Disc Review

Folkocracy / Rufus Wainwright (BMG)

フォークオクラシー/ルーファス・ウェインライト

父親がラウドン・ウェインライトIII。母親がケイト&アナ・マクギャリグルのケイトさん。ということで、血筋としてはフォーク〜カントリー系のルーファス・ウェインライト。でも、ジュディ・ガーランドへの愛を全開にしたライヴをやってみたり、映画音楽的なアプローチを展開したり、バロック・ポップ的な名曲をたくさん生み出したり。自身の音楽はそっち系だったりするわけですが。

そんなルーファスがある意味、自らのルーツであるはずのフォーク系の名曲を、曲ごとに多彩なゲストを迎えつつ“リイマジン”した1枚が出ました。それが本作。カタカナでどう表記したらいいのかよくわからないけど(笑)、『フォーコクラシー』? 『フォークオクラシー』? アクセントは“オ”に置きたい感じなので、今回は『フォークオクラシー』にしておこうかな。

でも、さすがルーファス。選曲、ゲストの人選、アレンジ、すべて一筋縄にはいきません。ローレル・キャニオン的なフォーク・ロックものあり、コンテンポラリーなものあり、トラディショナルあり。結果、ルーファスならではのフォークというか、結局は思いきりこの人っぽいどこかシアトリカルなバロック・ポップというか、そういうものに仕上がっているところが素晴らしい。

収録曲のオリジナル・アーティストと今回の客演者をざっくりチェックしていくと——

「アローン」(イーワン・マッコール&ペギー・シーガー)をマディソン・カニンガムと、「ヘッディング・フォー・ホーム」(ペギー・シーガー)をジョン・リジェンドと、「朝日をもとめて(Twelve-Thirty)」(ママス&パパス)をスザンナ・ホフス、クリス・スティルス、シェリル・クロウの3人と、「ハーヴェスト」(ニール・ヤング)をアンドリュー・バード&クリス・スティルスと、「ハイ・オン・ア・ロッキー・レッジ」(ムーンドッグ)をデヴィッド・バーンと、「ブラック・ゴールド」(ヴァン・ダイク・パークス)を作者ヴァン・ダイクと、そしてルーファス自身のオリジナル曲、2007年の『リリース・ザ・スターズ』収録の「ゴーイング・トゥ・ア・タウン」をアノーニと。

トラディショナル系のものとしては、「ダウン・イン・ザ・ウィロウ・ガーデン」(チャーリー・モンローが有名にしたアパラチアン・マーダー・バラッド)をブランディ・カーライルと、「カウラナ・ナ・プア」(19世紀生まれのハワイアン・プロテスト・フォーク)をニコール・シャージンガーと、「ハッシュ・リトル・ベイビー」を妹のマーサ・ウェインライトと義妹ルーシー・ウェインライト・ローチェと、「コットン・アイド・ジョー」をチャカ・カーンと、「ワイルド・マウンテン・タイム」を叔母さんにあたるアナ・マクギャリグルと従兄弟にあたるリリー・ランケン母娘、マーサ・ウェインライトとルーシー・ウェインライト・ローチェ姉妹、そして親戚同様のチャイム・タネンバウムと。

で、必殺のトラディショナル「シェナンドー」、コーラスで聞かせるシューベルトの歌曲「夜と夢(Nacht und Träume)」、アイルランド民謡「アーサー・マクブライド」をルーファスが単独で——というラインアップ。この種のアメリカーナ系の楽曲を取り上げることで、逆説的にルーファスの持ち味が浮かび上がってくる、実に興味深い1枚に仕上がっています。さすがだー。

デヴィッド・バーンのアルバム『グロウン・バックワーズ』に収録されていたビゼーの「神殿の奥深く(Au fond du temple saint)」以来となるバーンとの感動的な共演とか、ルーファスのデビュー・アルバムで2曲プロデュースを手がけていたヴァン・ダイク・パークスとの再タッグとか、2004年の『ウォント・トゥー』収録の「オールド・ホアーズ・ダイエット」以来のアノーニとの共演とか、スティーヴン・スティルスの息子であるクリス・スティルスを交えたコーラスで綴るニール・ヤング曲とか、ママス&パパスの編成に倣ってスザンナ・ホフス、シェリル・クロウ、クリス・スティルス、そしてルーファスの男女2人ずつの混声でカヴァーしたジョン・フィリップス作品とか、聞きどころも多し。

何より、妹たち、おばさん、従兄弟と歌ったラスト曲「ワイルド・マウンテン・タイム」がよいです。ここでチャイム・タネンバウムが演奏しているバンジョーは故ケイト・マクギャリグルのものなのだとか。ルーツへの深い感謝の念のようなものがしみじみ伝わってきます。しみます。

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