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TBT: CRT City Pop Meeting #01

【スロウバック・サーズデイ】新宿シティ・ポップ井戸端会議 #01

ここ数年は、平日毎朝更新を基本に日々ゆるーく続けている本ブログですが。明日はわりと早朝からおでかけ仕事なもんで、さすがに更新は無理そう。てことで、明日書こうかなと目論んでいた話題を今日書いちゃうことにしました。ちょうどネタ的にはスロウバック・サーズデイっぽいものなので、いいかも。

要は、明後日、4月17日(土)の夜、20時から生配信されるCRTイベントの告知なんですが(笑)。

今回のCRT、テーマはずばりというか、今さらというか、ド直球で“シティ・ポップ”。なんだか世の中すっかりシティ・ポップ・ブームみたいで。ぼくもありがたいことに各方面からお声がけいただきつつ、いくつかのラジオ番組でシティ・ポップ特集をやらせてもらったりしております。

そんなことしておきながら、しかし今、シティ・ポップと呼ばれてリバイバルしているタイプの1970〜80年代の音楽をリアルタイムで体験してきた世代としては、昨今のかなりざっくりした盛り上がりぶりに、どことなく違和感を覚えていることもまた事実。まあ、そのあたりはリアタイ世代ならではの妙に細かいこだわりなので、別にその種の音楽を今、新たな出会いとして新鮮に、まっすぐ、素直に楽しんでいらっしゃる若い世代に水かけるつもりなどまるでありません。世代を超えて同じ音楽を共有できる喜びに、むしろわくわく胸高鳴らせているわけですが。

でも、当時こういう音楽って実際のところそういう感じで捉えられていたわけじゃなかったんだよなぁ…的な? その辺の現場感覚みたいなものを、土曜の夜にいろいろ話し合ってみようかな、と。それが明後日のCRTのテーマなわけです。

もちろん、生配信なので、当日どんな方向に話が展開するかはまったく不明ですが。お時間ある方、ぜひチェックのほどを。PCでご覧の方は右のサイドバー、スマホの方は下の方のCRTインフォメーションをご参照の上、楽しんでいただけたらうれしいです。チケット、こちらでゲットできます。よろしくお願いします。

とはいえ、シティ・ポップ。だいたい何がシティ・ポップかとか、ほんと曖昧というか。千差万別。人それぞれで感じ方が違う。

たとえばぼくにとっては、今回ここにざっくりピックアップした4枚のアルバムで当時聞くことができた音とかが、まさにそういう印象だった。具体的な楽曲としてはブレッド&バター『バーベキュー』(1974年)収録の「ピンク・シャドウ」とか、吉田美奈子『MINAKO』(1975年)収録の「レインボー・シー・ライン」とか、鈴木茂『LAGOON』(1976年)収録の「走れラビット」とか、南佳孝『SOUTH OF THE BORDER』(1978年)収録の「プール・サイド」とか…。

なんか、当時のぼくたちは“シティ”といっても、たとえば東京みたいな都会の猥雑な街並みではなく、湘南方面のちょっと余裕のあるイメージというか、もっと言えばロサンゼルスとかサンフランシスコとかの、青い空、水平線、まっすぐに伸びたハイウェイ、涼やかなブリーズ…みたいな光景というか、そういうものを強大な憧れをこめて脳裏に思い描いていて。前述したようなアルバムを聞きながら、まだまだわびしかった当時の日本の風景の上に、そういう妄想のレイヤーを幾重にも重ねつつ過ごしていたのでした。

以前、山下達郎のアルバム『FOR YOU』に関する原稿の前振りとしてこんな文章を書いたことがある。ざっと引用しておくと——

ずいぶんと遠い記憶になってしまったけれど、1980年代に入ったばかりのころの日本はまだまだ、こう、なんだかダサかった。消費社会へと本格的に突入するバブル期のとば口にはあったのだが、いかんせん洗練されていないというか、センスがないというか、馴染んでいないというか、貧乏くさいというか、そんなだった覚えがある。『POPEYE』とか『JJ』といった雑誌が紹介するアメリカのカレッジ・スチューデントたちのライフスタイルのようなものに思いきり憧れを抱きつつ、ニュートラ、ハマトラ、プレッピーなど、これまた雑誌がおすすめする流行のファッションに疑いなく身を包み…。

でも、決定的に情報が足りなかった。身近なところにハイセンスな暮らしぶりのお手本などなかった。よそゆき感満点。六畳一間の和室にガラス天板のテーブルを置いて、ラークの灰皿置いて、パーラメントくゆらせて、発売されたばかりの缶入りポカリスエット飲んで、壁に永井博のプールの絵がプリントされた簾をかけて、でも座布団にあぐらかいて座ってFM聞いている、みたいな。まだ細かい洋楽、それもソウル・ミュージック関連のジャンル分けなど一般に定着していなかった。ファンキーもメロウもポップもトロピカルもすべてが一緒くた。おしゃれな都会的サウンドとしてざっくりまとめて受容されるようになったばかりだった。まだ誰もがエアコン付きの部屋に住んでいるわけではなかったころ。夏場、聞いているだけで涼しい気分になれる音楽は本当にありがたかった。

達郎さんの『FOR YOU』は1982年の作品だけれど。この感じは1970年代のうちはもっともっと濃厚だった。切実だった。ぼくも夏のくそ暑い日、部屋で高中正義の『SEYCHELLES』(1976年)のLPをかけながら、すがるように涼を取ったものだ。ほんと、涼しい気分になれて生き返ったっけ。というわけで、ぼくにとってのシティ・ポップというのは、“シティ”というわりに、むしろ日本の蒸し暑い夏とは一線を画す(と想像していた)湿度低めのリゾート感覚だったり、トロピカル感覚だったり、そっち方面の要素の含有率が高い音楽だったなぁ…と。

加えて、聞く側だけでなく、演る側も含めた“手探り”感。実はこれもけっこう重要なファクターだったような。そもそも、どう演奏しているのか、どうレコーディングしているのか、そういうノウハウさえ、誰も正確には把握していなかった時代だったから。そんな中、1970年代半ば過ぎから日本のミュージシャンの間でクロスオーヴァー〜フュージョンへの興味が高まって、さらにサルサ〜サンバなどラテンにも注目が集まって。その辺への探究心とか情熱とかが折からのディスコ・ブームみたいなやつと合体して…。

たとえばエスター・フィリップスのCTI盤とか、マリーナ・ショウのブルーノート盤とか、ああいうので聞けた、グレイト・アメリカン・ソングブック系の美しい旋律とコード進行と、ジャズ系セッション・ミュージシャンたちのウルテク演奏と、旬のディスコ〜ファンクっぽいグルーヴとを自分たちでも実践したいという熱意がごちゃ混ぜに炸裂して、そこに憧れのリゾート感覚をまぶした、でも実は何もわかってない、雰囲気先行の歌詞が乗って…。

乱暴に言い切れば、そんな、なんともふわふわした境地を、ものすごく真剣な情熱と探究心とをもって模索していたのが1970年代の日本のポップ・シーンだったような。ぶっちゃけ、そんな気がする。そのやみくもな試行錯誤がやがて1980年代に入って、いい形で結実し始めることになるわけですが。

そんなような、シティ・ポップ感覚完成前夜のあれこれを、今度の土曜の夜、音楽仲間とダベりつつさらに思いを深めていきたいものだと考えております。ご覧になってくださる方には、特製プレイリストのURLなども公開させていただく予定。お楽しみに!

ちなみに、ワタクシ、数年前にこんな本も書いております。よろしければ。

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