Disc Review

Signs / Tedeschi Trucks Band (Fantasy/Concord)

投稿日:2019.02.15 更新日:

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サインズ/テデスキ・トラックス・バンド

2017年の1月にブッチ・トラックスが亡くなって、5月にグレッグ・オールマンが亡くなって。少しずつ少しずつメンバーを入れ替えながら続いてきたオールマン・ブラザーズ・バンドの歴史もついに終焉を迎えてしまったわけだけれど。それだけに、この人たちにかかる期待は大きい。“あの”感触をしっかり受け継いでほしい、と。若い世代がどう思っているかは別として。お古い世代のロック・ファンはたぶん誰もが熱くこの人たちに期待しているに違いないのだ。そう。現在最強の夫婦ロック・グループ、テデスキ・トラックス・バンド。

中心メンバーのひとり、デレク・トラックスがブッチの甥にあたり、実際に一時オールマンズのメンバーとして活躍していたから…という脈絡ではあるのだけれど。とにかく、夫デレクが奏でるスライド・ギターのトーンも含む“あの”音の肌触り。強力なリズム隊が繰り出す“あの”グルーヴ。姉さん女房のスーザン・テデスキの歌声に漂う“あの”乾いたブルース感覚。それらは間違いなく永遠の文化遺産だ。それを雄々しく正統に継承する者たち。応援してます、心から。

そういえば数年前、ニューヨークのビーコン・シアターで彼らを見た。オールマン・ブラザーズ・バンドの常打ち小屋としてもおなじみだったビーコンでの公演だけに、開演前から場内は大盛り上がり。彼らの来日公演に詰めかける客層よりも一世代は上の、間違いなくオールマン・ブラザーズ・バンド全盛期を支えたと思しき高齢ファンたちが多数、エスカレーターなどない3階席のてっぺんまでがしがし階段を上って、妙な匂いがもくもく漂う中、大歓声を上げまくる様子にぶっとんだ。

下手したら親世代どころか祖父・祖母世代とも思える熱狂的ファンの勢いに煽られ、バンドの演奏も凄まじく熱かった。デレク・トラックスのギター・ソロもとてつもなく長く、ごきげんだった。今年6月にまた来日してくれるようで、本当に楽しみ。さっそくチケット買っちゃったもんねー! と、そんな期待感に胸躍らせている中、待望の新作アルバムが登場した。こいつを引っさげての大規模な全米ツアーもすでにスタート。6月の来日は、8月まで続くその全米ツアーの狭間に行なわれる感じのスケジュールみたい。

2016年、ファンタジー・レコードへの移籍第一弾『レット・ミー・ゲット・バイ』以来。今回もデレクとスーザン夫妻がフロリダ州ジャクソンヴィルに持っている自宅スタジオ“スワンプ・ラーガ”で、ライヴさながらにメンバー全員で“せーの!”でアナログ・マルチ・テープへの同時録音。プロデュースはデレクと、ジム・スコットと、スワンプ・ラーガのエンジニアのボビー・ティス。ウォーレン・ヘインズ、オリヴァー・ウッド、ドイル・ブラムホールⅡ、マーク・キノーネスらが客演。

相変わらずファンキーなもの、ドラマチックなもの、泣けるもの…さまざまなスタイルの名演が詰まっているのだけれど。今回は特に、泣けるやつがいい仕上がり。先述したオールマンズの大先輩に加え、レオン・ラッセルとか、偉大なメンターたちとの別れが影響しているのかも。けっして目新しい試みがなされているわけではなく、デルタ・ブルースと、サザン・ソウルと、60年代ロックと、70年代ファンクとを有機的に融合した極上の躍動が本作にも渦巻いているわけだが。この音を聞いて、古いとか評する人が万が一いるのだとしたら、そういう人はきっとご飯と味噌汁食っても、古い味だとか言いがかりをつけるんだろうな、と思う。

これ聞きながら、わくわく6月を待ちます!

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