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Disc Review

All the Falling Angels: Solo Recordings & Collaborations 1965-1976 / Keith Relf (Repertoire Records)

オール・ザ・フォーリング・エンジェルズ:ソロ・レコーディング&コラボレーションズ 1965〜1976/キース・レルフ

ヤードバーズというと、やっぱりエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ…。歴代リード・ギタリスト3人こそが話題の中心で。ヤードバーズの“その後”というと、基本的にはこの3人の“その後”ってことになる。

でも、もちろんヤードバーズには他のメンバーもいて。ドラムのジム・マッカーティとか、ベースのポール・サミュエル=スミスとか、サイド・ギターのクリス・ドレヤとか、そしてこの人、リード・ヴォーカル&ハーモニカのキース・レルフ。にもかかわらず、この辺の人たちの“その後”はほとんど語られずじまい。

そういう意味では、なんか、ヤードバーズってクラプトン、ベック、ペイジの露払いみたいな、踏み台みたいな、そういうファーム的存在と思われているフシもなくはないわけですが。

でも、熱心なファンならばご存じの通り、今日の主役、キース・レルフの“その後”もなかなか興味深い。3大ギタリストはヤードバーズ以降もブルース・ロック的なテイストを引き続き保ちつつの活動だったけれど、キース・レルフはいったんその路線からは大きく逸れてしまったもんで。そのぶん損しちゃった感、なきにしも…。

この人、ヤードバーズ時代に2枚、ソロ名義でシングルを出していて。解散後はジム・マッカーティとともに“トゥゲザー”なるデュオを結成。『ペット・サウンド』期のブライアン・ウィルソンあたりからの影響とかも色濃いフォーキーなサンシャイン・ポップというか、暗めのサイモン&ガーファンクルというか、ユルめのタートルズというか、そういう音楽性に挑んでみせた。

1968年にデビュー・シングルをリリース。が、まったく売れずじまい。でも、二人は負けずにメンバーを補強して新バンド、ルネッサンスを結成。1969年、クラシカルで、モーダルで、サイケで、ほんのちょっとだけブルージーなプログレッシヴ・フォーク・ロックという感じのファースト・アルバムをリリースした。

これ、今の耳で接するとそれなりの1枚ではあるのだけれど。当時の評価は今いち。セカンド・アルバム『イリュージョン』も制作されたものの、本国では当初お蔵入り。キース・レルフはすっかりやる気を失って、バンドから離脱。ルネッサンスはご存じの通り、途中加入のマイケル・ダンフォードが引き継いで、別プロジェクトとしてやがて成功を収めることになる。

その後はブルース・ロック・バンド、メディシン・ヘッドとかを経て、1974年にアルマゲドンを結成。こちらは重めのプログレ・ブルース・ロックというか。ハード・ロック版ヤードバーズというか。その路線で。これはこれでありなアプローチだったのだろうけど、まあ、同時代的にレッド・ツェッペリンがいたからねぇ…。

と、そうこうするうちにダンフォードが引き継いだ新生ルネッサンスが注目を集めるようになって。それに便乗する形で第一期ルネッサンスのオリジナル・メンバーが再結集。セカンド・アルバムのタイトルからとったイリュージョンという新バンド名のもとで活動再開を目論むものの、再デビュー直前の1976年5月、キース・レルフはリハーサルでエレクトリック・ギターを演奏中、感電死してしまった。享年33。

まさに悲運な男。そんなキース・レルフがヤードバーズ末期〜解散後にたどった歩みにスポットを当てたのが本作『オール・ザ・フォーリング・エンジェルズ:ソロ・レコーディング&コラボレーションズ 1965〜1976』だ。

とはいえ、驚いたことにルネッサンス〜アルマゲドン期をていねいにたどるありがちな構成ではなく、1966年の初ソロ・シングルの音源に始まり、ヤードバーズの『リトル・ゲームズ』の拡張エディションにボーナス収録されたりもしていたトゥゲザー時代の音源とか、オリジナル・ルネッサンス活動停止後に映像作品のサウンドトラックとしてマッカーティとともに制作したレア音源とか、レルフ本人のテープ・アーカイヴから発見された当時のデモ音源などを中心に編まれた超マニアックなアンソロジー。全24曲中、未発表トラックが11曲! 

亡くなる12日前に録音されながら長らくお蔵入りしていた「オール・ザ・フォールン・エンジェルズ」まで。ブルース・ロック・アーティストとしてのレルフではなく、サイケでフォーキーなレルフ像を一気にまとめあげた感じだ。「レヴォリューション9」みたいなミュージック・コンクレート作品とかもあって。この時期、キース・レルフの頭の中にはヤードバーズでは実現し得なかった多彩な音楽性がぐるぐるに渦巻いていただろうなと改めて思い知る。

フィジカルは本国イギリスで明日発売かな。日本のアマゾンでは6月5日発売ってことになってる。今は一足先にストリーミングで楽しんでますが、録音日時とか音源の素性とか、そういうデータがまったく記されていない状態なので、ちゃんと当時の事情を理解したければ関係者へのインタビューなども含むライナーが掲載されているという32ページのブックレット付きのCDのほうを入手すべきかも。帯と日本語解説付きの国内仕様盤はさらに遅れて6月24日発売だとか。とりあえずサブスクで予習ですかね。

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