Disc Review

Weathervanes / Jason Isbell & The 400 Unit (Southeastern Records)

ウェザーヴェインズ/ジェイソン・イズベル&ザ・400ユニット

前々作にあたる2020年の『リユニオン』を本ブログで取り上げたときにも書いたことだけれど。コロナ禍が本格化する直前、2020年1月のビルボード・ライヴ東京での来日ステージが今なお忘れられないジェイソン・イズベル。

なにやら、今年公開されるマーティン・スコセッシ監督映画『キラーズ・オヴ・ザ・フラワー・ムーン』(レオナルド・ディカプリオ、ロバート・デ・ニーロ主演)で俳優デビューも果たすらしいけど。

新作、出ました。ドライヴ・バイ・トラッカーズを脱退してソロになってから、これが9作目。バック・バンド、ザ・400ユニットと組んだ作品としては6作目にあたる。その映画『キラーズ・オヴ・ザ・フラワー・ムーン』の撮影中、待機していたトレーラーでじっくりと作りあげられた楽曲群だとか。長年のプロデューサー、デイヴ・コブのもとを離れて制作された前カヴァー・アルバム『ジョージア・ブルー』同様、今回もプロデュースはイズベル自身。ナッシュヴィルのブラックバード・スタジオで録音された。

ノッケの「デス・ウィッシュ」って曲からいきなり、“死を望む女を愛したことがあるか?/彼女の目には電気のスイッチを切るような何かがある…”とか歌い出して。“誰でもいつか死ぬ/が、生き続ける理由を見つけなきゃいけないんだ”と続けられて。10年ちょっと前にアルコールとドラッグで最悪の状態に陥ったイズベル自身の経験を歌っているのかなぁ、と思うものの。

その最悪の状況を乗り越えるうえで大きな役割を果たしてくれた奥さま、日本公演でも素晴らしいパートナーとしてデュオによるコンサートを盛り上げてくれたアマンダ・シャイアズとの最近の仲が、まあ、余計なお世話かもしれないけど、どうしても気になっちゃうわけです。アマンダさんが去年リリースしたソロ・アルバム『テイク・イット・ライク・ア・マン』の歌詞とかも重ね合わせてみると、どうも2人の仲は相変わらずぎくしゃくしているような気もするし。

もちろんアマンダさんは今回のレコーディングにもフィドルとコーラスで参加。ただ、今回はバンド・メンバーとしてではなく、たとえばハーモニカで1曲客演しているウィリー・ネルソン翁の盟友、ミッキー・ラファエルとかと同じ、スペシャル・ゲスト枠でのクレジットで。でも、その「デス・ウィッシュ」でイズベルはさらに“君とケンカしたくないんだ、ベイビー”とか“君をひとりにはしないよ”とかも歌っているので、いろいろ修復中なのかなとも思ったりして。

まあ、ほんと、余計なお世話ですが(笑)。でも、そうした他者との揺れる関係性のようなものも含め、今の世の中に渦巻く矛盾とか謎とかをめぐって、イズベルは持ち前のシニカルな観察眼を全開にして切り込んでいく。人生の岐路で必ず間違った選択をして、後悔し、苦悩し、怒り、絶望し、恐れ…。そんな主人公たちの物語をイズベルならではの柔軟な語り口で魅力的に綴っていく。

アルバム・タイトルの“ウェザーヴェイン”、つまり風向計という言葉が出てくるのはアコギ弾き語り基調の「キャスト・アイアン・スキレット」って曲で。これの歌詞がまたなんだかよくわからないのだけれど。“鉄のスキレットは洗うな/飲んで運転するな、こぼすぞ/たくさん質問しすぎるな、眠れなくなるから/お前の中に穴が空いている、埋めろ”と歌い出したあと、“シャワーを浴びて、ヒゲを剃って/墓に花を手向け/神に魂の救いを求める/でも、わかってるのさ、もう手遅れだって”とか、“あいつはどうしてこんなことになってしまったんだ?/つい先週のことに思える/俺たちは10歳と12歳だった/やつスウィートでソフト/内角の速球を避けていた/そして仮釈放なしの終身刑で死んだ”とか、“この街はもう良くならない、だろ?/彼女は愛を見つけた、それは風向計のようにシンプルだった/でも、彼女の家族がそれを台無しにしようとした”とか、それこそ眠れなくなりそうなフレーズが次から次へと繰り出されて。いろいろと間違った人生訓が渦巻く中、それでも現状を疑問視することでしか真実にはたどりつけないということを逆説的に思い知らせてくれたり。

ザ・400ユニットが本領を発揮したロック寄りのものも、アコースティックなテイストのものも、さすがの充実ぶり。今週末には国内盤(Amazon / Tower)も出ます。今度はバンドで来日、お願いしますねー!

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