Disc Review

Blue Boy / Ron Sexsmith (spinART/Cooking Vinyl)

ブルー・ボーイ/ロン・セクスミス

確かにイチローはかっこいいと思う。まあ、プレイ・スタイル的に、ぼく個人としてはあまり好きなタイプというわけではなく、そんなに熱心に試合を追いかけているわけではないのだけれど。でも、彼が現在日本一の打者であることは間違いないし、もちろんぼくも海のこちら側から微力ながら応援している。

でも、なんか最近のスポーツ新聞とかTVのニュースとか見ていると、イチローが単身、日本を代表してアメリカ相手に勝負を挑んでいるみたいな。そんな感じで。それはどうなんだろうと思ってしまうのも事実。イチローはマリナーズってチームの一員として、相手チームと戦ってるだけなのに。今日はイチローが3安打だとか、打率がどうしたとか、ファン投票1位だとか、個人のことしか騒がないんだもの。あれは野球の報道じゃねーだろ。

もちろん、野球には個人技の部分もあって。団体競技であると同時に個人競技でもあるという、実に深いスポーツ。だからこそ、プロのエンターテインメントとしてこれほどの威力を発揮してくれるわけだけど。そうはいっても、このところの報道は極端すぎないか? オリンピックの報道を見ているみたい。野球の本当の面白さを知らない記者が、自分のわかる範囲のみで騒いでるんじゃないの? 政治知らないおばちゃんがジュンちゃん素敵とか言ってるみたいな。あるいは、日本人アーティストがイギリスのクラブ・チャートに入った。だから、すごい…とか言ってるのとか。そういうのと、これじゃあまり変わらないなぁ。かといってどこのチャートか、どのくらい影響力のあるチャートか、書いてる人自身、全然わかってなかったりして(笑)。

あと、例のサッカーね。コンフェデ。フランス対日本の決勝戦の視聴率が巨人・阪神戦に勝ったとかいう記事にしてもさ、なんでフランスと日本の何年に一度かの国際試合の視聴率と、東京と大阪のプロ野球チームのごく日常的な試合の視聴率とを比べて鬼のクビとったみたいに騒いでるんだか。ジュビロ・エスパルス戦と巨人・阪神戦の視聴率比べなら話はわかるけど。

まあ、きっとこれも確信犯的にやってるんでしょう。メインストリーム・カルチャーに対するパターンとしての反発みたいな。そういうのがあからさまに根底に流れているんだね。恥ずかしいね。音楽で言えば、ビートルズよりストーンズのほうがすごいぞ、いや、ストーンズよりキンクスのほうがすごいぞ……みたいな。そんなこと言ってるうちに、ビートルズよりラトルズのほうが数百倍すごいバンドだってことになっちゃったりして。そういう感じ。

個人で楽しむぶんには、どんな個人的見解を持っていようが問題ない。ビートルズよりラトルズのほうが数千倍すごいと確信していてもいい。けど、公的な報道として何らかの情報を提供するなら、もっとフラットな視点を提示してほしいものだなぁ、と。フラットって言葉が適当でなければ、もっと幅広い視点というか。スポーツ紙に対しても、音楽ジャーナリズムとやらに対しても、思ったりするわけですよ。ま、音楽評論家とか称されることが多いぼく自身も含めてのことなんだけどさ。あ、あと、外務省がらみの報道とかもそうだな。ついでに、フライデーの岡嶋飲酒運転報道とかもね。

あー、いらつく(笑)。

そんなわけで、無駄にいらつきながら過ごす今日このごろ。仕方ないので、ロン・セクスミスの新作で心を落ち着けてます。

この人の場合、チャド・ブレイク&ミッチェル・フルームとのコンビネーションがすっかりおなじみになっているわけだけれど。今回はオルタナティヴ・カントリー界の立役者的プロデューサー・チーム、トワング・トラスト(スティーヴ・アール&レイ・ケネディ)との仕事。移籍第一弾で心機一転ってことかな。チャド&ミッチェルとの過去3枚のメジャー盤に比べると、少々肩の力が抜けた感触がある。

といっても、この人特有の、何というか、空気がしんと止まっちゃっているような、深く深く内省へと踏み込んでいくような世界観は変わらず。例の、淡々とした歌い回しで、ナイフと弾丸をテーマにした歌とか、夫のドメスティック・バイオレンスから逃れようとする妻子の歌とか、殺人について思いをめぐらす男の歌とか、ショービズ界の残酷さについての歌とか、かなりダークな題材をつぶやいてみせる。ただ、サウンド面でこれまで以上にポップなアプローチとか、シンプルながら広がりのあるアプローチを展開しているところが新味かな。

いつもながら、切なく美しいメロディの嵐。“静謐なロードハウス・ブルース”とでも言いたくなるような、なんとも不思議な感触の曲とか、ハワード・ジョンソンを招きジャジーに展開するバラードとか、特に胸にきた。


そして、このスケジュールはしばらくここに載せておきましょう。ついに決定したブライアン・ウィルソン来日公演のスケジュールです。

東京: 2001年9月20日(木)
東京国際フォーラムホールA

東京:2001年9月21日(金)
東京国際フォーラムホールA

名古屋: 2001年9月22日(土)
愛知県芸術劇場大ホール

福岡: 2001年9月24日(月)
福岡サンパレス

大阪: 2001年9月25日(火)
大阪厚生年金会館

チケット発売日:7月初旬予定

開演時間とか、チケットの発売元とか、そういうのは各自チェックしてください。ちなみに、全米で展開するポール・サイモンとのジョイントではないです。ブライアン単独。もちろん単独のほうがたっぷりとブライアンのライヴを楽しめるわけで。こっちのほうが断然うれしい。あー、待ち遠しい。

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