Disc Review

Ridin’ / Eric Bibb (Repute Records AB)

ライディン/エリック・ビブ

現在71歳。1972年にアルバム・デビューを飾ってからすでに半世紀。ソロ作、コラボ作、ライヴ盤など含め、これが実に47作目の新作アルバムだとか。2021年に出た前作『ディア・アメリカ』は最高傑作との評価も高く、さあ、次どうするのかなと楽しみにしていたら、まったく力を緩めることなく、揺るがぬ自信とさすがの貫禄で手応えたっぷりの1枚を作り上げてくれた。

プロデューサーは今回も長年のコラボレーターであり、優れたマルチ・インストゥルメンタリスト、グレン・スコット。ビブさんとスコットさんは19世紀のアメリカの画家、イーストマン・ジョンソンが1862年に描いた絵画『自由への騎乗〜奴隷の逃亡(A Ride for Liberty)』に触発されてこのアルバムを作り上げたという。この絵は南北戦争中、奴隷の身から逃れるため馬に乗って逃亡する黒人一家の姿を描いたもので。アルバム・タイトルも、ジャケットも、その絵をちょっと模した感じになっている。20世紀をまるまる隔て、21世紀になっても根本的には何ひとつ変わっていないその問題をいかにこの世界から一掃するか。そんな現在進行形の問いかけがアルバム全体を貫いているわけだ。

というわけで、まあ、エリック・ビブという人はもちろんブルースの脈絡で語られることが多い人なわけですが、タイトルからして問題意識ばりばりだった前作以上に本作もストレート・ブルースだけでなく、ゴスペルあり、カントリー・ソウル系あり、フォークあり…。ニーナ・シモンも取り上げていたことでも知られるレス・バクスターの「シナー・マン」とか、ご存じヘディ・ウェスト作の名作フォーク「500マイル」とかのカヴァーも交えつつ、虐げられてきた人々が様々な時代の中で歌い継いできた幅広い音楽性に柔軟な姿勢でアプローチしてみせている。さすがMJQのジョン・ルイスの甥っ子で、ピート・シーガーとも昔から家族ぐるみの付き合いだったビブさんだ。そういう意味では極上のアメリカーナ・アルバムといった感じか。

タジ・マハール、ジョンテイヴィアス・ウィリス、ラッセル・マローン、アマール・サンディ、アビブ・コワテら興味深い顔ぶれが曲によって客演。中でも、ハリソン・ケネディを迎えた「コール・ミー・バイ・マイ・ネーム」では、“俺はあんたたちのために鉄道を作った。綿を運んだ。サトウキビを刈った。キューバで戦った。パナマで運河を掘った。黄熱病で死にそうになった。1917年にアンクル・サムに呼ばれてこの土地にやってきた。変わってきたというやつもいるが、何も変わっちゃいない。俺はひとりの人間だ。あんたのボーイじゃない。いつか俺をちゃんと名前で呼ぶ日がやってくる…”と、強烈にメッセージしていて。刺さる。

2021年、エド・エプスタインとの連名でリリースしたデュオ・インスト作『バリトンズ』も心の深いところに響く静かな感動を届けてくれた1枚だったけれど。今回の真っ向からの熱い歌ものメッセージもまた感動的。ラストの短いインスト「チャーチ・ベルズ」の余韻も泣けます。

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