Disc Review

It’s All Your Fault / Mike LeDonne (Savant Records)

イッツ・オール・ユア・フォールト/マイク・ルドーン

先日も軽く触れたボブ・ディランのストリーミング・パフォーマンス映像『シャドウ・キングダム』。大好評らしく、アンコール配信期間が7月25日の日曜日いっぱいまで延長された。やった。めでたい。明日からの4連休中、繰り返し繰り返しどっぷり楽しめる。見るたびにいろいろ新たな発見に出くわすことができる映像(と音)だけに、これはまじにうれしい。いずれ何らかの形で市販パッケージ化される作品だとは思うけれど、それまで忘れないよう、週末に向けて何度もリピートしつつ頭にたたき込んでおきたいものです。

と、大喜びしながら、今朝のアルバム・ピックアップ。ちょっと前、5月末か6月に出ていた盤ではありますが。ちょっと前に本ブログでもご紹介したフランキー・ヴァリの最新スタンダード・カヴァー・アルバムを全面的にバックアップしていたジョーイ・デフランセスコや、ラリー・ゴールディングス、ブライアン・シャレット、ジョン・メデスキあたりとともども、現代のオルガン・ジャズ・シーンを牽引するマイク・ルドーンの新作です。

この人、ベニー・ゴルソンのレギュラー・カルテットのピアニストとしてちょくちょく来日してくれていて。ゴルソン・ファンのぼくもその都度ブルーノート東京に通っては演奏を楽しませてもらっている。ただ、ゴルソン・バンドではいつもピアノを弾いていて。もちろんそれでも十分にうれしいものの、この人がハモンド・オルガンをプレイするときのファンキーでスウィンギーな魅力に比べちゃうと、やはりピアノだと少し物足りない。主役のゴルソン親分を立てているからかもしれないけれど、わりと地味目に一歩引いてプレイしている感じで。

でも、自らのリーダー・アルバムともなればそんな足かせなし。2年前に出た前作『パートナーズ・イン・タイム』は、2013年の『スピーク』以来、久々のピアノ・トリオ作品だったけれど、今回のアルバムではちゃんと本職のオルガンをプレイ。もちろん、この人のもともとの性格なのか、他のプレイヤーをきっちり際立たせつつ自らもうまい具合にアンサンブルに溶け込んでグルーヴを牽引する、みたいな。ゴルソン・バンドのときほどではないものの、そうした持ち味はここでも発揮されつつ。でも、そうした持ち味もふまえながら、とにかく縦横に、柔軟に、いきいきと躍動する様子がばっちりとらえられていて。ほんと、ごきげんだ。

ベーシックとなっているのはもちろん、もう20年ほど活動をともにしている彼のレギュラー・グループ“グルーヴァー・カルテット”。オルガンのルドーン、テナー・サックスのエリック・アレクサンダー、ギターのピーター・バーンスタイン、ドラムのジョー・ファーンズワース。鉄壁のチームワークによる堅固なアンサンブルを聞かせて。

さらに全8曲中5曲にジョン・ファディス、ジョー・マグナレリ、ジム・スナイデロ、スティーヴ・ウィルソン、スコット・ロビンソンら腕きき揃いの17人編成ビッグ・バンドが客演。ジミー・スミスの『ザ・キャット』とか、ブラザー・ジャック・マクダフの『ロック・ア・バイ』とか、オルガン・コンボ+ビッグ・バンドの名盤はいくつかあるけれど、その現代版という感じか。

冒頭を飾るアルバム表題曲ほかルドーン作のオリジナルが3曲。加えて、グラント・グリーンの「マタドール」、リー・モーガンの「パーティ・タイム」といったファンキー・ジャズの名曲や、以前コンボ編成でもレコーディングしていたマイケル・ジャクソンの「ロック・ウィズ・ユー」をはじめ、コモドアーズの「スティル」、アンブロージアの「ビゲスト・パート・オヴ・ミー」といったポップ・ヒット群のカヴァーがずらり。レコーディングが行なわれたのは世界が本格的にパンデミックにのみ込まれる直前、2020年2月、数々のブルーノート・レコードの名盤を生み出したニュージャージーのヴァン・ゲルダー・スタジオで。ルドーンはジミー・スミスも愛用していたというハモンドC-3(B-3のチャーチ・モデル)を使ったらしい。

ツボを心得た選曲と、アレンジと、腕ききたちのパフォーマンスと、完璧なロケーション。カタいこと抜きに思いきり楽しめる1枚です。最高! アナログ盤でほしいんだけど。まだ出ていないみたい。出て。

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