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Disc Review

The Asylum Albums (1972-1975) / Joni Mitchell (Rhino)

ジ・アサイラム・アルバムズ(1972〜1975)/ジョニ・ミッチェル

われらがジョニ・ミッチェル自らがキュレーターとなって、米ライノ・レコードと連携しつつ貴重な過去音源を掘り起こす強力プロジェクト“JMA(ジョニ・ミッチェル・アーカイヴス)”シリーズ。本ブログでも関連作が出るたびに取り上げていますが。出ました。最新箱。『ジ・アサイラム・アルバムズ(1972〜1975)』。

JMAシリーズには2系統あって。ひとつが未発表音源で構成された“アンリリースト・マテリアル”シリーズ。これまですでに『アーカイヴス Vol.1:アーリー・イヤーズ(1963〜1967)』ってのと、『アーカイヴズ Vol.2:ザ・リプリーズ・イヤーズ(1968〜1971)』が出ている。で、もうひとつの系統が“アルバム・リマスターズ”シリーズ。これは文字通りオリジナル・アルバム群を最新リマスター・ヴァージョンによって再発していくものだ。この流れでは去年の夏、『ジョニ・ミッチェル』『青春の光と影』『レディーズ・オヴ・ザ・キャニオン』『ブルー』という初期オリジナル・アルバム4作をまとめた『ザ・リプリーズ・アルバムズ(1968〜1971)』が出ているのだけれど。

それに続く“アルバム・リマスターズ”シリーズ最新箱が『ジ・アサイラム・アルバムズ(1972〜1975)』。古巣リプリーズ・レコードを離れて、デヴィッド・ゲフィンが設立したばかりだった新興レーベル、アサイラムに移籍後リリースした『バラにおくる(For the Roses)』(1972年)、『コート・アンド・スパーク』(1974年)、初のライヴ盤だった『マイルズ・オヴ・アイルズ』(1974年)、そして『夏草の誘い(The Hissing of Summer Lawns)』(1975年)という4作を詰め込んだボックスセットだ。CDだと4枚組、LPだと『マイルズ・オヴ・アイルズ』がオリジナル通り2枚組なので全部で5枚組。

『ザ・リプリーズ・アルバムズ(1968〜1971)』の場合、ジョニさん自身が今ひとつミックスに納得できていなかったファースト・アルバムにリミックスがほどこされていたりしたけれど、今回の箱に収められたアルバム群に関してはすべてオリジナル・ミックスのまま。なので、全部オリジナル・アナログLPで持ってるよ、なんて古株ファンにとっては必要ないっちゃ必要ない箱ではあるわけですが。

でも、バーニー・グランドマンで最新リマスタリングがほどこされていて。音ががぜん良くなっているし。それぞれの作品のジャケットはオリジナル通りだけれど、それらをまとめて収めているボックスの絵はジョニさん自身による未発表作品だし。同じカナダ出身アーティストでもある盟友ニール・ヤングからの賛辞も、ジョニさんが描いたニールの絵とともに同梱されているし。やっぱ見逃せないのでした。なので、当然全部アナログ盤で持っているぼくも、また買っちゃったのでした。しかも円安のせいもあってかけっこうバカ高いアナログLPボックス…(笑)。

でも、買ってよかった。初期のナチュラルでフォーキーでみずみずしいジョニさんもいいけれど、従来のCSNY系の仲間たちだけでなく、トム・スコット、ウィルトン・フェルダー、ラリー・カールトン、ジョー・サンプルらジャズ系の名手たちも多数起用して新たな音楽性に積極的にアプローチを仕掛けながら、とてつもない勢いで音楽家として成長を続けていたこの時期の彼女の圧倒的な才能を追体験するには、やはり音質は最重要事項だから。

クールで、精緻で、ちょっと難解で、でもエモーショナルで、柔軟で、優しい。普通だったら共存し得なさそうな要素が魅力的に渦巻いていて。改めて感動するばかり。

ヒット・チャート的に振り返っても、この時期、「恋するラジオ(You Turn Me On, I'm a Radio)」とか「ヘルプ・ミー」とか「パリの自由人(Free Man in Paris)」とかシングル・ヒットも生まれ、アルバム自体も、『バラにおくる』が全米11位、『コート・アンド・スパーク』と『マイルズ・オヴ・アイルズ』がともに2位、『夏草の誘い』が4位と大健闘。ジョニのある種のピークをこのボックスセットで堪能できる。

この後、ジョニさんは1976年にアルバム『逃避行(Hejira)』をリリースするのだけれど。そのレコーディングの際、ジャコ・パストリアスと出会うことになる。この運命の出会いを経て、ジョニの才能はさらに爆発。以降、『ドンファンのじゃじゃ馬娘(Don Juan's Reckless Daughter)』(1977年)、『ミンガス』(1979年)、そしてライヴ第2弾『シャドウズ・アンド・ライト』(1980年)をアサイラム・レコードに残すことになるわけだけど。

きっとその4作が、次回の“アルバム・リマスターズ”シリーズとしてまとめられることになるのだろうな。それも楽しみだな。『ミンガス』がやはりある意味での頂点だからなぁ。この時期の未発表音源ボックスもまた編まれるのかな。先日のニューポート・フォーク・フェスでの復活ライヴでの感動も含めて、ジョニさん周辺の動きから相変わらず目が離せない今日このごろです。

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