Disc Review

Duets: An American Classic / Tony Bennett (RPM/Columbia)

デュエッツ〜アン・アメリカン・クラシック/トニー・ベネット

80歳だそうで。すごいな。トニー・ベネット。

シナトラとも、ディノとも、かといってマット・デニスとか、メル・トーメとかとも違う。独自の節回しが本当にごきげんで。痛快で。切なくて。この人が過去残した膨大なオリジナル・アルバム群のうち未入手分を、ここ10年くらい、今さらながら必死に集め続けてます。シナトラみたいに、体系的にほぼ全音源再発されているわけでもないので、細かいところでけっこう苦戦してますが。

でも、新たに手に入れる盤手に入れる盤、すべてが素晴らしい。この人の豊かな歌心にはやられっぱなしだ。もちろん50~60年代の名唱の数々というのが基本だけれど。近年のものも全部よくて。一昨年の暮れにリリースされて今年グラミーを獲った『アート・オヴ・ロマンス』も最高だった。デイヴ・フリシュバーグ作の「リトル・ディッド・アイ・ドリーム」とか、もう何度繰り返して聞いたことか。

MTVアンプラグドに出たり、k.d.ラングと一緒にデュエット・アルバムを出したり。コンテンポラリーなシーンとも意識的に関わりを持っているように見えるベネットさんだが。別に若向きに自分のスタイルを変えるわけではなく。長年かけてしっかり確立した自らのたたずまいを崩すことなく、しかしどこにでも出ていく、みたいな。そういう堂々たる姿勢に頭が下がる。

で、この人、以前にもいろいろな同輩・後輩と組んだデュエット・アルバムを出しているのだが。またまた出ました。強力なデュエット・アルバム。最近はレイ・チャールズにしても、フランク・シナトラにしても、デュエット盤を出して他界…みたいな傾向があるので。なんかやだなぁ、という感、なきにしてもあらずですが。でも、仕上がりを聞いたら、まだまだベネットさん、元気いっぱい。もちろん全盛期に比べれば、もろもろ弱くなったところもあるものの。多彩な共演者にまったく負けない、見事な歌声で今回も楽しませてくれる。

ディクシー・チックス、バーブラ・ストライザンド、ジェームス・テイラー、フアネス、ビリー・ジョエル、エルトン・ジョン、セリーヌ・ディオン、ダイアナ・クラール、エルヴィス・コステロ、k.d.ラング、マイケル・ブーブレ、スティング、ジョン・レジェンド、ジョージ・マイケルなどなど、デュエット・パートナーは多種多彩。バーブラとかセリーヌとかダイアナ・クラールとかブーブレとか、わりと同業っぽい人よりも、ビリーやエルトンとのほうが実は立ち位置も近く、相性がいい感じ。

選曲はベネットの代表的持ち歌ばかり。競作仲間のスティーヴィー・ワンダーと「フォー・ワンス・イン・マイ・ライフ」をスリリングに掛け合ったり、ポール・マッカートニーと「ザ・ヴェリー・ソート・オヴ・ユー」をしっとり仕上げたり、「コールド・コールド・ハート」をカントリーのティム・マッグロウとデュエットしたり。あと、『SMiLE』でもカヴァーされていたことでおなじみの(笑)「アイ・ウォナ・ビー・アラウンド」をボノと歌っていて。まずベネットが先発して、ボノがそのあとを引き継いで、2番に入るところでまたベネットが出てきて。このベネットのフレージングが最高。ボノも思わずバックで「ヒューッ!」と声を上げちゃってたりして。盛り上がる。

この盤、国内盤にはアジアのスター、ワン・リーホンとのデュエット曲がボーナス追加されているのだけれど。実はもっとすごいボーナス追加盤があって。アメリカのターゲットで店頭販売のみで売られている盤には、今年のマイケル・ブーブレ、00年のダイアナ・クラール、63年のジュディ・ガーランド、そして88年のシナトラ、それぞれとのデュエット曲が入ってる。ブーブレ以外はライヴ音源。全23曲入りだ。こっちのほうが断然いいっすね。20分ほどのメイキングDVD付きの2枚組もあり。ターゲットの店頭販売のみなので、日本で入手するのはなかなか…なんて。今どきそんなこっちゃ誰も悩まないっすね。eBayとかあるからね。便利な世の中っすね。ぼくもeBayで手に入れました。

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