Disc Review

Tea For The Tillerman: The 50th Anniversary Box Set / Cat Stevens (UMC/Island)

父と子:50周年記念ボックスセット/キャット・スティーヴンス

松が開けたってことで。2021年、初のブログ更新です。今年も平日は毎日更新を基本に、たらたらと気張らずやっていくつもりです。よろしくお願いします。

ということで、申し訳ない。しばし更新が空いたので、ちょっと長くなりますが、まずは近いところの告知をもろもろ。

まず10日(日)は佐橋佳幸くんと毎度、目黒のブルース・アレイ・ジャパンから有料配信でお届けしている『ケンタ&サハシの“オタクの御託”承ります』。今回は新春特別企画。これまで5回の配信からおいしいところをピックアップした映像を眺めながら、サハシとぼくとであーだこーだ振り返る総集編です。7月に根岸“ネギ坊”孝旨(ベース)を迎えてお届けした回から、8月の三沢またろう、9月の山本拓夫、10月の難波弘之、そして12月の高田漣…。それぞれベース、パーカッション、サックス、ヴィンテージ・シンセ、スティール・ギターを深掘りした回を一気にダイジェストにしてお届けする予定です。(※追記:その後、いろいろ打ち合わせがあって、総集編を2回に分けることになりました。10日は1回目のネギ坊から、またろう、拓夫くんまでの3回分を濃密に振り返ります。その後、日を改めて難波さんと漣くんの回を振り返る、と。そういう流れになりました。でも、単なる総集編ではなく、サハシがスペシャルな生演奏も披露してくれる予定。過去の配信を見逃した方も、もう見ちゃってる人も、お楽しみに!)興味ある方はこちらでチケット、ゲットしてみてください。

翌11日(月)は『フラッシュ金子のコマラジ・マンデー・スペシャル』におじゃまします。20時から。テーマはざっくり“昭和ジャズ”って言われてるんだけど…。どんなことになるのかな(笑)。何にしても、おいしい曲、用意してまいりますよ。コマラジはパソコンやスマホでも聞けます。聞き方はこちらを参照してください。

あと、以前もこのエントリーでお知らせしましたが、16日からは早稲田大学エクステンションセンター『英米ロック史〜ロックンロールの創始者たち』の第11回。2月13日まで、毎週土曜日の13時〜14時半の全5回、Zoomでのリモート講義です。今回取り上げる顔ぶれは、ブライアン・ウィルソン、ジェイムス・テイラー、細野晴臣、“ブリル・ビルディング”系ソングライターたち、そしてエルヴィス・プレスリー(パート3)。詳細は大学のホームページでチェックしてください。

あ、それから、エルヴィスといえば。昨年の8月16日の命日に、海外ドラマ専門チャンネルAXNでエルヴィス特集がオンエアされて。けっこう好評だったらしく。生誕月であるこの1月にも改めて特集が組まれます。去年の8月にオンエアされた『'68 カムバック・スペシャル』、『アロハ・フロム・ハワイ』、『オールスター・トリビュート』『ザ・サーチャー~キング・オブ・ロックの魂の記録~』が今日、1月8日の深夜に再放送されるのを皮切りに、明日、1月9日(土)に『監獄ロック』と『THIS IS ELVIS』、1月16日(土)に『ラスベガス万才』(アン・マーグレット最高!)と『エルヴィス・オン・ステージ〜スペシャル・エディション』を楽しめます。AXNのホームページで詳細チェックしてみてください。楽しみだー。


と、もろもろお知らせを完了したところで、いつものようにディスク紹介です。とはいえ、平日更新ってことにしているので、今日書いたらまた数日間お休み(笑)。本格再開は来週からってことにして。今朝はちょっと去年の積み残しを。去年暮れに出て、紹介しそびれていたブツを取り上げておきます。

キャット・スティーヴンス。1970年代、英国を本拠に活躍したシンガー・ソングライター。1977年にイスラム教に改宗し“ユスフ”と名を変えて長いこと音楽業界を離れていたけれど、21世紀に入ってカムバック。去年は初期の名盤『父と子(Tea for the Tillerman)』の発売50周年記念として、現代的解釈で再構築した新版『父と子2(Tea for the Tillerman²)』のリリースもあった。

そんな“元スティーヴンス”さん、その『父と子』と、ひとつ前の『白いバラ(Mona Bone Jakon)』と、1970年にリリースされた2作の傑作アルバムの50周年記念エディションというやつが去年暮れに出ておりました。日本でもリリースされたのは『白いバラ<50周年記念エディション>』(Amazon / Tower)と『父と子<50周年記念エディション>』(Amazon / Tower)という、それぞれ2枚組エディション。どちらもディスク1にオリジナル・アルバムの最新リマスター、ディスク2にデモやライヴ音源を収めたものだ。

それ以外に海外ではそれぞれ1CD版、アナログLP版、さらに超豪華なスーパー・デラックス・ボックスセットも出た。で、この箱、まじ、すごいっすよ。どうせなら、これ行っちゃっときたいところ。バカ高いけど…(笑)。

『白いバラ』のほうがオリジナル・アルバムの最新リマスター(CD1)+その2020年リミックス(CD2)+デモ集(CD3)+1970〜71年のライヴ(CD4)+ミュージック・ビデオとライヴ映像とハイレゾ音源(ブルーレイ)+2020年リミックスのオリジナル・アルバム(アナログLP)+1970年のライヴ(片面にエッチングを施したアナログLP)という内容。

『父と子』のほうは、オリジナル・アルバムの最新リマスター(CD1)+その2020年リミックス(CD2)+去年リメイクされた新版『父と子2』(CD3)+エルトン・ジョンとのデュエットなども含むデモ/アウトテイク/別テイク集(CD4)+1970〜71年のライヴ集(CD5)+ミュージック・ビデオとライヴ映像およびハイレゾ音源集(ブルーレイ)+2020年リミックスのオリジナル・アルバム(アナログLP)+1970年のLAトゥルバドールでのライヴ(アナログLP)。

ティーン・ポップ・スターとして成功して、でも病魔に冒されたり、業界のもろもろに疑問を感じたりする中、菜食主義に転向し、精神世界に分け入り…。そして1970年、より内省的でフォーキーなシンガー・ソングライターとして再始動したころのみずみずしい魅力を存分に、これでもかと、堪能できる。

ぼくが最初に手に入れたこの人のアルバムは日本のキング・レコードから出ていた『父と子』で。なので、今回のジャケ写は『父と子』のほうにしちゃったわけですが(笑)。日常のよくありそうな風景の中から深い内的/霊的なメッセージを読み取る作風みたいなのにも惹かれたけれど。それ以上に、曲のコード進行。これにしびれた。まあ、当時ぼくは中学生で。まだギターとか本格的に始める前の時期だったから、漠然とではあったのだけれど。

たとえば「ワイルド・ワールド」って曲。あれの、Am→D7→G→Cmaj7→Fmaj7→Dm7→E7 というコード進行にやられた。Amで始まって、キーはCかと思っていると、次、D7に移ったところで、あ、これ、キーはGだったのかなって感じになって。でも、次にCからFへと展開してCキー感が強まって。でも、そのままDmからEを経て、またAmへ。GのキーとCのキーをゆる〜っと横滑りするようにしながら移ろっていく感じが、もう、なんとも心地よくって。E7がCキーのIIIセヴンスなのか、GキーのVIセヴンスなのか、揺らぐ感じもたまらなかった。

翌年に大ヒットした「雨にぬれた朝(Morning Has Broken)」でも、イントロからいきなり D→G→A→F#→Bm→G7→C と動いてDのキーからCのキーへ。その後、間奏のところで C→F→G→E→Am→F#→Bm→G→D という進行で、今度はCのキーからDのキーへ。スコーンッ!と一発で転調するのではなく、じわじわ別キーへと雪崩れ込む感じ。

ぼくにとってキャット・スティーヴンスのいちばんの魅力はそういうとこだったりする。そのあたりの魅力が今回の豪勢なスーパー・デラックス・エディションでも存分に味わえて、泣けてきた。とともに、「雨にぬれた朝」を収録した1971年の大傑作アルバム『ティーザー・アンド・ザ・ファイアキャット』の50周年記念スペシャル・エディションも、今年出てくれることを心から願っております。

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