ストレンジ・タイム・トゥ・ビー・アライヴ/アーリー・ジェイムズ
アラバマ出身のシンガー・ソングライター。これが2作目だ。
日々生きてゆく中、直面せざるを得ない様々な不条理を受け止めながら、それら違和感のひとつひとつを古めかしいブルースや、深く沈潜するかのようなフォーク、切ないピアノ・バラード、鬱々たるマーダー・バラッドなどへと移し換えていったアルバム。
往年のビートニクの幻影を引きずりながらジャズやブルースとイマジネイティヴに交錯させたトム・ウェイツのように、アーリー・ジェイムズは彼なりの冷徹な詩作によって米国南部の神話というか、亡霊というか、そうしたものとチャネリングしている感じだ。
よりかっちりした、わかりやすいストラクチャーの下でアレンジされていたファースト・アルバム以上に、そうした個性が色濃く、赤裸々に表出されている。タウンズ・ヴァン・ザントのイメージが脳裏をよぎる瞬間も。とともに、フォークナーとかウェルティとかの小説の世界観も二重映しになったり…。
プロデューサーは前作に引き続きブラック・キーズのダン・アワーバック。このワイルドさと緻密さを併せ持つ才人が、またまた曲ごとに多彩なサウンド・メイキングを展開しつつ的確にバックアップ。アーリー・ジェイムズの思いを見事、アメリカーナの豊かな高みへと引き上げている。
やさぐれ気味で、ざらついていて、狂気も見え隠れして、でもなぜか切なくて、泣ける。トム・ウェイツの諸作同様、これもまたこの人なりのブルースであり、ソウル・ミュージックである、と。
中盤、「リアル・ロウ・ダウン・ロンサム」という曲には本ブログでもここで紹介したことがあるナッシュヴィル在住のシンガー・ソングライター、シエラ・フェレルがデュエット・パートナーとして参加。シエラさんはブラック・キーズの新作『ドロップアウト・ブギー』にも関わっていたから、次作あたりはダン・アワーバックがプロデュースすることになるのかも。