Disc Review

Sinseerly Yours / Thee Sinseers (Colemine Records)

シンシアリー・ユアーズ/ジー・シンシアーズ

2020年ごろからダップトーン/ペンローズ、コールマインなど、ヴィンテージ・ソウル・ファンにとって気になるレーベルからシングルをちょいちょいリリースし続けてきたイーストLAのチカーノ・ソウル・グループ、ジー・シンシアーズ。ぼくは2022年、NPRのタイニー・デスク・コンサートで、地元イーストLAの花屋さんからライヴ演奏を披露しているところを見て速攻でハマってしまったのだけれど。

キーボード、ギター、そしてヴォーカルのジョーイ・キニョネスに加えて、ジ・アルトンズ(オルトンズ?)としても活動するアドリアナ・フロレス(ヴォーカル)とブライアン・ボンセ(ギター&ヴォーカル)をフロントに据えた9人組(含・ホーン・セクション)。去年ここでちらっと紹介したような、米西海岸のチカーノ、つまりメキシコ系アメリカ人のローライダーたちがバリオ・クルージングする際にBGMとしてかけていたようなスウィート&メロウ・チューンを今の時代に現役の音楽として受け継いで演奏してくれていて。いい感じにスウィート。いい感じにいかがわしい。最高。大好き。

そんなに演奏がうまいわけでも、歌がすごいわけでもないにもかかわらず、そんなことも含めたユル〜い佇まい自体がたまらんです。そんな彼らの初フル・アルバム。ついに登場だ。自分たちが根城にしているスタジオでほぼ一発録りでレコーディングされたらしい。

かつてタイニー・デスクでも披露していた2020年のシングル曲「ホワッツ・ヒズ・ネーム」でスタート。以降、フィリーっぽかったり、スモーキー・ロビンソンっぽかったり、カーティス・メイフィールドっぽかったり、サム・クックっぽかったり…。ほぼ全曲ミディアム〜スロウのスウィートなナンバーで埋め尽くされているのだけれど。中にはフェイマス・フレイムズっぽいファンキー・グルーヴが楽しめるインスト曲があったり。

これもまた南カリフォルニアの重要な一風景。往年のイーストLAのクラブのフロアが目に浮かぶようだ。いや、行ったことないけど(笑)。

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