Disc Review

Before + After / Neil Young (Reprise Records)

ビフォア・アンド・アフター/ニール・ヤング

今年の6月末から7月いっぱい、ニール・ヤングはロサンゼルス、サンタ・バーバラ、サンディエゴ、バークレー、レイクタホなどカリフォルニア州各地およびオレゴン州やワシントン州など海沿いを巡る、ずばり“コースタル”と題された弾き語りツアーを行なった。

アコースティック・ギター、エレクトリック・ギター、ピアノ、オルガン、ハーモニカを自ら奏でつつ、過去のレパートリーを改めて噛みしめるように歌い綴ったツアー。さっそく様々なブートレッグも出回ったのでパフォーマンスを耳にした方も少なくないと思う。

そこで披露されていた楽曲の中から全13曲をピックアップ。7月末に改めてレコーディングし、すべてをシームレスにつないだ全長48分の作品として構成した1枚が本作『ビフォア・アンド・アフター』だ。アルバムの中から2カ所、それぞれ3曲つながったEPとクリップが先行公開されていたので雰囲気はみなさんすでにつかんでいることでしょう。プロデュースはニールさん本人と巨匠ルー・アドラー。ギター、ピアノ、オルガン、ハーモニカはもちろんニール・ヤング。一部、ボブ・ライスがヴァイブラフォンとピアノで加わっているようだ。

ぼくはニールさんのWEBショップで限定クリア・ヴァイナルを予約していて。一昨日ようやく発送のお知らせが来たところなので、実はまだブツが手元になく。ただ、本家から買った得点でハイレゾ・ファイルのダウンロードがプレゼントされたもんで。今のところそれで聞いている状態。ジャケットがなくて細かいクレジットなど全然わかっていないのだけれど、音的には問題なく楽しめていて。すごくいいです。なんか沁みます。音の方向性としてはものすごく渋く、地味ではあるのだけれど。なんだかニール・ヤングという音楽家のでかさを改めて思い知るようで。ライヴも見たかったなぁ…。

何はともあれ、どんな曲をやっているのか収録曲をおさらい。曲名と初出アルバムを列挙してみますね。

  1. アイム・ジ・オーシャン(1995年『ミラー・ボール』)
  2. ホームファイアーズ(2020年『ニール・ヤング・アーカイヴズVol.2』。1974年に初録音された未発表曲)
  3. バーンド(1966年『バッファロー・スプリングフィールド』
  4. オン・ザ・ウェイ・ホーム(1968年『ラスト・タイム・アラウンド』)
  5. イフ・ユー・ガット・ラヴ(未発表曲。1983年『トランス』時のアウトテイク)
  6. 夢の彷徨(A Dream That Can Last)(1994年『スリープス・ウィズ・エンジェルズ』)
  7. バーズ(1970年『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』
  8. マイ・ハート(1994年『スリープス・ウィズ・エンジェルズ』)
  9. ホエン・アイ・ホールド・ユー・イン・マイ・アームズ(2002年『アー・ユー・パッショネイト?』
  10. マザー・アース(自然の讃歌)(1990年『傷だらけの栄光(Ragged Glory)』)
  11. ミスター・ソウル(1967年『バッファロー・スプリングフィールド・アゲイン』)
  12. 今がその時(Comes a Time)(1978年『カムズ・ア・タイム』)
  13. ドント・フォゲット・ラヴ(2021年『バーン』

1990年代を皮切りに、1960年代、1970年代、1980年代、そして2000年代、2020年代を気ままに行き来しながらの旅。バッファロー・スプリングフィールド在籍時の曲あり、ソロ名義でリリースした曲あり、クレイジー・ホースと組んだ曲あり、パール・ジャムと組んだ曲あり。“時代を超えた音のタペストリー”みたいな表現をプレス・リリースで見かけたけど、まさにそんな感じ。

で、さらに面白いのは、それらが時系列的に並んでいるわけではなく、前掲の収録曲リストを見ればわかる通り時代的に行ったり来たりするわけで。それはある意味、ニール・ヤングにとってすべてが“今”というか。いや、“今”でもなければ“昔”でもない、というか。1960年代にバッファロー・スプリングフィールドの一員としてデビューして以来、半世紀以上に及ぶキャリアを通して自分は常に同じ“歌”を届け続けてきたのだ、という確かな思いの表明というか。

そして、それをもっとも簡素な、根源的なアコースティック・アレンジで提示することで、自身の“歌”の骨格を圧倒的な説得力をもって改めて露わにしてみせた、と。そういう1枚だと思う。すごい。先述の通り、全曲が曲間なしにすべてつながっていて。昨今のシャッフル・プレイとか、スキップするとか、そういうデジタルな聞かれ方を強く拒否する構成もニール・ヤングらしい。今年出た新作で言えば、ポール・サイモンの『七つの詩篇(Seven Psalms)』と同様か。

ただ、あちらが全曲をワン・トラックとして記録するガンコ親父っぷりだったのに対し、こちらは一応曲ごとに切り分けられてはいて。聞きたいところから聞くことができないわけじゃない。けど、そのつながり具合の絶妙さも含めて、この流れこそをアタマからラストまで、そのままの形で味わってほしいという意図は十分に伝わってくる。

あ、そういえば、過去曲を新たなアコースティック・アレンジで再演するという意味ではボブ・ディランの『シャドウ・キングダム』と趣向が近いも。ボブ・ディラン、ポール・サイモン、ニール・ヤング。いろいろな意味でベテランたちが今この時代に共鳴し合っているようで、ちょっと興味深い。最後の曲、ニール・ヤングが繰り返す“愛を忘れるな”のリフレインが今だからこそより一層胸に響く。

早くアナログ、届かないかな。

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