Disc Review

Angel Face / Stephen Sanchez (Mercury/Republic)

エンジェル・フェイス/スティーヴン・サンチェス

スティーヴン・サンチェスくん。米カリフォルニア州エルドラド・ヒルズ出身の弱冠20歳。現在はテネシー州ナッシュヴィルを本拠に活動するシンガー・ソングライターだ。

一昨年、シングル「アンティル・アイ・ファウンド・ユー」が突然全米チャートの23位にランクして。なんだか今どきとは思えないノルスルジックな三連曲で。こういう若者もいるんだなぁ…と大いに喜んだものですが。

もともとは2020年、17歳のころ、TikTokにケイジ・ザ・エレファントの「シガレット・デイドリームズ」のカヴァーを投稿して注目を集めてた人だとか。それをきっかけにジェレミー・ザッカーのプロデュースの下、シングル「レディ・バイ・ザ・シー」でデビュー。以降、2021年に『ホワット・ワズ、ノット・ナウ』、2022年に『イージー・オン・マイ・アイズ』とミニ・アルバムをリリースしながら、じわじわ知名度を高めていって。

今年の夏にはグラストンベリーに出て、エルトン・ジョンと「アンティル・アイ・ファウンド・ユー」をデュエットしたり、ジミー・ファロンのレイト・ショーに出演したり。とても今どきの子とは思えぬナチュラルなソングライティング・センスと歌心を持っているもんで、エヴァーグリーンものが大好きなぼくのようなおじさんリスナーとしても好感を持って接してきたのだけれど。

そんなスティーヴンくんの初フル・アルバム『エンジェル・フェイス』。出ました。なんと今回、あのレイヴェイちゃんが1曲客演しているってことで思いきり期待して聞いてみました。でもって、ぐっときました。感動。スティーヴンくん、歌唱面でもソングライティング面でも一気に覚醒した?

レイヴェイとはまた違う意味で、ノスタルジックかつエヴァーグリーンなソングライティング・センスがどの曲でも炸裂していて。うれしい。レイヴェイはグレイト・アメリカン・ソングブック方面とかボサ・ノヴァっぽいジャズ方面にじんわり向かっているわけだけれど、こちらは真っ向からアメリカン・オールディーズ方面。

もちろん、シンプルにロックンロールの原型へとまっすぐアプローチした感じの曲もあるにはあるけれど、基本的にはもうちょい細かいところへと分け入っていて。そっちがメイン。そっちがいい。初期のハリー・ニルソンやランディ・ニューマンにも通じるようなロックンロール以前のドリーミーな曲っぽいテイストがあったり、エルヴィス・プレスリーが1960年代、ちょっと力を抜いて歌ってみせていたような映画のサントラ曲っぽいものがあったり、リッキー・ネルソンら往年のティーン・アイドルたちのキュートなロマンチシズムをよみがえらせたような曲があったり、ロイ・オービソンの朗々たる世界観を想起させる曲があったり、スウィート・ソウル黄金期っぽいファルセットが舞う曲があったり…。

アルバム全体は“ザ・トゥルバドール・サンチェス”なる、まあ、自身を投影した架空のキャラクターと、彼が想いを寄せるイヴァンジェリンとの悲恋を描いていて。ちなみに、この吟遊詩人さんが1950年代に放った大ヒット曲が「アンティル・アイ・ファウンド・ユー」だという設定(なので、今回もまた「アンティル…」が収録されています)。でも、そんな成功も束の間。ギャングのボスの女であるイヴァンジェリンと恋に落ちてしまい、早すぎる死を迎える…みたいな。

こうした物語の設定とか展開も含め、すべてがなんだかひどく古めかしく、でもそれゆえに今の時代、妙に心惹かれる1枚って感じです。CDもあるみたいだけど、Amazonとか、アナログしか扱ってないみたいな。そんな感じもまた今どきなのかも。ぼくはとりあえずハイレゾでゲットしましたー。

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