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Disc Review

...'Til We Meet Again / Norah Jones (Blue Note Records)

ティル・ウィー・ミート・アゲイン~ベスト・ライヴ・ヒット/ノラ・ジョーンズ

'Til We Meet Again.

また会える日まで。ご時世がご時世だけに、なんだかいちだんと沁みるタイトルです。

ノラ・ジョーンズは去年、オリジナル・フル・アルバムとしては4年ぶりとなる『ピック・ミー・アップ・オフ・ザ・フロア』をリリース。当然、それに合わせたワールド・ツアーが予定されていたものの。新型コロナウイルス禍、そんなことできるはずもなく、スケジュールは全キャンセル。空いた時間を最大限に活用して、ノラさんは自宅から定期的に興味深い配信弾き語りライヴを披露したり、貴重な体験をファンにプレゼントしてくれてきたけれど。

でも、やっぱり観客を前にして同じ空気感を共有するライヴの大切さを再確認したいよね、ということか。キャリア初のライヴ・アルバムをリリースしてくれた。いい人だ。ライヴ映像はこれまでにもいくつかパッケージ化されていたけれど、アルバムとしては初。2017〜19年、アメリカ、フランス、イタリア、ブラジル、アルゼンチンなど各国でライヴ・レコーディングされた音源からノラ本人がお気に入りのパフォーマンスを厳選したベスト・セレクションだ。

基本的なメンバーは、ピアノがノラ自身、ピート・レムがオルガン、クリストファー・トーマスあるいはジェシ・マーフィがベース、ブライアン・ブレイドがドラム。曲によってジェシ・ハリスがギターで、ホルヘ・コンティネンティーノがフルートで、マルセロ・コスタがパーカッションで加わる。みんな腕ききだけれど、わかっていることとはいえ、ノラのピアノがものすごくうまくて。改めて驚いた。時に叙情的に、時に躍動的に、時にファンキーに、時にブルージーに、見事ヴォーカルと絡み合いながらノラさんならではの深い深い歌心をバックアップしている。表現力もぐっと深まった。

オープニングを飾っているハンク・ウィリアムス作の名曲「コールド・コールド・ハート」のカヴァーをはじめ、ジェシ・ハリス作の「ドント・ノウ・ホワイ」と「アイヴ・ガット・トゥ・シー・ユー・アゲイン」の3曲が2002年のデビュー・アルバム『カム・アウェイ・ウィズ・ミー』から。後は基本的にピート・レムやジェシ・ハリス、リー・アレクサンダーら音楽仲間との共作も含むノラ自身のオリジナル曲だ。

「サンライズ」「ゾーズ・スウィート・ワーズ」が2004年の『フィールズ・ライク・ホーム』から。「アフター・ザ・フォール」が2012年の『リトル・ブロークン・ハーツ』から。「フリップサイド」と「トラジディ」が2016年の『デイ・ブレイクス』から。そして、「イット・ワズ・ユー」「ビギン・アゲイン」「ジャスト・ア・リトル・ビット」が2019年にコンピレーション・アルバム『ビギン・アゲイン』にまとめられた一連のシングル・セッションから。「アイル・ビー・ゴーン」は同じく2019年にメイヴィス・ステイプルズとの共演で、「フォーリング」はホドリゴ・アマランチとの共演で、それぞれリリースされたシングル曲。なかなかに的確な選曲だ。

で、ラスト。もう1曲、カヴァーが入っていて。それが本ライヴ盤のハイライトとも言うべき1曲。ノラのピアノ一本で綴られたサウンドガーデンのカヴァー「ブラック・ホール・サン」だ。2017年に亡くなったクリス・コーネルへの追悼として、コーネルがサウンドガーデンとして最後にライヴを行なった会場、米ミシガン州デトロイトのフォックス・シアターで録音された音源。ライヴ映像がYouTubeなどで公開されたりもしていたけれど、それがこうしてオフィシャルにフィジカル音盤化されたわけだ。

最初のうちは、意外な曲をカヴァーしたノラに、フレーズの合間合間、熱い声援で応えていた観客たちが、途中からノラの歌声に漂うただならぬ集中力に圧倒され、ぴんと張り詰めた静寂な中へと会場全体が包まれていく、その流れがなんだかもうたまらない。日本盤にはこのあともう1曲、ボーナス・トラックとして2017年、大阪城ホールで録音された「サンライズ」が追加されていて。まあ、それ自体はとてもうれしいのだけれど。聞くときは「ブラック・ホール・サン」でいったん止めたほうが断然沁みるかも。ちなみにぼくは、ボーナスなしのハイレゾ音源でダウンロード購入しました。ノラの歌声と音像、ハイレゾで聞くのが好きです(笑)。

ともあれ、改めてノラ・ジョーンズという表現者の底力を思い知ることができる1枚。一日も早く、また生で見たいな…。

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