エヴリシング・アイ・ノウ・アバウト・ラヴ/レイヴェイ
1年ちょい前、本ブログで自主制作ミニ・アルバム『ティピカル・オヴ・ミー』を紹介したことがあるレイヴェイ・リン。
そのエントリーでも書いた通り、ぼくが編集長をつとめているオンライン・マガジン『ERIS』でもブロードウェイ絡みの興味深い連載を続けてくれている大学生時代からの音楽仲間、水口“ミソッパ”正裕くんにその存在を教えてもらった女の子アーティストで。アイスランド+中国のハーフの23歳。レイキャビクとワシントンDCを行ったり来たりしながら育ったというシンガー・ソングライター/チェロ奏者/ギタリスト/ピアニストだ。
水口に教えてもらったとたん、一気にどハマりして。彼女のYouTubeとかInstagramとかフォローして情報収集。ちょいちょい投稿される多彩な弾き語り動画とか、レコーディング・ニュースとかをチェックしつつ、本格フル・アルバムの登場を今か今かと待っていたのだけれど。
ついに、出ました。初フル・アルバム。待ってました。うれしい。
なんでもレイヴェイさん、おじいちゃんが林耀基さんという中国の著名なヴァイオリン教育者だそうで。お母さんもクラシックのヴァイオリン奏者。そんなこともあって、幼いころからクラシックや古いジャズに親しみながら育った。このあたりのことは前回のエントリーにも書いたけれど、やがてそうした伝統的な音楽性と新世代ならではの感覚をうまく融合させた独自の世界を育みたいと願うようになり、米国ボストンのバークリー音楽大学へ。双子の姉妹でヴァイオリン奏者でもあるジュニア・リンたちとともにラヴェルの弦楽四重奏とかシューベルトの弦楽五重奏とかをばりばり演奏している動画とかもYouTubeに乗ってたっけ。かっこよかった。
ちなみに去年めでたくバークリーを卒業。現在は本拠地をロサンゼルスに移して活動中とのこと。今回のフル・アルバムもまた前ミニ・アルバム同様そうした音楽的素養をまっすぐ反映した、ドリーミーで、すごく豊かな仕上がりになっている。
グレイト・アメリカン・ソングブック系のポピュラー・スタンダード、ジャズ、ボサノヴァ、クラシックといった、まあ、非ロック系、非R&B系の音楽性をさりげなく融合しつつ、独特の深みをたたえた歌声でジェントルに、ロマンチックに綴る。数曲、音楽仲間との共作もあるけれど、基本的にはレイヴェイ本人の自作曲。1曲だけ、ミュージカル『ガイズ&ドールズ』のためにフランク・レッサーが作った「初めての恋(I’ve Never Been in Love Before)」のカヴァーが入っている。
前ミニ・アルバムでは「アイ・ウィッシュ・ユー・ラヴ」をカヴァーしていたけれど、その辺のカヴァー選曲のセンスも素晴らしい。まじ、ぼくにとっては音楽性も歌声もすべてが“ツボ”。1曲だけ、ビデオクリップも含めちょっとだけサンシャイン・ポップ路線にアプローチした表題曲「エヴリシング・アイ・ノウ・アバウト・ラヴ」もあるけれど、これまたうまいことクラシカルなストリングス・アンサンブルを取り込んで自分らしさを演出。双子のジュニアがクリエイティヴ・ディレクターをつとめていたクリップのほうの出来は、んー、なんとも微妙ではあったけれど(笑)、曲としては文句なし。素敵な1曲だった。
その「エヴリシング…」をはじめ、デジタル・リリースのほうには「ヴァレンタイン」「フラジャイル」「ディア・ソウルメイト」「フォーリング・ビハインド」など、今年に入ってから先行リリースされたシングル・チューンをすべて収録。
今年アタマ、ジミー・キンメルのレイト・ショーに出演していたけれど、そのときは前ミニ・アルバム収録の「ライク・ザ・ムーヴィーズ」をピアノ弾き語りで歌っていて。わりと見え方がフツーだったというか。いつもYouTubeに投稿しているみたいなギターの弾き語りとか、いっそお得意のチェロの弾き語りとかを披露すればもっと見る人が興味を持ったんじゃないかなぁ…。
でも、まあ、その欲のない感じもまたレイヴェイっぽいか。ストリーミングあるいはデジタル・ダウンロード以外だと、今のところヴァイナル(9月半ばリリース)のみっぽい。本人のWEBショップで売ってるサイン入りのカラー・ヴァイナルは早くもソールド・アウト。前のミニ・アルバムもあっという間になくなっちゃったし。もうちょっとたくさんプレスしてね。仕方ないので、普通のLPを予約しましたー。でも、なぜだかヴァイナルには最強の名曲「ヴァレンタイン」が入っていないんだよなぁ。なぜだ。謎だ。でも、いいや。ハイレゾも併せて買って、そっちには「ヴァレンタイン」入ってたから。そっち聞きながらLP待ちます。早く届かないかなー。