Disc Review

From Elvis in Memphis (Legacy Edition) / Elvis Presley (RCA/Legacy)

フロム・エルヴィス・イン・メンフィス(レガシー・エディション)/エルヴィス・プレスリー

Twitter のほうでつぶやいたりしていたので、ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが。BlackBerry Bold のトラックボールのクリックが効かなくなっちゃって。エンターキーでほとんど代用できるとはいえ、操作性が今いちなので。 docomo ショップに持っていきました。

しかし、 docomo はもう BlackBerry 売る気がないのかも。店員の方も最初は愛想よく寄ってきてくれるんだけど、ぼくが手にしているのが BlackBerry だとわかると、「ぁ…」って息をのんで、笑顔が凍り付くんだよなぁ(笑)。

結局、なぜトラックボールのクリックが効かなくなったのか、原因が解明されることもなく、ソッコー、本体全取っ替えってことになって。この辺にも逆に docomo の腰の引け具合が透けて見えるというか。面倒が無くてよかったとはいえ、なんか淋しい。

交換用の端末がショップに届くまで2日かかるってことで、その間、久々に iPhone をメインの座に戻して使ってみたものの。調子を取り戻すまでちょっと戸惑ってしまった。 iPhone もまた最高なんだけど。見た目はかっこいいし。けど、やっぱり物理キーボードがあるかないかは大きいかも。タッチパネル、もうちょい進歩してほしい。ショートカット・キー一発でいろいろできる BlackBerry の快適さを覚えちゃうと、画面をずらしたりアイコン探して押したりって iPhone の作業が今のところまだ回りくどく感じるのも事実。マルチタスクの面でも iPhone はまだ弱いし。

まあ、もちろん iPhone は日本でもかなり売れていて、みなさん便利に使っているようだし、技術の進歩は早いから、このちょっとした鬱陶しさってのもきっとすぐに解消するだろうから。その辺、あくまでぼくの使い方の範囲内での話なんだけど。物理キーボードなんてどうでもいいって若い世代も出てきつつある中、旧世代としては BlackBerry の物理キーボードのありがたみを逆説的に思い知った数日間でありました。 docomo ももっとうまく売ればいいのに。

今回ピックアップしたアルバムとかも、もっと日本でうまく売ってくれれば…と願う作品。エルヴィス・プレスリーが1969年6月にリリースした大傑作アルバム『フロム・エルヴィス・イン・メンフィス』の発売40周年記念レガシー・エディションだ。56年の全米デビュー以来、ほとんどの楽曲をナッシュヴィルかハリウッドで録音してきたエルヴィスが、69年1~2月、自らの音楽的故郷であるテネシー州メンフィスへと立ち返って行った歴史的レコーディング・セッションで録音された楽曲を集めた名盤だけれど。

この伝説のセッションでは全32曲がレコーディングされていて。『フロム・エルヴィス…』に収められなかったものはシングルとしてリリースされたり、同じ69年の11月、当時日本では『豪華盤プレスリー・イン・パースン』なる邦題のもとリリースされた2枚組LPのディスク2『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス』(のちに『バック・イン・メンフィス』というタイトルで1枚ものとして再発)に収められて世に出たり。

あれこれバラけていたわけだけれど。今回はその辺の音源を一気にまとめあげる形で2枚組レガシー・エディション化が実現した。ディスク1には『エルヴィス・イン・メンフィス』のオリジナルLP収録曲をすべて曲順通り並べたうえで、70年代に入ってから他のアルバムの収録曲として五月雨式に世に出たメンフィス・セッション音源をボーナス楽曲として追加。そしてディスク2には『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』の収録曲すべてをオリジナル曲順で並べ、その後にやはりこのセッションから生まれたシングル曲の貴重なモノラル・ミックスをずらりボーナス追加している。

当初から1枚ものとしてリリースされた『エルヴィス・イン・メンフィス』は、エルヴィス・ファン以外からも名盤として高く評価されているものの、『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』のほうはエルヴィス・ファンの間ですら人気が今ひとつ。99年、やはりこのメンフィス・セッションの音源を編纂した2枚組『サスピシャス・マインド~メンフィス1969アンソロジー』が出たときも、『エルヴィス・イン・メンフィス』のほうはオリジナルLP通りの曲順で入っていたのに対し、『フロム・ヴェガス・トゥ・メンフィス(バック・イン・メンフィス)』のほうは曲順バラバラでの収録だった。いわばアウトテイク扱い。どちらのアルバムもそれこそ盤がすり切れるほど愛聴してきた身としては実に複雑な気分だった。が、そんなもやもやも、今回のレガシー・エディションの登場で一気に晴れました。

チップス・モーマンのプロデュースのもと、彼のアメリカン・サウンド・スタジオで、当時の南部ミュージック・シーンで大活躍していた旬のミュージシャンたちの強力なバックアップを受け、カントリー、R&B、ブルース、さらにはバカラック・ナンバーまで、様々な音楽要素をごった煮にしながら、エルヴィスは69年ならではの素晴らしい南部ロックンロールを作り上げてみせた。レジー・ヤングのスワンプ風味あふれるギター、トミー・コグビルのファンキーなベース・ライン、アル・ジャクソンの白人版継承者とも言うべきジーン・クリスマンのドライヴ感に満ちたドラム…。地元へ帰って心機一転、意欲に満ちたエルヴィスの歌声の勢いに触発されながら、彼ら腕利きミュージシャン群が存分に本領を発揮した圧倒的なスワンプ・フィーリングが、やがて70年代初頭、新たな黄金時代を迎えるエルヴィス・サウンドのアイデンティティへと結実していくことになるのだけれど。

国内盤も9月には出る。これもライナー書かせていただきました。光栄です。でも、9月になるとビートルズの再発があるから一気に話題をそっちに持っていかれちゃいそう(笑)。泣ける。もったいないので、今のうちに騒いでおきます。64年、ビートルズのアメリカ襲来によってエルヴィスが過去のものになった、みたいな言い方をされることが多いのだけれど、そのビートルズが後味の悪い解散劇を繰り広げ始めた69年、エルヴィスは再度自らの足下を見つめ直す形でこれほど力強い傑作でシーン最前線に舞い戻ってきたわけだ。エルヴィス、すごいっす。まじに。

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