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Disc Review

All Blue / Julianna Riolino (You've Changed Records)

オール・ブルー/ジュリアナ・リオリーノ

バンドキャンプをつらつら眺めていたら、このアルバム・ジャケットに出くわした。ぱっと見、まずジュディ・シルの『ハート・フード』を思い出して。色合いを見ているうちにピカソの“青の時代”の1枚「老いたギター弾き」が二重映しになってきて。確信犯なのかどうか、よくわからないけど。とにかくものすごく気になって聞いてみたカナダのシンガー・ソングライターのアルバムです。アルバム・タイトルに“ブルー”という語が入っているくらいだから、当然ピカソのことは意識しているんだろうな。

ジュリアナ・リオリーノ。誰かと思ったら、同郷の先輩シンガー・ソングライター、ダニエル・ロマーノのバンド、ジ・アウトフィットの一員として、リード・ヴォーカルをロマーノと分け合ったり、バック・コーラスしたり、ギター弾いたりしつつ活動しているあの女性メンバーだった。2019年に『J.R.』という5曲入りEPをリリースしているみたいだけれど、自身の名義によるフル・アルバムとなるとこれが初みたい。

プロデュースはやはりダニエル・ロマーノとか、カウボーイ・ジャンキーズとか、多彩な顔ぶれと仕事してきているカナダのペダル・スティール奏者/ソングライター/プロデューサー、アーロン・ゴールドスタイン。アウトフィットからロマーノ(ギター)、デヴィッド・ナーディ(ギター)、イアン・ロマーノ(ドラム)も参加している。全曲、ジュリアナさんのオリジナル。収録曲のうちいくつかはアウトフィットのライヴでも披露されているみたい。YouTubeに映像が載ってました

ということで、サウンドのほうは、まあ、確かにジュディ・シルっぽいところもなくはないものの、よりアメリカーナ的な方向性。曲によってエミルー・ハリスのようだったり、ルシンダ・ウィリアムスのようだったり、ザ・バンドのようだったり、ロイ・オービソンのようだったり、リンダ・ロンシュタットのようだったり、ドリー・パートンのようだったり…。

前EPもちらっと聞いてみたけれど、それに比べると曲作りがずいぶんと深くなった感じだ。なんでもジュリアナさん、本作のレコーディングに先立って、トロントのセント・マイケル大聖堂のステンドグラスの修復作業を手伝ったのだとか。そのとき割れたステンドグラスの破片に、破壊とか、愛憎とか、希望とか、確信とか、彼女自身のひび割れた記憶のようなものが二重映しになったそうで。そうした記憶を反芻しながら、本アルバムの収録曲たちの歌詞を紡ぎ上げていったという。

それだけに内容的にはけっこうパーソナルで、しかもイマジネイティヴで。ぼくのつたない英語力ごときでは味わいきれないのだけれど。「イズント・イット・ア・ピティ」(ジョージ・ハリスンのカヴァーじゃないです。同名異曲)でジュリアナさんは“哀れじゃない?/残念じゃない?/庭の花は咲き乱れ/花びらを散らす/私たちの未来を急いでアストラル投射するの/手の中の1羽の鳥が茂みの中の2羽と同じであるように…”とか歌っていて。

面白いなー。さっぱり意味わかんないんだけど(笑)。アタマぐるぐるになっちゃいつつも、なんだかムードだけは伝わってくるようで。「メモリー・オヴ・ブルー」って曲の“終わりなき妄想をたたえた表情/すべてのあり得べき結末を指し示す/私が感じる色/私の心が回って巻き付く/私が色相以外の何者でもなくなるまで…”みたいな表現も面白いなと思った。

ガーリーで、ちょっとはすっぱな、特徴ある歌声も魅力的。こういう個性に出会えるからバンドキャンプ巡りはやめられない。今のところストリーミングか、ダウンロード販売か、アナログLPのみのリリースです。ちなみにジャケット・デザインはダニエル・ロマーノが手がけたみたい。やっぱ、いろいろ確信犯だな、絶対。

LPの裏ジャケにロマーノが文章を寄せていた。これまたワケわかんないんだけど、なんかかっこいいっぽいので、ぼくが理解できた範囲で訳しておきますね。

頑固な傷は時が知覚を許す限りゆっくりと癒える。時を知覚することは、痛みを悟らせ、恐怖を実行させ、悲しみに没頭させ、恐怖に反応させ、悲しみを青ざめさせる。裏庭。空。風。心は傾き、飛びかかる。生存を超越した生命に飢えた納屋の猫のように。庭園のために。王冠のために。すべてのものがゆっくりと動き出すために。花びらの柔らかさも棘も。記憶も運命も。天使も悪魔も。窓も世界も。そして確かな目的のない時間。丘。明暗を分かつ光と闇。始まりと終わりの吐息。そして抜けるように真っ青な空。——2022年、D.R.

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