Disc Review

Do It Again! The Songs of Brian Wilson / Various Artists (Ace Records)

ドゥ・イット・アゲイン!〜ザ・ソングズ・オヴ・ブライアン・ウィルソン/ヴァリアス・アーティスツ

英エイス・レコードが編纂/リリースし続けている“ソングライター・シリーズ”。当初はジェリー・リーバー&マイク・ストーラー、ドク・ポウマス&モート・シューマン、キャロル・キング&ジェリー・ゴフィン、エリー・グリニッチ&ジェフ・バリー、バリー・マン&シンシア・ワイル、ニール・セダカ&ハワード・グリーンフィールドなど、いかにもプロのソングライター然とした人たちの作品集という感じのコンピ・シリーズとしてスタートして。やがて、デイヴ・バーソロミューとか、アラン・トゥーサンとか、ジャック・ニッチとか、プロデューサー色の濃い人たちの作品集も出すようになって。

その後、ボ・ディドリーとか、チャック・ベリーとか、ローラ・ニーロとか、ランディ・ニューマンとか、ハリー・ニルソンとか、ルー・リードとか、自らパフォーマーとしても活躍してきた人たちの作品集も出るようになって。ここでも過去、レナード・コーエンとかポール・サイモンの作品集を取り上げたことがあったっけ。

と、そんな“ソングライター・シリーズ”にブライアン・ウィルソン作品集が加わったのが2015年のことだ。『ヒア・トゥデイ!〜ソングズ・オブ・ブライアン・ウィルソン』というタイトルで、ビーチ・ボーイズ時代の曲、ソロの曲、ソングライターとして他アーティストに提供した曲などをコンパイル。提供曲は基本、提供したアーティストのオリジナル・ヴァージョンで収録されていたけれど、それ以外は興味深いカヴァー・ヴァージョンがずらり。

ダリアン・サハナジャの「ドゥ・ユー・ハヴ・エニー・リグレッツ」、トーケンズの「ドント・ウォリー・ベイビー」、ブルース&テリーの「ヘルプ・ミー・ロンダ」、キャステルズの「アイ・ドゥ」、ジャン&ディーンの「ニュー・ガール・イン・スクール」、スリー・ドッグ・ナイトの母体となったレッドウッドの「タイム・トゥ・ゲット・アローン」などを経て、ボビー・ヴィー、ベティ・エヴェレット、カーメン・マクレエ、ニック・デカロ、ルイ・フィリップ、カースティ・マッコールらによる『ペット・サウンズ』収録曲のカヴァーへ。エイス・レコードならでは、こだわりのキュレーション感覚が存分に発揮された仕上がりの作品集だったのだけれど。

続編、出ました。それが本作『ドゥ・イット・アゲイン!〜ザ・ソングズ・オヴ・ブライアン・ウィルソン』。かつて2003年にエイスが“プロデューサー・シリーズ”の一環として編纂した『ペット・プロジェクツ〜ザ・ブライアン・ウィルソン・プロダクションズ』も加えれば、エイスにおける3作目のブライアン・ウィルソン作品集ということになる。先月の下旬に出るとインフォメーションされていたものの、ちょっとだけスケジュールが延期されて、昨日ようやくおうちにブツが届きましたー。待ってました。うれしい。

ソロで復活直前のブライアン本人がビデオクリップに出演していたことでも話題になったウォール・オヴ・ヴードゥーの「恋のリバイバル(Do It Again)」で幕開け。以降、マイク・ラヴのサイド・プロジェクトであるセレブレーションによる「イッツOK」、ジャン&ディーンの「ヴェジタブルズ」、ブルース&テリーの「夢のハワイ(Hawaii)」、そのうちのひとり、ブルース・ジョンストンのある意味セルフ・カヴァーみたいな「ディードリ」、パパ・ドゥ・ラン・ランの「レット・ヒム・ラン・ワイルド」など、古くから関わりが深い顔ぶれはもちろん、ダリアン・サハナジャ「アイ・ウォナ・ピック・ユー・アップ」、ルイ・フィリップ「リトル・パッド」、マシュー・スウィート(&スザンナ・ホフス)「太陽あびて(The Warmth of the Sun)」、ジューン&ジ・イグジット・ウーンズ(=トッド・フレッチャー)「オール・アイ・ウォナ・ドゥ」といったブライアンズ・チルドレン的な顔ぶれの意識的/意欲的カヴァーも多数。ショーン・マクリーヴィーがインスト・ナンバーにメロディと歌詞を乗せちゃった「少しの間(Let’s Go Away for a While)」とかもやばい。

さらに、KGBの「セイル・オン・セイラー」、フランク・ブラックの「ハング・オン・トゥ・ユア・エゴ」のような、絶対に外せない重要パフォーマンスももちろん選曲されているし、ルビヌーズのアカペラによる「英雄と悪漢(Heroes and Villains)」、フリートウッド・マックの「ファーマーズ・ドーター」、パースエイジョンズの「ダーリン」といった気になる音源もきっちり。リベラ「ラヴ・アンド・マーシー」、キングス・シンガーズ「プリーズ・レット・ミー・ワンダー」など、クラシック寄りの合唱グループの音源もあり。リサ・ローブの「イン・マイ・ルーム」、サマンサ・シドリーの「ビジー・ドゥーイン・ナッシング」のような、女性アーティストによるわりと近年のカヴァーの収録もうれしい。

ビート・ロデオのスティーヴ・アルマーズがスピードボール・ベイビーのアリ・スミスと組んでカヴァーした「ザ・ロンリー・シー」とか、デヴィッド・スコット率いるインディ・ポップ・バンド、パールフィッシャーズの「レッツ・プット・アワー・ハーツ・トゥゲザー」とか、2006年にエピサイクルが英音楽誌『MOJO』の付録CDに提供した「世界よ目をさませ(Wake the World)」とか、トーマス・ホワイトのプロジェクトであるザ・フィクション・アイルがダウンロード販売のみでリリースした「ア・デイ・イン・ザ・ライフ・オヴ・ア・トゥリー」とか、けっこうしぶといところまで目配りされていて。さすがはエイス・レコードだ。

編纂はミック・パトリック。もちろんジャケット写真やクリス・ニーズが執筆した詳細なライナーノーツを含むブックレットも超充実。収録曲の紹介が収録順でなくビーチ・ボーイズの歴史をたどる形で書かれているのも面白い。いつもながらエイスの常で、サブスクには入っていないので、ご興味ある方はぜひフィジカルでゲットしてください。来月には『カール&ザ・バッションズ〜ソー・タフ』と『オランダ』の50周年記念ボックス『セイル・オン・セイラー1972』も出るし。ビーチ・ボーイズ絡みの話題で今なお盛り上がることができる幸せを噛みしめます。

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