シングルズ・コンピレーション／ブラザリー・ラヴ
サブスクのストリーミングで何か面白そうなニュー・リリースはないかなぁ、と、あれこれ漁っていると、ときどきなんじゃこりゃ！と、びっくりするような、というか、あ、いたねー、忘れてた…みたいなアーティストの音源に出くわすことがあって。楽しいと同時に、自分の物忘れの酷さに呆れたりするわけですが。
先日も出くわしました。これ。ブラザリー・ラヴ。リヴァプール出身のマイク、ロニー、リーのキャロル3兄弟によるポップ・グループで。1970年代初頭に何枚かシングルをリリースしていた連中だけど。覚えてる人、どのくらいいるかな。そもそも知らない人のほうが多いかも。
もちろんぼくも当初はこの人たちのことなど何ひとつ知らず。だいぶ後になって、ホワイト・プレインズとかエディソン・ライトハウスとかブラザーフッド・オヴ・マンとか、あの辺の1970年代初頭ブリティッシュ・バブルガム・ポップのことを深掘りするようになってからようやくその存在にぼんやり気がついた程度なもんで。偉そうなことは言えないのだけれど。
とにかく資料がほとんどなく、いまだに素性はよくわからずじまい。女優／コメディエンヌとして人気を博していたフェイス・ブラウンとも兄弟姉妹で。4人組でザ・キャロルズと名乗って活動していたこともあるらしいものの、不勉強ゆえ、まずフェイス・ブラウンがわからない(笑)。と、そんなよくわからない3人組のシングルAB面音源を一気に集めたアンソロジーのストリーミング配信がなんとサブスクで、この1月20日にスタートしていて。驚いたのでした。
1970年代前半に出たシングル7枚のAB面を網羅したもので。A面、B面、A面、B面…の順に曲が並んでいる。そのわりに収録曲が全13曲って、奇数じゃねぇか、おかしいだろ、と思われるかもしれませんが。1曲目に入っている「アイ・ラヴ・エヴリシング・アバウト・ユー」が、11曲目の「ティップ・オヴ・マイ・タング」って曲のB面に収められて出たことがあるので、重複を避けて全13曲、と。そういうこと。
スタッフ的には、スウィートとかXTCとかブームタウン・ラッツとかベイ・シティ・ローラーズとかとの仕事で知られるフィル・ウェインマンと、ムーディー・ブルースとかコリン・ブランストーンとかステイタス・クォーとかとの仕事でおなじみのピップ・ウィリアムスががっちりバックアップ。ある時期からはウェインマンとの共作でベイ・シティ・ローラーズに名曲「恋をちょっぴり（Give a Little Love）」を、ピップマンとの共作でステイタス・クォーに「フー・ゲッツ・ザ・ラヴ？」を、それぞれ提供したジョン・グッディソンも関わるようになった。
ということで、基本的にはウェインマン、ウィリアムス、グッディソンの共作曲が揃っているのだけれど。時折、他のソングライターの力も借りていて。「ウィークエンド・ラヴ・アフェア」にはやはりベイ・シティ・ローラーズ人脈(笑)のコリン・フレッチャーも名を連ねている。前出「ティップ・オヴ・マイ・タング」はリンジー・ディ・ポール＆バリー・ブルー作。「ハニー・マン」はスウィート・サルヴェイションが歌っていたキャット・スティーヴンス作品のカヴァー。で、「街角のプレイガール（Little Town Flirt）」はご存じデル・シャノンの自作ヒットのカヴァーだ。
あの時代の英国バブルガム・ポップが好きな方には絶好か、と。今んとこストリーミングかダウンロード配信のみ。HDTracksではハイレゾも扱っていたけど、フィジカルはないみたい。でも、チェリー・レッド・レコードの編纂だから。そのうち形になるかも。ライナーノーツとか、ぜひ読みたいので、フィジカル化、心から期待してます。
ちなみに1970年ごろ、同じブラザリー・ラヴというグループが「タフタ・ローズ」というシングルを出していて。これ、ハンク・マーヴィンとジェリー・ローダンが書いて、ブライアン・ベネットがアレンジして、ブルース・ウェルチがプロデュース…というシャドウズ仕様の1曲。当時ホワイト・プレインズも歌っていたっけ。そのシングルB面には「サミー」って曲が入っていて、曲作りにロジャー・グリーナウェイとかも絡んでいた。1971年にかけてあと何枚かシングルを出しているのだけれど。これは同名異グループなのかな。
こっちのブラザリー・ラヴはもともとマッカーサー・パークと名乗っていて。でも、ブリストル本拠の同名バンドがすでに存在していたことから改名を余儀なくされ、ブラザリー・ラヴになった…と理解している。ぼくとしてはきっと同じバンドだろうと思っていた。でも、今回のシングル集に入っていないということは、別グループっぽいか？ うーん。誰か知ってたら教えてー。
