ガーデニング/シーヴ・ジェイコブセン
ノルウェーのシンガー・ソングライター。北欧の人ってことで、名前の表記、シフ・ヤコブセンというのが一般的みたいだけど。アメリカでは“シーヴ・ジェイコブセン”って発音されていて。どっち? 来日公演とか見に行けなかったので、ご本人がどう発音しているかもわからず。どうしようかなと思いつつ、今回は英語読みでいきますね。
シーヴ・ジェイコブセン。5作目のアルバム、出ました。シーヴさんは実際、オスロの自宅で庭いじりをするのが日課だそうで。文字通り、それと同じアプローチで編み上げられたナチュラルでオーガニックなアルバムが本作『ガーデニング』ということになりそう。
これまた名前の読み方がよくわからないけど、ノルウェーのエレクトロ・ポップ・デュオ、ヨウスカの一員、ハンス・オラフ・セッテムと、やはりノルウェーのシンガーソングライターであるシメン・ミトリッドがプロデュース。ボン・イヴェールやマウンテン・マン、yMusicなどのアルバムにも関わるザック・ハンソンの名前もエンジニアとしてクレジットされている。アーネ・ブルンが1曲、デュエット・パートナーとして参加。
パンデミックのさなか、予定されていた大規模な北米およびヨーロッパ・ツアーがキャンセルになったため、その代わりにシーヴさん、ノルウェー国内のコーヒー・ハウスを巡る、こぢんまりとした、ソーシャル・ディスタンスを守った形のソロ・コンサートを18回、なんと無料で行なったのだとか。その際、久々に故郷の街にも帰り、かつての友人たちと時を過ごしたのだけれど。そこである種のタイムスリップ感覚のようなものを体験したらしい。
その体験がいい形で彼女を触発。ナチュラルでオーガニックなフォークの美学がより研ぎ澄まされ、音作り面でも余分なものが削ぎ落とされた。アコースティック・ギターを音像の中心に据えて、マンドリン、アコーディオン、チター、バンジョー、ペダル・スティール、パーカッションなどをさりげなく、有機的に絡め、それらを木管やストリングスのアンサンブルでふわっと包み込んだ音像の下、シーヴさんの透明で、幽玄で、深い歌声が舞う。今回はコーラス・ハーモニーもひときわ豊か。結果、淡く柔らかなのに、ピュアで、凛とした1枚がこうして誕生したわけだ。
素敵です。泣けます。