Disc Review

Friendlytown / Steve Cropper & The Midnight Hour (Mascot Label Group/Provogue)

フレンドリータウン/スティーヴ・クロッパー&ザ・ミッドナイト・アワー

第63回グラミー賞の最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム部門にもノミネートされた2021年のアルバム『ファイア・イット・アップ』に続くスティーヴ・クロッパーの新作です。

クロッパーは現在82歳。でも、今なおリード・ギターに、リズム・ギターに、渋くかっこいい活躍を聞かせてくれていて。そんなクロッパーを、ジョン・タイヴン(ベース、サックス、キーボード)、ナイオシ・ジャクソン(ドラム)、ロジャー・C・リアリ(ヴォーカル)ら『ファイア・イット・アップ』と同じ顔ぶれがバックアップ。今回はそこにさらにエディ・ゴア(オルガン)と、なんとなんとZZトップのビリー・ギボンズ(ギター)が加わって。クロッパーがかつてウィルソン・ピケットに提供した大ヒット曲のタイトルから採られた“ザ・ミッドナイト・アワー”なるバンド名を冠しての1枚だ。

80歳代にして新バンド結成、みたいな? かっこよすぎる。

ぼくがこの人にどんな思いを抱いているかは『ファイア・イット・アップ』を紹介したときにあれこれ書かせてもらったので、ぜひそちらも参照してみてください。アルバムの作りも基本的には前作からの流れのまま。今回も基本的にはすべてタイヴンとリアリとクロッパー師匠の共作曲だ。

とはいえ、ギボンズも何曲かにクレジットされていたり、ゲスト・プレイヤーの名前も入っていたり。たぶんどれもスタジオでセッションしながら最終形へと仕上げられていったものなのだろう。今回も1曲だけ、フェリックス・キャヴァリエが共作者として名を連ねているものがあったけれど。これは以前の共演セッションから引き継がれたものなのかな。

でもって、ゲスト・プレイヤーがすごい。2曲目の「トゥー・マッチ・ストレス」には、2011年の『デディケイテッド〜ア・サルート・トゥ・ザ・ファイヴ・ロイヤルズ』でも1曲共演していたブライアン・メイが客演。ギターだけでなくヴォーカルも聞かせている。で、8曲目の「ユー・キャント・リフューズ」にはティム・モンタナも参加。さらにドラムにサイモン・カークも加わって強烈なジャングル・ビートを提供している。すごい。

とはいえ、やはり本作のいちばん魅力は、スティーヴ・クロッパーとビリー・ギボンズという、なんというか、こう、基本的に一般的なスーパー・ギタリストみたいにぴゃらぴゃらギター・ソロとかひけらかさない、ソリッドでタイトなコード・カッティングとか渋い短音リフとかを得意とするふたりの共存具合で。

たとえば、冒頭を飾るアルバム・タイトル・チューンとか。打ちひしがれて行く宛てすらない者の救いの街を描くこの曲の左チャンネルから聞こえてくる、たぶんギボンズが弾いているのであろうリード・ギターなんか、途中で短い超シンプルなギター・ソロを聞かせる以外はえんえん2音を繰り返し繰り返し、淡々と弾き続けるだけ。それが右チャンの、たぶんクロッパーによるカッティング・ギターと絡みながら、なんともファンキーでブルージーでソウルフルな快感を届けてくれるという、この境地。

かないません。

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