Disc Review

Nashville / Solomon Burke (Shout! Factory)

ナッシュヴィル/ソロモン・バーク

誰でもいいんだけど。たとえばベックとか、ブルース・スプリングスティーンとか、ボブ・ディランとか。そういう人たちがアルバムで自らのカントリー・ルーツを明らかにしたりすると、いまだ日本では判断停止状態に陥るファンが多いみたいで。ほんと、いつまでたっても日本ではカントリーって音楽が誤解されたままだなぁ、と泣けてくる。

ロック・ファンですらそうなんだから、ソウル/R&Bファンともなると、もうカントリーなんてゴミ扱いだったりして。くそー。チミたち、いつか泣くぞ、まじで。

よく、ロックンロールは黒人のブルースと白人のカントリーとの融合…と大ざっぱに説明される。いまだにそう信じている不勉強な評論家さんたちも多いみたいだし。ぼく自身、ずいぶんと長い間、その程度の乱暴な説明で十分に納得してきたものだけれど。そうした大ざっぱな表現に感じられる“それまで互いに相容れなかった両極の音楽要素が一気に合体した”といったイメージは、どうやら事実とはだいぶ違うらしいってことが、いろいろな音楽に接したり、歴史をひもといたりしているうちにわかってきた。

人種差別が根強かった当時のアメリカの音楽市場的にはそういう流れでほぼ当たっていそうだけど。それはあくまでも商売的な話。音楽的に振り返れば、黒人のブルースなりR&Bが発展の段階ですでに白人音楽/白人市場の方法論を、時には否応なく、時には能動的に受け入れてきたのと同様、白人のカントリーもまた早い段階から様々な黒人音楽と対話を密に繰り返しつつ形作られてきたことは明白なわけで。

まあ、いいや。この辺のことを詳しく書き出すといつまでも終わらない。そのうちCRTかなんかで話すことにしますが(笑)。ぼくなんかがくどくど話さなくても、優れたカントリーと優れたロックンロールと優れたR&Bと優れたブルースには何の垣根もないってことを言わずもがなで思い知らせてくれる1枚が出た。R&Bの超ベテラン、ソロモン・バークの新作。その名もずばり『ナッシュヴィル』だ。

02年の復活作『ドント・ギヴ・アップ・オン・ミー』や去年の『メイク・ドゥ・ウィズ・ホワット・ユー・ガット』で、ボブ・ディラン、トム・ウェイツ、ヴァン・モリソン、エルヴィス・コステロ、ブライアン・ウィルソン、ニック・ロウ、ローリング・ストーンズ、ザ・バンド、ドクター・ジョンといったロック系アーティストの楽曲に自然体でアプローチして、素晴らしい歌声を聞かせてくれたバークさんですが。今回はその勢いでカントリーに真っ向からアプローチだ。

彼の場合、もともと60年代からゴスペル、ポップ、そしてカントリーの要素をR&Bシーンに持ち込んだ功績が評価されてきたわけだけれど。つまり、66歳を迎えた今もなお、変わらぬ姿勢でコンテンポラリーなシーンに切り込み続けているということだ。かっこいい。

バディ・ミラーがプロデュース。エミルー・ハリス、ドリー・パートン、パティ・グリフィン、ジリアン・ウェルチらがデュエット・パートナーとして参加。ギャリー・タレント、アル・パーキンス、フィル・マデイラ、バイロン・ハウス、サム・ブッシュら名手がバックアップ。ミラー、パートン、ウェルチ、グリフィンら参加アーティストの手になる楽曲のほか、トム・T・ホール、ドン・ウィリアムス、ジョージ・ジョーンズらカントリー界のベテランの作品、ブルース・スプリングスティーン、ジム・ロウダーデイル、ポール・ケナリー、ショーン・エイモスらルーツ・ロック寄りのシンガー・ソングライターたちによる楽曲など、新旧バランスよく配されている。

アルバムのラスト、タミー・ワイネットでおなじみの切ないバラード「ティル・アイ・ゲット・イット・ライト」を、ほぼ原曲に忠実なアレンジで歌っていて。これが特にしみる。しゃがれた、ソウルフルな低音ヴォーカルに、たとえばウェイロン・ジェニングズとかジョニー・キャッシュとかの姿が二重映しになる。R&Bとカントリー。それぞれの優れたパフォーマーどうしの間には、ほんと、何の違いもないのだなということを思い知らされる。胸にきた。

カントリーとソウルの融合というと、まず頭に浮かぶのがレイ・チャールズかな。彼の場合は壮麗なストリングスやスウィンギーなビッグ・バンドをバックにカントリーの名曲群を歌って、カントリーともR&Bとも違う、見事ブルージーな音楽を作り上げてみせたわけだけれど。ソロモン・バークはそれとまた別の、よりストレートな、アーシーな、生々しいやり方で、聞き手のつまらない先入観がいつの間にか作り上げてしまった音楽の垣根をぶちこわしてくれる。

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