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Disc Review

The Bowie Years / Iggy Pop (Virgin/UMC)

1977〜ボウイ・イヤーズ/イギー・ポップ

イギー・ポップとデヴィッド・ボウイの関係というのは、なんとも不思議というか、微妙というか。相性がいいのか悪いのか、よくわからない。

でも、相性がいいにせよ悪いにせよ、この二人が揃うとなんだかものすごい化学変化が起こるというか。時空が歪むというか。最終的に座りが悪いポイントに着地するのだけれど、その座りの悪さがクセになるというか。

たとえば、イギー&ザ・ストゥージズ時代の『ロー・パワー』。初期2枚のアルバムを出したあと、ドラッグなどであまりにも荒れまくりのバンド状態にあきれたレコード会社から契約を切られて、1973年、もはや解散かという瀬戸際にボウイの勧めでロンドンでレコーディングされたサード・アルバム。その昔、『淫力魔人』なるとんでもない邦題でリリースされていた“元祖パンク”の呼び声も高い1枚だけれど。

あのアルバム、楽曲自体はかなりごきげんなのに、ボウイ主導でチープにミックスされた薄っぺらい音質がひどくて。まあ、せっかくマルチ・テープレコーダーを使わせてもらいながらも、いや、俺たちよくわかんねーし…的な感じで、結局はたった3トラックにしか音を入れなかったというストゥージズが悪いわけだけど(笑)。時間もない中、ボウイが仕方なく妥協したその最終ミックスには、イギー自身も異議を唱えていた。

おかげで最終ミックス以前のヴァージョンがブートで出回ったりもした。1997年になってから、ヘンリー・ロリンズの熱心な説得によってイギー自らがリミックス/リマスターを手がけて、ギターとベースの音をぶりぶりに持ち上げたライヴでラウドな音へと生まれ変わらせたニュー・ミックスがCD化されたこともあった。このあたりのぐだぐだも、ボウイとイギー、二人の関係/相性の微妙さを表わしている気がする。

と、そんな二人がベルリンで共同生活していた蜜月時代、1977年の活動を振り返るCD7枚組ボックスセットが編まれた。その名もずばり『ザ・ボウイ・イヤーズ』。

この時期、1977〜78年、ストゥージズを解散して、ドラッグ依存もなんとか乗り切ったイギーがリリースしたアルバムは3作。初ソロ『イディオット』とセカンド『ラスト・フォー・ライフ』、さらにその年に行なわれたツアーのライヴ音源からセレクトされたベスト・テイク集『TV Eye〜1977ライヴ』。今回の7枚組は、まずこの3作をそれぞれディスク1〜3に最新リマスター音源で収録している。

ボウイにとってはいわゆる“ベルリン三部作”時代に手がけたイギー作品群ということになるわけだけれど。その色合いがもっとも強く出たのが『イディオット』で。今にして思えば、エクスぺリメンタルというか。インダストリアルというか。エレクトロっぽい音作りを大胆に持ち込んだロックの先駆け的な1枚だった。生々しさと冷たさとが攻撃的に交錯するアナログ・シンセの響きが、語るようにうねるイギーならではのバリトン・ヴォーカルと絡み、クールなエッジ感を当時プレゼントしてくれたものだ。「ナイトクラビング」「ファンタイム」「チャイナ・ガール」「タイニー・ガールズ」など名曲多し。

ただ、ちょっとボウイ寄りかも。ストゥージズ時代のイギーらしさの象徴でもあったギター・ロック感も薄い。そういう意味でぼくの場合、個人的には、ぐっとロックンロールというか、シックスティーズR&Bというか、そういった肉感的な方向に立ち返った次作『ラスト・フォー・ライフ』のほうがイギーらしい気がして断然好きだった。モータウン・ビートを取り入れた表題曲から「シックスティーン」「サム・ウィアード・シン」「ザ・パッセンジャー」「トゥナイト」と連なるアナログA面は最強。ボウイだけでなく、彼がベルリン時代によく起用したギタリスト、リッキー・ガーディナーもいい曲を提供している。

箱の話に戻ると。ディスク4は『エディット&アウトテイクス』。文字通り別ミックスや、シングル・エディット、インタビューなどを詰め込んだ1枚。ディスク5は1977年3月7日の英ロンドン、レインボウ・シアター公演の模様を収めたライヴ盤。ディスク6は同21日の米クリーヴランド、アゴラ・ボールルーム公演。ディスク7は同28日、米シカゴ、マントラ・スタジオで収録された放送用ライヴ・セッション。もちろんボウイもキーボードで参加している。

これらライヴ音源がやっぱり興味深い。たとえば『TV Eye ライヴ』には入っていなかった「シスター・ミッドナイト」とか、スタジオ・ヴァージョンのクールな感触とはまたひと味違う猥雑な粗さがぐわっと前面に押し出されていて。かっこいい。

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