Disc Review

Looking For The Magic: American Power Pop In The Seventies / Various Artists (Grapefruits/Cherry Red)

ルッキング・フォー・ザ・マジック:アメリカン・パワー・ポップ・イン・ザ・セヴンティーズ/ヴァリアス・アーティスツ

例年、年が明けたばかりの本ブログ、まだ新年のリリースが出揃っていないこともあって、前の年に出て紹介しそびれていたボックスセットみたいなものを取り上げることが多い。これとかこれとかこれとか。

今年もそんな感じ。去年の11月、チェリー・レッド傘下のグレイプフルーツが編纂したCD3枚組コンピレーション・ボックス、紹介しておきましょう。国内流通盤が今月末に出るというリリース・ニュースがあったので、そのときに取り上げようかと思っていたものの。どうやらそれが5月上旬に延びてしまったみたいで。

でも、輸入盤は出ているのでピックアップしちゃいます。グレイプフルーツお得意のパワー・ポップ・コンピ。“アメリカン・パワー・ポップ・イン・ザ・セヴンティーズ”という副題通り、1970年代の米国産パワー・ポップをあれこれ詰め込んだ3枚組だ。

もともとパワー・ポップというジャンルは音楽フォーマット的に特定しづらいというか。これ! という定義があるわけじゃない。以前、パワー・ポップものを集めたプレイリストを公開させていただいたときも書いたことだけれど。そもそもジャンルなんだかどうだか。シティ・ポップだとかソフト・ロックだとか渋谷系だとか、ああいうのと同じ、わりと雰囲気ものの括り。

なもんで。聞く者それぞれ、これこそパワー・ポップだとか、いや、これはパワー・ポップじゃねぇよとか、いろいろ。今日紹介するコンピもそのあたりかなり拡大解釈しているようで。

ラズベリーズ〜エリック・カルメン、ビッグ・スター〜アレックス・チルトン、チープ・トリック、ラモーンズ、ナック、ムーン・マーティン、ルビヌーズ、フレイミン・グルーヴィーズ、ドワイト・トウィリー、フォトメイカー、ヴァン・ドゥーレン、シューズ、20/20といった定番ものはもちろん、トッド・ラングレン〜ユートピア、ブレッド、ニルス・ロフグレン〜グリン、ティム・ムーア、アンドリュー・ゴールド、NRBQ、カーズ、ブルー・オイスター・カルトなどまで視野に入れた拡大解釈版パワー・ポップ集。地域的にも拡大解釈がなされていて、英国生まれのバンドながら米LAに拠点を移して再始動した時期のバッドフィンガーの曲が入っていたり。冒頭を飾るMC5をはじめ、ペイリー・ブラザーズとか、ジョナサン・リッチマンとか、スパークスとか、テレヴィジョンとかの収録もナイス。その辺の緩め、かつマニアックなテイストがなんだか楽しい。

日々、無力感に苛まれるばかりの年明けではありますが。そんな憂鬱を吹き飛ばすには1970年代パワー・ポップ。間違いないです。お試しください。

サブスクのストリーミングはされていないのだけれど、CD3枚に詰め込まれた全72曲中、できる限りの曲を集めてプレイリストを公開している方がちらほら(笑)。涙ぐましいです。いちおうリンクしときますね。

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