヴを基調にしながら、曲によってはバック・コーラスをフィーチャーしたり、流麗なストリングスを配したり。

個人的には4月に先行シングルとして公開ずみだった「ノット・ザ・ワン」とか、レディ・ブラックバードをデュエット・パートナーに迎えた「ザ・ラヴ・ザット・ワンス・リンガード」とか、ちょっとメロウめのソウル風味が多めに配合されたタイプの曲に特にぐっと来た。アップテンポのゴスペルっぽいグルーヴでぐいぐいドライヴする「ユー・オールレディ・ノウ」もかっこいい。

ホーンやコーラスを伴った往年のモータウンっぽいグルーヴを聞かせる「ホラ!」とか、後半のサイケでハードなギター・ソロも印象的な5分超の(彼らにしては)大作「リピーティング・ヒストリー」とか、人種問題がむしろ昔に逆行していたり、自由が失われつつあったりすることを強く嘆く歌詞が託された曲もあって。このあたりにはカーティス・メイフィールド的な美学がきっちり継承されているような…。“ヘヴィーな聖歌”というアルバム・タイトルが沁みます。

これまでのアルバムもごきげんなものばかりだったけど。今回のが過去イチの仕上がりかも。バンドのWebストアではメンバーそれぞれがフィーチャーされた別ジャケットのサイン入りCDとかも売られてます。アイドル・グループみたい(笑)。勢いあるなぁ。ほんと、5月の最新来日公演を見ることができた方々、うらやましい限りです。

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