
NBPファイル vol.138:追悼ニール・セダカ
ニール・セダカが亡くなった。2026年2月27日、ロサンゼルスで。享年86。
2日前には家族とともにお気に入りのレストランで食事をしていたというから、急な体調変化だったようで。86歳という年齢も考えれば、きっと安らかな、幸せな旅立ちだったのだろうとは思うけれど。でも、寂しい。やっぱり寂しい。
去年、1年ほど前に出版した拙著『グレイト・ソングライター・ファイル 職業作曲家の黄金時代』でも、もちろんニール・セダカのことは取り上げていて。その章の冒頭、ぼくはこんなふうに記した。
以前、まだデビューしたてだったベン・フォールズにインタビューしたときのこと。「好きなソングライターは?」と質問したら、彼は即座に「ニール・セダカ」と答えた。即答。えらい。その瞬間、こいつ信用できるぞ、と。ぼくは勝手に思った。
ぼくと同じだ。ぼくもたまに、「好きなソングライターって誰なんですか?」と訊かれることがある。ぼくが世界でいちばん好きなアーティストはビーチ・ボーイズなわけだけれど、いちばん好きなソングライターとなると、それはブライアン・ウィルソンではない。彼は2番目。最高に好きなのはニール・セダカだ。なので、件の質問に対してニール・セダカの名を挙げると、困ったことに、意外な顔をされることが多いのだ。オールディーズ・マニアを自称する人からですら、だ。ニール・セダカに関してはシンガーとしての印象のほうが強いということなのだろうか。確かに、日本でのニール・セダカの代表曲というと、アメリカではもともとシングルB面曲としてリリースされた「恋の片道切符(One Way Ticket)」。これは歌詞の中に、“Bye Bye Love”とか“Lonely Teardrops”とか“Lonesome Town”とか“Heartbreak Hotel”とか“A Fool Such As I”とか、当時のヒット曲のタイトルをお気楽に盛り込んだ、まさにB面用に作られたとしか思えないジャック・ケラー&ハンク・ハンター作品だった。ニール・セダカの作品ではなかったのだけれど、でも、だからといってねぇ……。
とにかく周囲にセダカ推しが少ないもんで。ベン・フォールズの言葉には浮かれてしまった。うれしかった。仲間がいたって感じ。何があっても応援し続けるぞと思った。ニール・セダカというと、50〜60年代、キュートでポップな自作ロックンロールで大当たりをとっていた時期のことがおなじみだろう。おなじみじゃないか(笑)。もう、そんな人自体知らないって世代も多いのかも。でも、この人、キャロル・キング、バリー・マン、エリー・グリニッチらと並ぶ最重要シンガー・ソングライターとして、ポップス・ファンならば絶対に知っておかなければいけない存在なのだ。
多くのブリル・ビルディング系ソングライターたち同様、1960年代半ば、ビートルズ旋風に惑わされ一瞬シーン最前線から姿を消したように見えた時期もあったけれど、1970年代に入ってから見事に復活。以降、21世紀に至るまで素晴らしい音楽をぼくたちに届続けてくれた。そのあたりのことも前出の拙著にあれこれ記しているので、興味のある方はぜひ目を通していただけるとうれしい。
そこでも引用したエルトン・ジョンの言葉がいちばん的確かもしれない。2013年に出版されたニール・セダカの評伝本『ロックンロール・サヴァイヴァー』(リッチ・ポドルスキー著)の序文だ。
ビートルマニアのせいで、ニールは忘れられた存在になってしまった。でも、優れたソングライターは、どんなに苦境に立たされても絶対によみがえってくる。なぜなら、彼らは名曲を書くことをやめないからだ。
コロナ禍、自宅から毎日のように届けてくれた“ステイ・ホーム・コンサート”の動画のことも忘れられない。毎日2曲か3曲ずつ、自分のレパートリーを解説しながらピアノで弾き語りしてくれて。あの心落ち着かない時期、数少ない日々の楽しみのひとつだったっけ。最後の最後まで感謝しっぱなし。
そんな感謝の気持ちをこめて、ストリーミングのプレイリスト、作ってみました。ニールさんの録音は膨大で。現在ストリーミングされていない名曲も実はたくさんある。なもんで、けっして満足のいくセレクションではないのだけれど。とりあえず今ストリーミングされている限られた曲のうち、1970年代以降の楽曲でぼくが好きなものを12曲、ピックアップしてみました。
4月のCRTでは、そのあたりのストリーミングされていない楽曲などもふんだんに盛り込みながら追悼特集をしたいなと思っています。詳細決まりましたら、またお知らせします。提供曲のプレイリストは、以前、こちらで選曲したことがありました。
ニールさん。どうぞ、安らかに。あなたの紡いだメロディは永遠です。ありがとう。
Stairway to Heaven…RIP Neil Sedaka
- Laughter In The Rain (1974)
- Alone at Last (1977)
- What Have They Done to the Moon (1971)
- Summertime Madness (1981)
- God Bless Joanna (1971)
- Letting Go (1980)
- Solitaire (1972)
- Born to Be Bad (1978)
- Should've Never Let You Go (feat. Dara Sedaka) (1980)
- Betty Grable (1974)
- I Do It For Applause (2016)
- Breaking Up Is Hard to Do (Slow Version) (1976)


