Disc Review

The Rolling Thunder Revue: The 1976 Live Recordings / Bob Dylan (Columbia/Legacy)

ローリング・サンダー・レヴュー:1976年の記録/ボブ・ディラン

いや、39枚組って! ちょっ…。

ボブ・ディラン、1976年の伝説的ツアー、第二期ローリング・サンダー・レヴューのうち22回のショーで記録された現存音源全381トラック、49曲のパフォーマンスを集大成したボックスセット。2019年に出た第一期ローリング・サンダー・レヴューの集大成ボックス『ローリング・サンダー・レヴュー:1975年の記録』の続編的な位置づけだけれど、あちらがCD14枚組だったから、今回は倍以上の規模だ。

今年の8月半ば過ぎに、こういうのが出ますよという一報を受けて。日本版ブックレットで曲目解説してほしいと、光栄なご依頼もいただいて。でも、音が全然届かず。ライナーの締め切りが9月半ばだったのに、9月に入ってしばらくしても音はなし。9月2週になってからようやく音源ファイルが届いて。そこからバッタバタで原稿を書いて。

なんとか間に合って、めでたく本日、ボックスセットがリリースされましたー。わー、ぱちぱちー!

この第二期ローリング・サンダー・レヴューでのパフォーマンスは、一部が1976年9月にリリースされたライヴ・アルバム『激しい雨(Hard Rain)』に記録されて世に出ていたのだけれど。あれ、初めて聞いたときは、まじぶっとんだ。冒頭の「マギーズ・ファーム」からしていきなり、よりロックに、よりハードに。何度もなし崩し気味に訪れるブレイクのラフさかげんにも思い切り戸惑った。テキトーなディランのスライド・ギターにもしびれた。

ディランが自らの過去のレパートリーを大胆に作り変えるアーティストであることは、今でこそ誰もが知っている。けれども、『激しい雨』が出たころ、ぼくたちがすでに手にしていたディランの本格的ライヴ盤といえばザ・バンドとの共演による1974年の『偉大なる復活(Before the Flood)』だけ。あのアルバムが単なる予告編だったと思えるほど、ここでのディランはより過激に過去のレパートリーを粉砕し、新たな視点とともに再構築してみせていた。

まだ1978年に実現した待望の初来日公演よりも前の話だ。ぼくたちにはまだ免疫がなかった。だから驚いた。戸惑った。でもって、それがクセになって(笑)、ますますディランの深沼にずぶずぶハマっていった。

ルーツ再訪をめぐる第一期ローリング・サンダー・レヴューでの試行錯誤を経て、『激しい雨』に記録された第二期ローリング・サンダー・レヴューでのディランはすでに別の地平を目指し始めていた。第二期は第一期の継承でも総決算でもなく、むしろ、その後、現在にまで至るディランの新たな試行錯誤の出発点だった。

と、そんな確信を改めて裏付けてくれるのが今回の39枚組。ジョーン・バエズ、ロジャー・マッギン、ミック・ロンソン、ボブ・ニューワース、キンキー・フリードマンら多彩な音楽仲間を引き連れて繰り広げた、かなりパンクなディランの姿。たっぷり味わい尽くしましょう。貴重な写真を満載し、マイケル・ギルモアの熱いライナーを掲載した40ページのオリジナル・ブックレットも興味深い。

日本盤は輸入盤国内仕様で、ヘッケル菅野さんによる英文ライナー完全翻訳、不肖ワタクシめによる全曲目解説、中川五郎さんによる歌詞対訳を掲載した分厚い日本版ブックレット付きです。

39枚も聞いてらんねーよ…というお忙しい方は、ツアー終盤、1976年5月16日のテキサス州フォートワース公演と、5月23日のコロラド州フォートコリンズ公演(1977年に日本でもテレ東で放送された例のライヴ番組が収録された公演)が、それぞれストリーミングおよびダウンロード販売されているので、とりあえずそちらを。前述『激しい雨』はこの2公演の録音から全9曲をピックアップしたものだったので、このデジタル・リリースで『激しい雨コンプリート』が楽しめる。

さらに前者、フォートワース公演のほうはアナログLP3枚組で同時リリース。12月になると日本からの要請で実現した2CDエディションも単独リリースされます。

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